わたしの見ている世界が全てのレビュー・感想・評価
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兄弟は他人の始まり。この三人は、皆独身であったので、母親の死で少し...
兄弟は他人の始まり。この三人は、皆独身であったので、母親の死で少しでも協力し合えたと思う。
しかし、残された居抜き物件はシャッターを降ろさざるを得ない。
賃金の地盤沈下を生んだ成果主義に敗れし物語。
その間に日本は終身雇用も年功序列もなくしてしまった。
言葉にできない表現
人は皆、「わたしの見ている世界が全て」なのだろう。
そのことを4兄妹を通して描きつつ、主人公ハルカの自信満々に考えてきた「世界観」に亀裂を入れている。
他人のことはよく見えるのに、自分のことは間違いだらけ。
殆どの人がそうだと思う。
さて、
ハルカにとってビジネスとは簡単なものだったが、使えない人間がいる所為で失敗することに嫌気がさしていた。
そうして走ってきたが、上司にパワハラを咎められ、まさかの自分が悪者となったことで退職した。
すぐさま一緒にやってきたケンタロウと新ビジネスを開始する手はずを整えようとする。
同時期に母が死に、実家を売れば資金になることを閃き、兄妹の了解を得るための工作活動を始めた。
長男の結婚、長女の再婚、次男の就職…
ハルカはそのために彼らの人生に介入しながら実家の売却を目論む。
彼女から見る兄弟たちはそれぞれにわかりやすい問題を抱えていて、ハルカのアドバイスや介入でうまくいくものの、肝心の自分のビジネスには大きな問題が起きてしまう。
ケンタロウ抜きではできないビジネス。
何故ケンタロウは姿を見せなくなってしまったのだろう?
それは社長安藤の言った2人目のパワハラ被害者に隠されていたように思う。
つまり2人だけではなかったということだろう。
物語の中ではケンタロウに含みは会ったものの、決定的な出来事はなかった。
しかし、
頭金の融資先のことがケンタロウを悩ませていたこと、全てハルカの指示通りになってしまうことに、ケンタロウは辟易していたのかもしれない。
仕事そのものが面白いのと同じくらいのベクトルで、自分自身を殺していたのだろうか。
または、ハルカの母の死を知らそうともしなかったことが、彼女の人間性を疑ったのかもしれない。
この人を信じていいのだろうか?
これがケンタロウの純粋な疑問となった可能性はあるだろう。
そして、
ハルカ以外のすべての姉弟が新しい道を進み始める中、一人実家に取り残されたままの自分がいた。
考えて見れば長男の結婚問題も、長女の再婚問題も、次男の就職問題もすべて、ハルカの当初の目論見とは違っていた。
もっともっと複雑だった。
彼女はケンタロウにどうしても会いたくて、ビジネスなど関係ないから心配していると留守電に吹き込むが、彼からの返信はなかった。
何でもわかっていたと思い込んでいた。
人は皆、私の見ている世界が全てなのだろう。
そう思い込んで生きているのだ。
しかし人の心は一様ではなく、絶えず変化しながらも、辛くてもそこから出ようとはしないことも多い。
正しさなどはなく、いまそういう気分なだけなのだろう。
店に来た老女に、店を辞めたことを告げた後、その客を追いかけ「あの~」と大きな声で呼びかけた。
しかし、
「その先の言葉を、私は探し続けた」というセリフで物語を締めくくっている。
言葉にできない心
老女に「今までありがとうございました」と言いたかったのか、まさか「またリニューアルします」と言いそうになったのか、それとも単に「兄に伝えておきます」と言いたかったのか…
おそらくすべての可能性を「あの~」に乗せたのだろう。
この彼女の衝動的な行動は、自分自身を新発見したとも取れる。
退職して、新ビジネスもポシャり、何もかもなくなってしまったハルカに残ったものを、彼女は考え続けていた。
自分でも思ってもみなかったこの「衝動」
その答えはもしかしたら「家族」だったのかもしれないと、ハルカは気づき始めたのかもしれない。
母の葬儀の挨拶に悩む長男に「あの人と同じでいいんじゃない」と言ったハルカ。
あの人とは父
父も母さえも蔑むようにしてきた。
そうして兄妹さえもすべて外に出した。
それは確かに結果的によかったことだった。
そうして全てを捨ててしまった彼女にも、客だった人が訪ねてきたことが彼女を突き動かしたのだろう。
その本心は彼女自身にもはっきりとはわからない。
ただ、衝動が起きた。
でも、「その先にある言葉を」、彼女は今から「探し始める」のだろう。
この深い含みと言葉にならない表現こそが映画の最大の魅力だと思う。
よかったと思う。
世の中甘くないという話
森田想扮する熊野遥風は何に悩んで何をアドバイスするかカウンセリングする事を仕事にしていたがパワハラを受けたと申告があったため会社を辞めた。
学生時代から頑張って来たやる気女性が成長出来ないからとあっさり会社辞めちゃうのかな。見た感じ、えらいドライな娘だな。親が亡くなったから実家の店を売ろうなんてけしかけたりしてさ。離婚して出戻りの姉とか農業やりながら店を両立させるという兄とか現実的過ぎてね。ちょっと雰囲気悪いよね。自分勝手だしさ、世の中甘くないという話かな。のんびり暮らしたいやつもいるからね。
【天上天下唯我独尊女性が生きる道。けれども、彼女が上から目線で見ていた兄弟達が不器用だが一生懸命生きる姿を見て女性が自らの生き方を顧み、人間として成長しようとする姿を描いた物語。】
■熊野遥風(森田想)は家族と価値観が合わず、大学進学を機に実家を飛び出し、ベンチャー企業で活躍していた。
しかし、目標達成のためには手段を選ばない性格が災いし、パワハラを理由に会社を退職に追い込まれる。
復讐心に燃える遥風は、兄弟が暮らす家を売り、新規事業を立ち上げて見返そうとする。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・森田想演じる遥風の口癖は、”使えない奴は、ドンドン切ってく!”である。イケイケドンドン、根拠なき自信に満ち満ちたパワハラ女である。
且つての自分を見ているようで、多いに共感しつつ、多いに反省する・・。
・そんな、遥風の兄弟達は、彼女にとっては使えない奴に最初は見えている。
長女の実和子(中村映里子)は離婚し、実家の家業のフードセンターを営んでいるし、長男の熊野啓介(熊野善啓)も実家が農家の妻明日香(堀春菜)から離婚を切り出され、弟熊野拓示(中崎敏)に至っては、怪しい商売に手を染めている。
ー だが、遥風が実家を売る!と彼らの生活を考えない事をぶち上げた事で、家族の絆はドンドン離れて行くのである。-
■遥風が明日香の農家作業を手伝いながら、日射病でダウンしたり、新規事業を立ち上げようと首になった会社から引き抜こうとした後輩の憲太郎(三村和敬)と連絡が付かなくなったり、拓示がヤッパリ上手く行かない状況などを経験し、遥風は自分の”天上天下唯我独尊の生き方に疑問を持っていくのである。
<今作は、天上天下唯我独尊の生き方を貫いて来た女性が、今まで上から目線で見ていた兄弟や周囲の人達も、夫々に必死で生きて居る事に気付き、今までの生き方を鑑み、人間として一歩成長しようとする姿を描いた作品なのである。>
この世界は正しさで出来ていない
2023年劇場鑑賞26本目 優秀作 72点
期待を胸に足を運んで、鑑賞時は今ひとつな感触だったけど、次第にじんわりよかったなぁと思えてきた作品
やっぱり印象的なのは主演の森田想の役柄というか、目つきと口元の表情が頭硬そうな視野の狭い、自身に疑いを持たないキャラクターを見事に演じていました
短い上映時間の中で、小さいけど人間関係の革新に迫るようなテーマとその成長を描けていて、充実感があります
わたくしも4.5年前までは今作の主人公の様な理屈っぽく合理的な正論至上主義な考えで、今もまだどちらかというとそうなのかもしれないけど、ここ数年で話を聞くこともそうだし、その内容の意図と相手にとってどんなボールをどのコースでどんなスピードで返すのが適切なのかよく考えて、逆にこちらからの言葉を発するのに一層時間がかかるまで個人的変化がありました
人は感情で動くものだし、何を言うかより、誰がどんな言い方で言うかの方が受け手にとって重要で、そういった日々の振る舞いが回り回って、きっとなりたい理想の自分に返ってくるのではないのかなと思います
是非
「その先の言葉を私は探し続けた・・・」
かなりかなり手厳しい作品である 勿論、内容云々ではなく、自分に当てはまるジャスト映画の中の人と同じ境遇だからである なのでこれをフィクションだとは全然思えず、よくもこういう題材をピックアップした制作陣に敬服する以外に手段はない 一体どこからこういうアイデアを着想するのだろうと逆に訊いてみたい程である
それに作り物だと思えない最大は、この4人兄弟のそれぞれの性格が違うという点 自分も4人兄弟だからよく分る 同じ環境で育っているのにまるで性格が違うという自覚があるから 勿論、その家族の時間の移り変わりで出来事が違っているのだからそれが影響することは当然だ
公式サイトでの監督のコメントを考察サイトの引用で読んでみたが、日芸の首席卒業のエリートが語るには口幅ったい人類愛に溢れた弱者に依り沿うストレートなテーマであるらしい なので、主人公を糾弾するといえばオーバーかも知れないが、昨今の映画『怪物』のテーマにも近似している 勿論、ファンタジー要素は一切無く、あくまでドライな仕上がりで、そこも又好感が持てる仕上がりだ
自分は、長男ではあるが、今作の長男ほど人付き合いや顧客の世話をあれ程は焼けない位のメンタリティの弱い人間である なので次男のニートの部分がかなり重なる そんな中で末っ子の妹の勝ち気な性格が色々引っかき回す末に、末っ子以外の3人の団結した行動に、改めて気付くことを描いた構図は秀逸である
もしかしたら兄弟達の良い部分がこの歳になって改めて気付く、そういう流れを描いたという点で、プロットの素晴らしさを噛みしめる作品であろう
余りにも自分事のような作品、大変ありがたいと感じたのである
生きるって、合理性だけじゃないよね
話の起伏はそんなに大きくないし、ドラマティックさのない淡々とした邦画ではあったけど、
兄弟やその周りの人のキャラクターがとても立っていて、その生き方や話し方、人生の選択を見ているだけで充分に面白いと思える映画だった。
全員、「うんうん、そんな人いるよね」って、違和感なしに見れた。田舎あるあるもたくさんで、一度も違和感はなかったと思う。
普段はサバサバとしてみえる兄弟たちだけど、次男の一大事があったら兄弟全員で立ち上がるところは、「兄弟って、家族ってそういうものだなぁ」と。
性格は全く似てないけど、自分の立場が主人公に似ていてるのでなんとなく重なる部分があった。(複数人兄弟の末っ子、次男がニート、実家が商店をやっている、商店をたたむことになる等)
長男が、便利屋みたいになりながら、いろんな人と繋がりながら仕事をしている姿が、うちの父親を見ているようでなんかジーンとした。
実家の商店が、空っぽになる最後のシーンの物悲しさ、自分の実家を思い出した。
仕事や恋愛や生きるってことは、合理性だけではないよねって、主人公も学んだのではないのかな。
できる女は違いますね、でも切ない
とても映画らしい映画で良かったです。
とても日常的なストーリーですが、家族の想いが滲み出て良かったです。
始まり方と最後の終わり方も好きです。
ちょっと切ない。
なかなか近所では観ることが出来ないと思っていたら、近くの映画館で1週間限定公開とのこと。ありがたいです。
クラウドファンディングらしいので、次回作も期待しています。
構築してきた他者との繋がりは合理性だけでは割り切れない
我が身と主人公の考え方にシンクロする部分があったため(超合理主義で超個人主義という点で)、勢いで鑑賞。
結果、現時点で今年観た邦画のうちNo.1満足度の作品となりました。いや、素晴らしい。よく82分でこんなにキャラも性格も立ち位置も違う4人の兄弟姉妹を、描き切られたものだなと。
繰り返し申し上げます。
82分!
長いから良いって訳じゃないんだぞ、邦画界!
※もちろん例外もあります。
そんな訳で、単純な家族映画と思いきや、田舎町あるある事情を土台に複雑な兄弟姉妹の背景と、そこに伴う周りの人々との繋がりも非常にうまく盛り込まれた作品でありました。
特に好きなのは長男ですね。
家族の前ではイキがっていますが、お願いと言われたら断れない(風に生きてこなきゃいけなかったんだろうなという)性格と。その布団いつ干したのさっていう、あの部屋。どうでも良いですが、長男の部屋が1番客が来た時に駆けつけやすい場所にあったのも、個人的に田舎の店あるあるな感じでポイント高いですね。
本当にキャラ立ち半端ない。
この長男と、訳ありで帰ってきた長女、それにニートの次男の前に爆撃機(嫌な言い方で申し訳ないが、もうそれしか言いようがない)のように飛来する主人公。
結果的に自分がスッキリすればいい、という視点で動くので、まあ嫌われまくる。
でも、自分が嫌われてるということが、多分あんまわかってないんですよね。自分がやってることが正しいと思い込んでるので。
結果的には最良の選択。
ただ、それって人としてどうなんだ?
…うん。
なんか、本当にこの作品を通して、いろいろと反省してしまった。
なお、この作品の素晴らしいところは課題提起するだけでなく、ちゃんと答えに導いてくれるヒントをくれるということ。
忙しさと合理性のあまりに、他者との関係性を損得で勘定したり、数字でカウントしたりするような習慣がある方に、是非ご覧いただきたい映画だと思いました。
重ねて言います。
82分。
でも得られる教訓は一生モノ。
ただの成長物語ではない、家族劇
中川監督の作品をよく観ていたのもあり、鑑賞。
わたしは光をにぎっている、とかとタイトルが似ているように、静かめな雰囲気は似ており、その空気感もとても心地良い。劇伴がそれをサポートしている。
中川監督の原案とのことで、作風が引き継がれている。
そんな雰囲気の中でも、主人公はアクティブなキャラクターと、他の作品とは明確に違い、テンポよく話が進み、周囲との対比がとても際立っている。
主演も厳しいキャラだけど憎めない役回りをうまく演じていた。
飽きることなく、90分あまりを楽しめた。
終わり方は賛否両論あるかもしれないけれど、自分はとても良かった。ありきたりな成長物語にしないあたり。
じんわりと響いてくる、というよりは家族劇としての暖かさ+あとを引く面白さ。
そして、普通に鑑賞していたら、なんと鑑賞後に佐近監督飛び入りで挨拶という、いままではじめての展開。いろいろとお話も聞けました。
2023年劇場鑑賞56本目
こくベジ
全体を覆う雰囲気と自然な演技が心地よかった。
言ってることは間違っていないものの、合理主義が過ぎて軋轢を生む主人公。
自らの目的のために兄姉弟の背中を押し、それは結果的に家族を良い方向に進ませるのだが、自身は。。
非常に現実的な内容をリアルに描いており、良くも悪くも説明的なところがない。
知らない家族のゴタゴタを傍から眺めてる感じ。
司や明日香、長女の娘など役目を終えたキャラのほとんどがパッタリと出てこなくなる。
次男の自立や憲太郎の件も宙ぶらりんで、基本的に「その後はすべて想像してください」という設計です。
正直、他はまだしも主人公の“次の一歩”だけは描いてほしかった。
遥風の変化に対して、賢太郎の失踪以外は因果が薄く感じ、群像劇と見るには掘り下げが浅い。
悪くはないのに、何とも感想の持ちづらい作品でした。
個人的には明日香との距離感が好きだったので、義妹になった後の関係を見てみたかった。
今どんな気持ち?
家族を見下し一人で生きてきたつもりの人に認められたい欲求の強い女性が、疎遠だった兄姉達と絡み考える話。
学生の頃から才能を発揮しHR系ベンチャー企業で働いていた女性がパワハラを指摘されて、態度を改めるのではなく辞職して企業する選択をする中、母親が亡くなり家業をしながら兄姉が暮らす実家を売ろうと画策し、と始まって行くけれど、大した自信家ですね。
上司に言われた通りそのお仕事でパワハラってねぇw
確かに流れでその仕事をしている長女と長女は煮え切らないけれど、今はそれを生業としている訳だし。まあ次男はお話しになりませんが。
そんな家庭環境で一人自立しているつもりの主人公も、結局は実家を売った金をあてにしている訳で同じ穴の狢な訳だけど、それに気付かず。
自分の目的の為の行動が、なんだかんだ家族の為になったり気付きになったり。
笑いどころは殆どなく、至ってマジメなドラマだけれど、登場人物達の性格や機微がバラエティに富んでいて、自身にも当て嵌まりそうなところも少なからずあるし、堅苦し過ぎず重過ぎず、なかなか面白かった。
日常の延長のような、ありふれたテーマだけど、おしゃれなカットや過剰...
日常の延長のような、ありふれたテーマだけど、おしゃれなカットや過剰な演出などの余分なシーンはなく、演技の違和感もない。ファスト映画ができないようないい映画をみた。
兄弟姉妹の話しってわりと好きなジャンル
兄弟姉妹って血が濃くつながっているがゆえに、似たところがありすぎるし、だからこそか、大人になればずっと離れて過ごしていることが多い。それが、親の他界等で一緒に集うとき、ふと、自分のルーツってこんな感じだったと思い出し、初心にかえることがある。とても近いのにとても遠い存在でもあるような関係。
この映画に出てくる兄弟姉妹は、いわゆる世間一般が思うような、妻も夫もいて子供いてというシアワセを誰も享受していない。長兄は親の稼業を継いで結構歳がいってそうだが独身で、農家の歳のかなり離れた娘にアプローチしている。姉は離婚の出戻りで家の手伝いをしている。次兄はもっとも状況がわるくて、実家にこもってニート。
そこに、ベンチャー起業からパワハラをとがめられても自我を通し、退職して企業しようとする、合理主義のような末妹がしばらく実家に居候することになる。実家を売って資金を得ようと、兄姉の独立を促す。
その過程はお互いの性格の違いが浮かび上がってきて、兄弟姉妹ならではの思いやりと照れくささがゆえの突き放しが振り子のように揺れ動く様はおもしろい。結果的に、実家は売ることにはなるものの、一番変わったのは妹だったのかなと最後に思った。変わった自分を表現する言葉がみつからないという風に解釈したんだけど、それは観たひとそれぞれの解釈や感じ方だろうと思います。
主演の森田想、とても自然な演技で、いわゆる女優って感じはいい意味で消えているし、こんなひといるようなぁって思わせてくれる演技でよかった。
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