「善と悪」サマリタン odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
善と悪
映画の冒頭で超人の双子の兄弟、善のサマリタンと悪のネメシスの確執がアニメでアメコミ風に語られる。ジュブナイル向けのテーマの映画ですがそこはスタローンさんですからアクション・ファンへの配慮も抜かりはありません。
イリノイ州マディソン郡のグラニット・シティは貧困と格差で町は荒廃、ギャングのサイラス一味は都市伝説のネメシスという悪の権化を崇拝し住民を扇動し暴動を煽っている。
サマリタンは新約聖書の善きサマリア人の由来、ネメシスは基はギリシャ神話の義憤の女神、そこでサイラスの愛人シルを登場させてぼかしているのでしょう。荒廃した街や善と悪の対立はバットマンとジョーカーに似た構図ですね。
主人公の少年サムはチンピラから救ってくれた隣人の老人ジョーをサマリタンと思い込んでしまう。面白いのはサイラスもサムを気に入っているようで仲間に引き入れようとちょっかいを出す。サムも貧困からアルバイト気分で手先になるから、オイオイと言いたくなる。
サイラスはネメシス気取りでサムを人質に宿敵サマリタンと疑われるジョーを誘き出す作戦に出る。そこはプロデューサーまで買って出たランボーのスタローンですからラストブラッドもどきのアクション連発、しっかり見せ所を作っていますね。
正体を明かしたジョーは根っからの善人、悪人は存在せず、元々、人には善と悪の心は同居しておりどちらを選ぶかは自身の決断とサムに言う、実に深遠なテーマですね。
非行に走りそうな少年を見守り導くという流れでは「グラントリノ(2008)」や「ブロンクス物語(1993)」と似たティストを感じます、スタローンもイーストウッドやデニーロ同様、未来を託す子供たちに何かを告げたいという使命感に目覚めたのでしょうかね。