「それは、生き延びるための必然」ザリガニの鳴くところ ますぞーさんの映画レビュー(感想・評価)
それは、生き延びるための必然
ノースカロライナ
アメリカ合衆国東海岸の中部
山岳・平野・海岸の分布がまんべんなく
気候も温暖で済みやすいため
全米第9位の人口である
今作はそのノースカロライナの
自然の中でもボートでの移動が
当たり前のような湿地帯が舞台に
書かれたディーリア・オーエンズの
ミステリー小説の映画化
でどうだったか
小説原作だからというわけでも
ないでしょうが画面外の
インフォーメーションが多く
常に見る側の裏をかいた展開は
最後までハラハラ見れました
わりと一本道で退屈な洋画の
ミステリー映画と違い
ほうと思わせる部分もあり
面白かったです
どことなく不自然なところは
あちこちあるんだけど
なんだろう
日本人には合ってるかも
しれません
1960年代が舞台
湿地帯で見つかった地元の名士の
息子チェイスの死体を子供が発見
警察は近くにあった物見小屋からの
転落死と断定
しかし警察や地元住民はあたかも
特定の「湿地の娘」がやったに違いない
と決めつけるような噂を広め
遺留品に残っていた赤い繊維が
その「湿地の娘」と言われる娘
カイアの家にあったニット帽と
一致するとそこから
逃走するカイアを逮捕し拘留
殺人容疑で告発されてしまいます
「帰りたい 死刑でも何でも関係ない」
頑なに口を閉ざすカイアですが
弁護を申し出たミルトン弁護士が
少しずつ彼女から話を聞いていきます
湿地の娘とは何か?
カイアは元々兄弟で大自然の中で
仲良く暮らしていましたが父親の暴力に
耐えられなくなった大好きな母親が失踪
他の兄弟も家を去りカイアは
兄のジョディからお前も出ろと
進められますがカイアは
「窮地になったら
ザリガニの鳴くところへ逃げろ」
と母に言われたことを忘れず
父との接触を避けながら母が
帰るのを待っていました
学校にも行かせてもらえないカイア
でしたが周辺にはテイトという
同い年くらいの少年もおり
支えになっています
おそらく戦争の後遺症で
他人を極端に信じなくなっていた
父との距離感がわかってきた
カイアに父は少し優しくなりましたが
そんな二人のもとについに母から
手紙が届きますが父はその手紙を
見るなり燃やして父まで
いなくなってしまいます
カイアは一人になってしまいますが
ここから凄いのが彼女
ムール貝を採りに行き前から
ガソリンなどの取引をしていた
ジャンピンとメイベルの
黒人夫婦の営む店に交渉に行くと
聖書に教えに忠実で優しい
メイベルは事情を察して
一人になったカイアを色々
手助けしてくれます
カイアは学校もなじめず
一人になった家で母が描いていた
動物や植物を観察しては
ひたすら絵を描く毎日
そんな生活をしながら
ティーンに成長したカイアは
他人との接触を極端に避ける毎日
ですがある日青年に成長した
テイトに再会
読み書きができないカイアに
テイトは少しずつ教えていき
カイアは家にあった書物を
読めるようになっていきます
テイトは家にあったカイアの
絵に感心し二人はプラトニック
ながら恋が芽生えていきます
このように
テイトは漁師の息子ながら
非常に頭がよく
父からは大学に行って立派に
なることを期待され自分も
望んでいました
そして大学に合格し喜ぶ
テイトですがそれはカイアとの
別れを意味します
カイアはやはり悲しみますが
必ず迎えに来る
6月の花火を一緒に見ようと
約束しテイトは去ります
そしてテイトはメモを渡し
カイアはその言葉を信じ
6月におめかしして約束の
場所で待ちますが・・
テイトは来ませんでした
カイアはやはり人を信じなく
なってしまいます
その後湿地で遊んでいる
「いいとこの子」チェイスが
カイアとひょんなことから出会い
積極的に言い寄ってきました
最初は避けつつも心に隙間があった
カイアは受け入れてしまいます
そんな折に町に
テイトが戻ってきてその様を知り
チェイスだけは絶対ダメだと言いに
カイアの家に来ますが
まぁ顔も見たくないですわね
どうもテイトは自分の元へ
来てほしい気持ちはあったようですが
何を言ってもカイアは
湿地から離れることはないだろうと
達観し会いに来れなかったのです
それを打ち明け懺悔すると
カイアはすこし態度を和らげます
確かにチェイスはどうも合いそうな
人間ではないのは自身もわかって
いたのでしょう
一方でカイアは
家の土地の所有権を得るには
未納の税金を納めなければならなかった
事でテイトの残した出版社のメモへ
自分のイラストを送ると
すぐさま本にしたいと返事が来て
5000ドル(1960年代当時で180万円?)
を手にし税金も納めて所有権を
手にし改装してきれいにするなど
自活能力に磨きがかかってきました
その後チェイスは予想通りカイアに
力づくで強引に迫ってきますが
カイアも強いのでボコボコにやり返すと
自宅を荒らされたり仕返しが
ひどくなってきました
そんなところへテイトが来て
チェイスに殴られた顔では
出版社のところへ行けないと泣く
カイアに負けるな行けとテイトは
強く言います
そしてカイアはテイトに言われるまま
ジャンピンの店でバスの時刻表を
メモさせてもらい朝一のバスで
町を出ていきました
その晩の未明にチェイスは
死体で見つかっています
ここで裁判シーンに戻ると
検察はカイアをチェイスの殺人容疑を
陪審員に訴えます
チェイスの母親も息子が大事に
していた貝の首飾り(カイアが贈った)
も付けていなかった
この娘が殺して奪い返したのだと
訴えます
しかし決定的な証拠はなく
ミルトン弁護士は先入観にとどまらず
湿地で一人でたくましく生きてきた
カイア境遇もかんがみて
犯行時のアリバイもある彼女を
決めつけで判断しないで欲しいと
陪審に訴えます
その結果
カイアは無罪を勝ち取ります
その後カイアは図鑑出版を続け
テイトと結婚し子供ももうけ
湿地で幸せな日々を過ごし
途中世話になった黒人夫婦の
ジャンピンの死も経験し
ついには老婆になります
そこでふと夜中にボートを
こぎ出した先で
カイアを引き取るつもりだった
のに手紙を破られ思いかなわず
病気で死んでいった母の幻影を
見ます
その後戻ってきたボートに
駆け付けたテイトが見たのは
事切れたカイアでした
家にある書物などから
思い出にふけるテイトですが
「生存するためにしかるべき行動をとる」
と描いた本に描かれたチェイスと
その首に付けられた珍しい貝の
ネックレス
そのネックレスがその本に
忍ばせてあったのです
テイトはそれを見て
戦慄するのでした
これが何を意味するか
わかりますね
ジャンピンも墓場まで秘密を
持って行ったのですね
この映画の面白いところは
結局父親の忠告もテイトの言うことも
素直に聞いてそれが正しかった部分が
あったという部分
その中で生き抜いたカイアが
自然の中で見つけた教訓
「生物が生き延びるためにする
行動に善悪はない」
これが人間社会の裁判という形式で
決して越えられることはなかった
という皮肉と重なってる
とこが個人的に面白かったです
海外での評価は高くなかったらしいけど
説明不足と思われるのかなこういう
造り?