史上最高のカンパイ! 戦地にビールを届けた男のレビュー・感想・評価
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ベトナムにビールを届けた男の嘘みたいな本当の話
まず、これが実話を基にしていることに驚く。ベトナム戦争真っ只中の1967年、地元の飲み仲間たち相手に、言葉のあやと言うか、成り行きで、戦地に赴いた友達にビールを届けると言う無謀な冒険を実行した男がいた、という嘘みたいな本当の話である。『メリーに首ったけ』(98)などで知られるピーター・ファレリー監督は、主人公のチッキーが色々な幸運と偶然に助けられ、ベトコンがあちこちに潜む血生臭い戦地をギリギリですり抜けながら、無謀な冒険の先に待っていた厳しい現実に打ちひしがれる姿を追って行く。
そもそも、ビールを届けに来たなんて誰も信じないとか、そのような体でベトナムにやって来たチッキーが兵士たちからCIAと間違われ、特別待遇を受けるとか、物事はある地平を跨ぐと意外な方向に進む展開は、ファレリーらしいユーモアに溢れている。
しかし、ベトナム戦争を支持していたチッキーは、戦場を自ら体感することで報道されている事実と現実との乖離を知り、物事には表と裏があることを学び、さらに、自分の軽率さと初めて真剣に向き合うことになる。
ベトナム戦争終結から半世紀弱、ハリウッドがあの戦争の意味を何の変哲もない1市民の成長と変化のドラマに落とし込むことで、ウェルメイドなヒューマンコメディを作ったことに、少なからず感慨を覚える。同時に、戦場に駆り出されたチッキーの友人や、現地で知り合ったベトナム人の警官など、庶民レベルで眺める戦争の矛盾と恐怖は、今のウクライナ報道にも通底しているようで、寒々しくもなる。
そして、本作はアイドルスターから死に物狂いで脱却を模索してきたザック・エフロン(チッキー)の、俳優としての代表作になることは間違いない。
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