劇場公開日 2022年8月19日

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「スタローンの心境の変化とアポロとドラコへの掘り下げと初期幻エンディングを実現したもう一つのロッキー」ロッキーVSドラゴ ROCKY IV ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0スタローンの心境の変化とアポロとドラコへの掘り下げと初期幻エンディングを実現したもう一つのロッキー

2022年8月21日
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鑑賞方法:映画館

80年代を代表する大ヒット作で、当時のトレンドや冷戦を知らない人にはどう見えるのか、分かりませんが、当時のスタローンは、本作とランボー2・3で反ソ連な作品を作り、良識派の批評筋からバッシングを受けていたと記憶。

ロッキーシリーズは、やはり最初の『ロッキー』(1976年の一作目)が至高ですが、32465の順番で思い入れあり(5も良作)、今回1985年の『ロッキー4』の未使用素材42分を使って再編集したと聞いて、いわゆる未公開場面を追加した完全版と思っていたら、上映時間が殆ど同じバージョンになっており、近年のスタローンの映画人として教示にも興味もあり拝見したが、85年版の見せ場は、殆ど残っているが、絶妙な足し引きにより、アポロとロッキーの関係性やアポロへの想いを吐露する場面などの追加や悪役然としたところが、殆どだったドラコへの見方や絡みが足されており、のちのスピンオフの傑作『クリード』シリーズとの親和性が高まった良改変になっている。

ネタバレあり

改変前のバージョンでは、冒頭からあった対ソ連な部分が、無くなることでイデオロギーも緩和されて、ソ連での試合後に起こるいくつかの点も変わっており、個人的に一番唸ったのは、ロッキーがドラコにエールを贈り交差する場面とリングを降りるラストシーンが未公開シーンを使って追加や変化しており『ロッキー』(1976年の一作目)で、最初に予定していて没になった幻のラストシーンを彷彿とさせる締めになっていて、実は1985年当時から様々な見方を想定して撮影までしていた事が解る。(35年前の作品で40分も未使用フィルムが残っている点やスタローンの映像作家としての対応と構想力も凄い)

ちなみに一作目での幻のラストシーンは、ご存知な方も多いと思うけど、アポロとの激闘を終えて敗れたロッキーがエイドリアンと肩を並べて静かにリングに背を向けてを去るシチュエーションだったそうで、実際に撮影もされていたが、試写で観たプロデューサーが違和感があり再撮影決断して、されたモノが、今のエモーション性の高いラストシーン。
映画は大成功したのでこちらが、公開版が正解だったと思うけど、スタローンの中では、実はこだわりがあり再現したかったのでは?と思う。

個人的にロッキー3が大好きなので、95年版冒頭にあった3のラストシークエンスがカットされて、3であった別の場面が追加されて、互いに尊敬しながらも敵対する人物だったアポロとロッキーとの間に強い友情が芽生えるところなどは、初見でも分かりやすくなっているが、お互いの衰えや老いも自覚する場面が公開版でも効果的だったので残して置いても良かったかも。(最もただでさえ劇中で同じ場面や過去映像が、途中の回想や映画最後のクレジット画面に繰り返されるので、総集編や手抜きに見えるからかな?)
それ以外に感じたのは、多くのファンから評価の低いロッキー5冒頭との繋がりもこちらの方が良い様な気がする。

気になるところは、時代感のあるポーリーとお手伝いロボットとの絡みが、全面的にカットされた影響でチョイとゲスで駄目なところが、作品にリアルで俗な面を出していたと思うし、子供との家族の描写が減ったの少し残念。あとドラコの妻(ブリジット・ニールセン)の場面も少し減って様な?(うる覚えです)

当時のヒット作でテレビでも何度も放映されている作品でロッキーファンの方は何度も観てるとおもいますが、未公開場面を追加した無駄に長い完全版とは一味違う、スタローンの心境の変化とアポロとドラコへの掘り下げと初期の幻エンディングを実現したもう一つのロッキー!でもあり、最新の音響効果で試合の臨場感と迫力が確実にアップして、パンチの音に質感があるので、機会が有れば音響の良い劇場行くのがおすすめ!

追記
スタローンはエクスペンダブルズ4を製作中らしいけど、サプライズでカール・ウェザースも出ないかな。『マンダロリアン』 で監督してるしSNSもやっているので健在なハズ。(もしかして思想的に対立してる?)

ミラーズ