「本当の私」ザリガニの鳴くところ イズボペさんの映画レビュー(感想・評価)
本当の私
カロライナの美しい湿地の地面や沼地の水面に近いアングルの画面は、人間がこの神秘に満ちた自然界から追放された存在なのだと感じさせる。
自然には善悪はない
時に弱者が強者を葬ることを湿地は知っている
人間が忘れてしまった生き抜く力と自然界のルールを観察しその一部として生活しつつ、人間界の価値観とも縁を切ることもできないカイアのアイデンティティは、彼女が人生を語る中で揺らぎから確信を深めていく。
そして、自らの生命を全うするために必要なことを選別していく。
サスペンスとしては伏線がたっぷりばら撒かれているし、ラブストーリーとしては王道だし、法廷ドラマとしてもオーソドックスな展開である。これらは全て人間界のロジックで駆動している場面である。
その場面のサブチャンネルで静かに確実に起動している自然界のロジックの気配は、身震いするぐらい残酷だが力強い生命、人生への讃歌も聴こえる。
何度もいう。
自然に善悪などないのだ。
そして善悪を分ける境界線は思っているより曖昧だ。
そして自然界は人間が思うよりも強かである。
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