劇場公開日 2022年9月23日

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「干ばつ被害と人々の不安を描くミステリー」渇きと偽り 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0干ばつ被害と人々の不安を描くミステリー

2022年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

個人的な話かも知れませんが、観るのが非常に珍しいオーストラリア映画である「渇きと偽り」を観に行きました。「クロコダイルダンディー」以来かも。

内容的には、雨不足で干ばつに悩まされるオーストラリアの穀倉地帯の地方都市で起こった親子心中事件に疑問を持った連邦捜査官のアーロン・フォークが、自らのティーンエイジャー時代に関係した同級生の殺人事件と絡めて、2つの事件の謎を解いていくというものでした。刑事の子供時代の事件や出来事と現在の事件が絡むミステリーと言うと、定番としてしばしば見かけるパターンですが、本作の特長はカラッカラに乾ききった大地の風景の映像が、何となく観る者に不安感を抱かせる点にあったように思います。
「オーストラリア」「干ばつ」というキーワードで検索すると、2010年頃から問題が表面化しているようで、これに伴って小麦の収穫量が減少し、世界的な小麦価格の上昇の一因にもなっている模様。そうした現実社会の背景があるため、登場人物が総じて暗い表情をしており、ささくれ立った感情を暴露しているところもすんなりと受け入れられてしまう創りになっていて、物語の土台の部分が非常にしっかりと創られているように感じられました。

肝心の謎解きの部分に関しては、字幕を追っていて自分が気付かなかっただけなのかも分かりませんが、主人公が真犯人にたどり着くきっかけが、ちょっと唐突な感じでした。やはりミステリーは、観客なり読者なりに対しても謎解きが出来る材料を事前に与えてくれないと、あまり爽快感は得られないので、ちょっと残念なところでした。(もう一度見直せば材料が与えられているのを確認出来るかも知れませんが。。。)

いずれにしても、干ばつ被害に遭う中、不安感満載の人々の心情を上手く描けていたことを評価して、★4としたいと思います。

鶏