みんなのヴァカンスのレビュー・感想・評価
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ギョーム・ブラックの小宇宙を堪能。
ギョーム・ブラックが前作に続いて、職業俳優でなく、ワークショップの参加者たちを使って撮ったバカンス映画。それにしてもよくもまあ参加者たちそれぞれの魅力を引き出したもんだと感心しきり。ほどよく感じが悪かったり、それでいてそれなりに悪いやつではなかったり、人間性の配合が絶妙。そしてどんな居心地の悪い瞬間も、一貫して優しい視線が感じられるような気がするのは、つい作り手を信用してしまうギョーム・ブラックの魔力のせいか。
子守りに明け暮れる青年だけは、人間が出来すぎているのではないかと思ってしまうが、それでも結局は応援してしまっているので、まんまと本作が生み出した小宇宙にハマっているのだろう。ひとときこの小宇宙を堪能して、また現実に戻る。ただそれだけの映画だし、それだけのことがとても貴重に思える。
65~70点ぐらい。終わりが好き。
ヒップホップであってバラードのよう
偶然集まった、どうしようもないけど愛すべきキャラクターたちの一夏のヴァカンス。
このどうしようもなさが味になっていて、人生のキラキラした部分に限らず、ままならなさや不運が重なるリアリティがなんだか心地よく感じる。それでも時折り訪れる幸福な瞬間との対比が美しさを強調していた。
静かに笑わせてくるタイプのコメディも、あざとさがなくて癖になる。劇場で控えめに聞こえる笑い声に、こちらも同じ気持ちやで。と謎の連帯感を感じました。
演者はフランス国立高等演劇学校選抜で、脚本はワークショップを通してパーソナリティを引き出して創ったらしく、彼らから滲み出ていた生っぽい人間性に納得した。
特に固有のものもない南フランスの田舎町での日々が、やけに特別に見えてしまう。10月初旬、名残惜しい夏をこの映画によって未練残さず締めくくれた。行ってないのに最高のヴァカンス体験させてくれた。
とんでも癒し映画
ぼくらの思い出
ここで終る?っていう終わり方
大きな事は起きないのにずっと面白い
みていてとてもすっきりした映画。
今年281本目(合計556本目/今月(2022年9月度)24本目)。
※ 「ブルーロック 超速上映版」をこのあとみにいきましたが、アニメに評価需要はあるとは思えないので飛ばします。
…ということでこんどはおフランス。
名前の通り、日本と違って長期休暇を取るヴァカンスという文化がフランスにはあります。このときにいわゆるフランス国内での「田舎」にでもいって、そこで自然を味わうのもよいし、別のことをするのもよいし、「比較的長く与えられる」というのが一つのポイントですが、日本部下ではまだ根付いていないようですよね。
といっても登場する男女3人たちがどの方も魅力的な方ばかりで、しかも「お互いを思いやる」という点はとても徹底的な教えなのがフランスです。最初こそであって、多少ずれているかなぁ、という部分も修正されていきます。こういう部分はとても好きです。
まぁ正直、日本ではバカンス自体がないし日本で仮に泳ごうかと考えて(法律・条例を加味した上で)泳げる海・川なんてそうそうあるのではないのですから、この点は日本にいながらバカンス基準、というところだろうと思います。
この「何か特別なイベントが起きることもなく、(設定にそって)日が続いて最終日になったらおしまい」というストーリー一本で、そこに男女の交流などが織り込まれています。
一切無駄のない映画という点ではとても高評価かなと思います。
フランスの青春
暇つぶしに観るにはいいかもしれない。
イケてない男たちのすれ違いと邂逅
2020年。ギヨーム・ブラック監督。セーヌ川沿いのイベントで意気投合して一晩を過ごした彼女を追って、600キロも離れた避暑地を目指す若い男。おとなしい友人を誘い、同乗アプリで女性と偽って車を持つさらに若い学生を捕まえる。3人の男がくりひろげる避暑地での数日間。
川から川へ、ダンスからダンスへ。知らせもせずに女性を訪ねてしまう独りよがりな男と、子持ちの主婦や人妻をついつい助けて恋に結びつかない無害な男、そして母親に頭が上がらない初心な若い男。イケてない男3人(とくに女性をめぐって)のすれちがいと邂逅。単純に物語がべらぼうに面白い。キャラクター造形に無理がなくセリフの端々まで気が利いている。出演者は学生だということに驚き。
端正な画面と的確なカットの編集もここちよい。川は泳ぐのではなく飛び込んでしぶきをあげるものであり、自転車は二人乗りか二人並んで乗るものであり(そういえば、二人と書いて気づいたが、映画のなかの人物はなんらかの形で二人一組のペアになっている。友人のペア、姉妹のペア、いびきをかく男のペア、怪我をするペア、など。一度あることは二度ある)、川は木々かフェンス越しに覗くものである。無害な男が子持ち女性の気を引こうと赤ちゃんをあやす場面は、マネ「草上の昼食」の構図を狙ったものに違いない。
どこがどうとはいえないが、濱口竜介監督と同時代の映画作家だなと思わせる。最高。
たっぷり1週間?生きた会話とキャラクター
夏休み映画の巨匠が贈るエリック・ロメール作品のような心地よさと気まずさ、作品を包む風通しのよさ。そして欠かせないのが水辺。
どう考えても主人公フェリックスが一番いやなやつでイライラだけど、裏を返せばそれだけキャラ立ちした人間らしいってことだろうか?器小さめ拗らせ感に共通性あり。サプライズ!友人"中耳炎"シェリフ(『おおかみこどもの雨と雪』Tシャツ!『ゲット・アウト』の友達思い出した)も相乗り運転手"子猫"エドゥアールも優しくていいやつ。タイトルに偽りなしでそれぞれにスポットが当たるのだけど、赤ちゃんと遊ぶシェリフのパートに基本癒やされる。エドゥアールのちょくちょく女知ってるぜアピールもほほえましい。サーファー風ヤローは確かに腹立つかも。
ただただリアル、そしてすれ違い。いつまででも見ていられそうな --- だけど多分これくらいの尺が一番気持ちよく愛しさあふれて見られる --- ギヨーム・ブラック監督らしさにファンなら思わずコレコレ(待ってました!)と言いたくなるはず。待っているのはそれぞれの夏の終わりとこれからへの予感、新たな一歩。ひと夏の思い出にふさわしい作品だったけど、きっとまたふとしたときに見直したくなりそうだ。実際、こういう単館ミニシアター系はリピートも大アリだと思います。
クスクス笑える優しい映画。
子猫と小犬と中耳炎
夏の夜のセーヌ川沿いで意気投合した彼女が家族とヴァカンスに出かけるのを聞いて、サプライズで600㎞も離れた町に会いに行っちゃった男と友人と巻き添え君の話。
彼女と言っても付き合っている訳でもないし1度会っただけ。
それでも辛抱堪らんなフェリックスが超絶優しい負け組シェリフと共に相乗りアプリで待ち合わせたエドゥアールと共に600㎞離れたディーの渓流を訪れて巻き起こって行く。
残念ながらジェントルマンな感じが微塵も感じられないフェリックスとレディーな要素が見当たらないアルマのやり取りに、ニナちゃんにモテモテなシェリフや自立出来ていないエドゥアールの自身との対話や3人の関係性をみせるコミカルなストーリーですね。
愉しいばかりじゃないけれど、そして今後これを切っ掛けにそれぞれ変化があるかもわからないけれど、想い出には残るであろうアオハルなヴァカンスだった。
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