「スケールアップのための仕掛けがことごとく不発に終わっている」映画 イチケイのカラス tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
スケールアップのための仕掛けがことごとく不発に終わっている
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変人、入間みちおと、彼に振り回される真面目人間、坂間千鶴の掛け合いが、相変わらず絶妙で、楽しませてくれる。コメディエンヌとしての黒木華の魅力も、再確認できる。
ただし、物語を構成するプロットがお粗末で、ミステリーとしての体を成していないのは、いただけない。
そもそも、イージス艦の衝突事故と最年少防衛大臣のエピソードは必要だったのか?
いかにも巨大な国家権力が絡んでいるかにように観客をミスリードするための仕掛けなのだろうが、隠蔽しようとしていたものが「艦対地ミサイル」では、何のスキャンダルにもなっていないし、肩透かしとしか言いようがない。
それから、法律に失望した人権派弁護士を登場させるのは良いとしても、彼がなぜ殺されなければならなかったのかは疑問である。その真犯人も取って付けたようだし、単に「殺人」という重大事件を物語に絡めたかっただけのように思えてならない。
そして、極め付きは、工場による環境汚染という物語の骨格を成すエピソードで、その説得力のなさには唖然とさせられる。
いくら地元を愛しているからといっても、住民たちが、地域ぐるみで工場の不正を隠蔽するなんてあり得ないだろうし、それ以前に、国や自治体や企業側が、何の救済策も講じないということも現実的ではない。
テレビドラマを映画化するにあたって、物語をスケールアップさせるための色々な仕掛けを施したものの、それらがことごとく空回りしてしまい、結果として、中身がスカスカになってしまったように思えるのである。
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