劇場公開日 2023年3月31日

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「兄弟姉妹の話しってわりと好きなジャンル」わたしの見ている世界が全て 菜野 灯さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0兄弟姉妹の話しってわりと好きなジャンル

2023年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

兄弟姉妹って血が濃くつながっているがゆえに、似たところがありすぎるし、だからこそか、大人になればずっと離れて過ごしていることが多い。それが、親の他界等で一緒に集うとき、ふと、自分のルーツってこんな感じだったと思い出し、初心にかえることがある。とても近いのにとても遠い存在でもあるような関係。
この映画に出てくる兄弟姉妹は、いわゆる世間一般が思うような、妻も夫もいて子供いてというシアワセを誰も享受していない。長兄は親の稼業を継いで結構歳がいってそうだが独身で、農家の歳のかなり離れた娘にアプローチしている。姉は離婚の出戻りで家の手伝いをしている。次兄はもっとも状況がわるくて、実家にこもってニート。
そこに、ベンチャー起業からパワハラをとがめられても自我を通し、退職して企業しようとする、合理主義のような末妹がしばらく実家に居候することになる。実家を売って資金を得ようと、兄姉の独立を促す。
その過程はお互いの性格の違いが浮かび上がってきて、兄弟姉妹ならではの思いやりと照れくささがゆえの突き放しが振り子のように揺れ動く様はおもしろい。結果的に、実家は売ることにはなるものの、一番変わったのは妹だったのかなと最後に思った。変わった自分を表現する言葉がみつからないという風に解釈したんだけど、それは観たひとそれぞれの解釈や感じ方だろうと思います。

主演の森田想、とても自然な演技で、いわゆる女優って感じはいい意味で消えているし、こんなひといるようなぁって思わせてくれる演技でよかった。

菜野 灯