「ある少女の女への成長物語…」ザリガニの鳴くところ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
ある少女の女への成長物語…
全世界で1500万部の大ベストセラーとなり、日本の本屋大賞の海外部門小説で大賞に輝いた、同名小説の映画化。海外小説は苦手な自分が面白くて、のめり込んだ作品だっただけに、映画化を待ち焦がれていた。500ページの長編小説を、オリビア・ニューマン監督が、2時間の枠に上手にまとめて仕上げている。
1950~60年代のアメリカ・ノースカロライナの湿地帯を舞台にした、ヒューマン・サスペンス。決して、派手な演出があるわけでもなく、登場人物も限られた中でのストーリー。しかし、広大な湿地帯の木々や草花、動物、虫等の色彩や匂い、音、温度等が息づくように伝わってくる。
そんな湿地帯の中で暮らす少女を主人公に、切なさや痛み、感動、そして驚愕の真実のどんでん返しを兼ね備えた、映画ファンが好みそうな作品となっている。
当時、貧困問題、人種差別などはアメリカの黒歴史でもあり、そんな時代背景の中で、両親、兄弟から見放され、何もない湿地の粗末な家に、一人取り残された6歳の少女・カイアが主人公。学校に通えず、文字の読み書きもできない、家族もいない。唯々、母の帰りを待って生きてきた悲運のカイアが、いったい何をしたというのだろう…。
そんな幼かった彼女が、凄まじい苦境を乗り越え、『生』にしがみついて生きようとする様や、思春期の芽生えからの淡いラブ・ストーリーを中心に、少女が美しい女として成長していく様を描いていく。
一方で、湿地帯で変死体で発見されたカイヤの2人目の恋人の真相を巡って、彼女への偏見から事件の容疑者とされ、裁判で無罪を勝ち取るための法廷ドラマとして、サスペンスの要素も高まっていく。
主演のカイヤを務めたのは、デイジー・エドガー=ジョーンズ。テレビドラマでは出演していたようだが、スクリーンではお初の女優さん。世間からは隔絶され、6歳から一人で生きてきた、汚れのない無垢な少女から、恋を知り、女性としての輝きを放ちだし、魅力的な女性へと変貌を遂げていく演技に魅了された。その美しさも演技も素晴らしく、これから、アン・ハサウェイの様な魅力ある女優への期待を、十分に備えていると感じた。
原作も既読で、内容も結末も分かってはいたが、それでも、デイジーの魅力的な演技もあり、個人的には、今年のベスト3に入る作品となった。映画の余韻に浸りながら、原作をもう一度読んでみたくなった。
kazzさん(^^)原作では、幼い頃の1人で逞しく生きていく様が、胸に刺さります。後半は一気に法廷ドラマとなります。是非、原作もお読みください。