エゴイストのレビュー・感想・評価
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ふたつの喪失を取り戻す物語
●公式サイトからあらすじ
14 歳で⺟を失い、⽥舎町でゲイである⾃分を隠して鬱屈とした思春期を過ごした浩輔。今は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仕事が終われば気の置けない友人たちと気ままな時間を過ごしている。そんな彼が出会ったのは、シングルマザーである⺟を⽀えながら暮らす、パーソナルトレーナーの龍太。
自分を守る鎧のようにハイブランドの服に身を包み、気ままながらもどこか虚勢を張って生きている浩輔と、最初は戸惑いながらも浩輔から差し伸べられた救いの手をとった、自分の美しさに無頓着で健気な龍太。惹かれ合った2人は、時に龍太の⺟も交えながら満ち⾜りた時間を重ねていく。亡き⺟への想いを抱えた浩輔にとって、⺟に寄り添う龍太をサポートし、愛し合う時間は幸せなものだった。しかし彼らの前に突然、思いもよらない運命が押し寄せる――。
***
作品の冒頭、母の命日に、故郷に帰った浩輔が幼年期に自分を「オカマ」と罵った、今も地元で暮らしているらしい、よれよれの作業着を着たいじめっ子と横断歩道ですれ違う。
浩輔は、当時のいじめっ子たちを「豚」と呼ぶ。そして、大人になったいま、自らが着る高級ブランドの洋服を「鎧」と称し、無理解の敵から、自分を守ってくれるものだと心の中で呟く。
他方、偏見に満ちた田舎から都会へ飛び出し、同好の士に囲まれ、一定の理解が進むファッション業界で高い収入を得てもなお、浩輔にはどこか隙がなく、幾重もの「鎧」を身に纏っているようにも見受けられる。
鈴木亮平演じる浩輔は少年期にすでに同性愛性向があることを自認したようだ。そして、時同じくして、母を喪う。この多感な時期に、愛することと、愛されることの両方が、身のまわりにある多くのケースと異なっているという自覚が、後のかれに重い「鎧」を着せることになる。
ドキュメンタリー映画のように寄りが多用されたカメラワークが何度も捉えるのは、浩輔が鼻で強く息をする瞬間だ。ため息のような、深呼吸のような、忘れていた呼吸を思い出したかのような、あるいはどこか不浄な白い粉を勢いよく吸い込むときのような刹那、かれはふと鎧を脱ぐ。
表題の「エゴイスト」には、自分本位、利己という意味が充てられる。長い行列をなす人気店に我先にと割り込むその人は文字通りエゴイストである。
では、視力を失った人が星空を見たいと願うことはエゴなのだろうか?幼いころに愛すること、愛されること両方を喪った人が、時を経て、鎧を脱いでも良いと思えるパートナーやその母親と出会い、かれなりの不器用な方法で埋めようとする、どこまでも利他的な情動はエゴなのだろうか。狭いキッチンで阿川佐和子演じる母と、「わがまま」という言葉が飛び交う押し引きの場面は特に象徴的である。
エゴイストの意味
私は境遇が似ているもので、非常に心に響く良い作品でした。
最初は主人公のオネエの演技に非常に違和感を感じましたが、他の作品よりはリアリティがあるかと思います。
中盤の山場、阿川さんとのやりとりは人事では無い共感を覚え、涙が止まりませんでした。
後半〜最後のシーンでタイトルの主題の意味が自分なりに理解でき、そういう事か。と。
エゴイストという武装をしていた主人公が最後に人から求められる事で心境に変化が起きる…
それを描写する鈴木亮平さんの演技、素晴らしかったです。
愛なのか
トイレのピエタが(昔すぎてほぼ記憶ないけど)よかった印象の松永大司監督作品。今作は鈴木亮平と宮沢氷魚のゲイカップル役が話題なのか、TOHOシネマズ日比谷は女性観客8割。
関係継続のため鈴木が宮沢へ生活費を渡すことが単なる援交に見えなくもなく、宮沢の死後も母の面倒をみつづけることで、愛の証として成り立たせているように思え、阿川佐和子が死んだら戒名つけて墓も立てるの?とか、どこまでエゴイズムを貫くのか気になった。
話は淡々と進行し、人物に寄った手持ちのカメラもあってドキュメンタリーっぽいのだが、宮沢と一緒の時とは違って鈴木が飲み仲間とはオネエっぽくしゃべるのが違和感。リアルにこういう感じってあるのか?ノンケの自分にはよくわからず、もやもやした。
タイトルの意味を今でも考えています。
鈴木亮平さんが主演の時点で、BLでキャスティングされるタイプでないと感じた。
BLではくくれない、家族の物語。
この前に「ちひろさん」を観て、この後「美しい彼 スペシャルエディットバージョン」を観るチョイス、どうなの自分と突っ込んだ。
浩輔と龍太の恋愛関係は、かなりがっつりなベッドシーンも含めてきれいだなと感じた。
若いサラリーマンが毎月20万渡すって大変なこと、お互いに真摯に想いあっていて、このまま幸せになって欲しいなと願った。
龍太の家族の状況は、なんらかのサポートが必要なレベル。
最初の分岐点は龍太の母親が離婚する時、次は龍太が高校を中退する時。
どちらも、公のサポートを受けるように動けば、違う結末もあったはず。
しんどい時は、助けを求めていい。
そして、元気になったら、今度は困っている人を助けてあげればいいのだ。
エゴイストってタイトルが、内容にそぐわなくて考え込んだ。
浩輔が自分の生活スタイルそのまま、無理せずできる範囲のサポートしかしなくて、龍太を喪ってしまったことを言っているのかな。
例えば、浩輔が40代後半で、愛する人を喪失する体験をしていたら、龍太へのサポートの仕方は変わっただろう。
問題ありありの龍太の環境を放置せず、様々なサポートを利用して、一から構築しなおしていたかもしれない。
もともと、龍太が病弱で、早逝した可能性は否定できないけれど、できることをすべてしていたら、後悔はしなかっただろう。
でも、人間、その時考えられる範囲で最善の選択をして、失敗して初めて学ぶ。
それは、エゴイストとは呼ばない気がするんだよなあ。
こんなふうに観た後も色々考えるのは、楽しいものです。
意外な結末でしたね。 途中の歌唱シーンかなり笑いそうになるのを我慢...
何回か見たい
演技と演出がマッチしてるのか
エゴイスト
形
ソフトなBLよりかは規制の入るくらいの描写を携えたBLの方が好きなので、しかも主演2人の掛け合いが予告の時点でとても良さそうだったので公開から1ヶ月ほど経ってから鑑賞。
前半と後半で物語の根幹こそ変わらないものの、全く違う物語へと変わっていく不思議な作品でした。
まず前半は浩輔と龍太のフレンチキスからのハードなベッドシーン。「窮鼠はチーズの夢を見る」ほど激しくはないですが、とても美しいベッドシーンでした。2人の手つきや仕草がとても綺麗で、見てはいけないものを見ているはずなのに、見入ってしまう、そんな迫力がありました。
龍太が一度は浩輔を突き放しますが、それでも龍太が必要だった浩輔が支えるという名目で龍太に付きっきりの生活を送ることになります。生活費を渡す、お客以上恋人未満といったところでしょうか。でも2人は幸せそうで、母親とも一緒にご飯を食べたりと、平穏な生活が続くと思われたのですが…。そこで龍太の死はかなり驚かされました。
龍太が過労で亡くなってしまった後、龍太のために尽くしていた浩輔が今度は龍太の母の生活費、そして生活の面倒も見始め、実の息子の様な感じになっていくのは依存では無く、まさしくエゴもといワガママなんだなと思いました。タイトルの意味が一貫していて、物語の終わりにエゴイストのタイトルが出て来た瞬間は唸るものがありました。
部屋の装飾や衣装なども凝っていて、浩輔の部屋はとても綺麗に纏められており、こういう部屋に住んでみたいな思えるものになっていました。
ちょっと残念だったのはゲイという設定がオカマに近い造形で作られていたことです。結構違うと思うんですが、全体的に女性っぽい仕草をする男という感じで進められていたので、もっと普通の男で進んだら良かったのになとは思いました。あと物語が思った以上に長く感じてしまい、浩輔と龍太のシーンを気持ち長くしていても良かったのではないかなと素人ながら思いました。
とても純で、エゴイストというタイトルの意味を深く考えさせられる作品でした。公開から1ヶ月経っても興行は上向きです。今がちょうど見頃ではないでしょうか。
鑑賞日 3/13
鑑賞時間 11:55〜14:00
座席 E-1
ゲイのレベルの上がった愛物語
優れた表現スタイルと、1点の疑問
(完全ネタバレですので鑑賞後にお読み下さい)
私は異性愛者であるのでこのような題材の映画を見るのはどうなんだろうとの躊躇もあったのですが、おそらく2023年の代表する邦画の1つになる予感もあり鑑賞しました。
結果、やはり優れた映画で、見ておいて良かったと思われました。
この映画の特に優れている点は、主人公の斉藤浩輔(鈴木亮平さん)と恋人の中村龍太(宮沢氷魚さん)の2人の世界を、ほとんど寄りのサイズでしかも手持ちカメラで表現しているところだと思われました。
その理由は、現在の日本において、本当の意味でのゲイ(あるいはLGBTQ)の世界は、その小さな世界にフォーカスしないと生き抜くことは出来ない難しい現実であることを、2人の世界のクローズアップの画角で表現していたと思われたからです。
この2人の世界にフォーカスするカメラ表現は、一般の日本の現実が本当の意味では彼らの世界に無理解だということを、非常に正確に、今の世界を捉え表現していると私には思われました。
それは、特に彼らの世界の外にいる私のような人間には深く突き刺さる表現だったと思われます。
ところで、1点だけ個人的には疑問の個所をこの映画に感じました。
それは、中村龍太の母親である、中村妙子(阿川佐和子さん)の言動です。
主人公の斉藤浩輔は恋人の中村龍太の死後に、中村龍太の母親である中村妙子に対して、自分のエゴで中村龍太に無理をさせてしまった、中村龍太の死は自分が追い込んで招いてしまったとの趣旨の思い切った告白と謝罪をします。
その時に中村妙子は、斉藤浩輔に対して「謝らないで」との慰めの言葉を掛けるのです。
もちろん、この中村妙子の斉藤浩輔に対する、あなたに責任はないのよ、との思いは、正しい感情だとも言えます。
しかし私は、この場面で中村妙子は<いや、龍太の死は私に責任がある>と伝える必要があったのではないかと思われました。
中村妙子は斉藤浩輔が初めて自分の家に訪ねて来た時に、斉藤浩輔に彼女はいるの?との質問をしています。
またその時、中村妙子は息子の中村龍太に、斉藤浩輔はあなたにとって大切な人なのかと聞いて、それに対して龍太は(私の記憶違いでなければ)明確に答えていないことが後に明かされます。
つまり、中村妙子は息子がゲイであることを薄々感じていながら、そのことについて互いに深く話をしていなかったことが分かるのです。
このことは、母親の中村妙子が息子の龍太がゲイであることを、潜在的には認められていなかったのが理由だと思われます。
(彼女が潜在的にゲイを認めていなかったからこそ、中村妙子と息子の中村龍太の間には率直にそのことを話せない見えない壁があったと思われます。)
ただ私はそのことについて中村妙子を責めるのは一方で間違っていると思われます。
なぜなら私自身もそして一般の多くも、(残念ながら)潜在的には彼らに対する潜在的な拒否感は厳然と存在していると思われるからです。
しかし中村龍太が身体を売ることになったのも、中村龍太が母親の中村妙子に自身がゲイであることを率直に打ち明けられなかったのが遠因となっていると一方では思われるのです。
斉藤浩輔は中村龍太の死に際して、彼の母親の中村妙子に、自分が中村龍太に無理をさせてしまったとの勇気を持った告白と謝罪を行います。
なのでそれに対して中村妙子の方も、潜在的には息子の中村龍太のゲイを否定していたとの勇気を持った告白を斉藤浩輔に対してする必要があったと思われるのです。
主人公の斉藤浩輔は、彼の母親(斉藤しず子(中村優子さん))を若くして亡くしています。
最後の方で映る回想の斉藤浩輔の母親(斉藤しず子)の横顔は、寂しそうで、私の解釈では、斉藤浩輔の母親(斉藤しず子)もまた息子の斉藤浩輔がゲイであることを薄々感じながら潜在的に拒否していたようにこちらには伝わりました。
この映画は、斉藤浩輔と、中村龍太の母親の中村妙子の病室のシーンで終わります。
そしてこのラストカットのメタファーとしては、斉藤浩輔と彼自身の母親(斉藤しず子)との、あるいは中村龍太と彼の母親の中村妙子との、息子がゲイであることに関して母親が本心から認め、2人の息子が世界と和解するラストにする必要があったと思われました。
そのためには、母親の中村妙子が、息子である中村龍太がゲイであることを潜在的には拒否していたとの告白を、斉藤浩輔に対して必ずする必要があったと思われました。
なので個人的には、特に前半は優れた作品だと思われながら、後半にそれぞれの母親に関して曖昧になってしまったのが惜しい作品になっていると、僭越ながら思われました。
点数はその評価となりました。
愛の意味とは?
男性同士の「純愛物語」です。
ファッション誌の編集者の浩輔と、彼が出会ったパーソナルトレーナーの龍太との純愛物語です。
「浩輔」を演じる鈴木亮平さん、「龍太」を演じる宮沢氷魚さんとも、俳優やモデルとして活躍しており、この二人が、自分たちのイメージを壊しかねない、「ゲイ」が主役の作品の出演を、なぜ、承諾したのだろうか?という疑問が、この作品を観ようと思ったきっかけになりました。
この作品は、作者の高山真氏の自伝的小説が原作だそうで、ここ最近、何かと話題になる「LGBT(エルジービーティー)」問題を描いた作品だと思っていました。
しかし、そうでは無くて、お互いに惹かれあって、男性同士の恋人の関係になる迄の過程が描写されています。
小説を読んでいないので分かりませんが、作者の高山真さんは、実際に、このような体験をされたのでしょうか?
私は、観終わって、かなり衝撃を受けたのですが、「エゴイストは誰なのか?」、「龍太は何故、『この世は地獄だけじゃなかった』と思うに至ったのだろうか?」と想いを巡らせました。
そして、鈴木亮平さん、宮沢氷魚さんが、この作品の出演を承諾した理由が、何となく分かるような気がしました。
宮沢氷魚2回目のゲイ映画鑑賞
坊主好きなら袈裟まで好き。
虚無・退屈
鈴木亮平の演技力はかなり研究されていて流石だった。
が、それ以外が近年稀に見るほどの低評価。
全体を通してテンポが非常に悪く、
ストーリー的な波もないので
非常に退屈なシーンが続いた末に
急いでタイトル回収がされ、
突然タイトルコールで終わる。
思わず、は?って言ってしまった。
テンポが悪い割に、
重要な部分はハショられていて、
それぞれの心情や状況の変化の描写が荒く、
展開がいきなりなことが多い。
例えば、彼が働き詰めで過労死するシーンも、
疲労が蓄積していってフラフラしたり倒れるシーンもなく、急に電話で朝死んでましたって連絡だけくる。
と言った感じで、
置いてけぼりにされたと思えば
突然、お涙頂戴でサクッと登場人物を殺したり、
病院送りにし、納得がいかずモヤモヤする。
じゃあ時間が足らなかったのか?
というとそうでもなく、
無駄な描写の時間は異様に長く、
前半はベッドシーン、
後半は父との食事シーンに無言で手元と皿が映り続けたり(気まずい感じ出すにしても長い)、
お母さんとのやり取りが極端に遅く、
引き延ばした感じがある。
また、個人的に詳細にツッコむとすれば、
お母さんにお金を渡すシーンが頭悪くて笑いそうになった。
「息子さんにもこうしてお金を渡していたんです。」
え?それ言うの?お金渡すことで贖罪するエゴイストはわかったけど、恩着せがましいにも程があって台無し。
あの歳で「あなたは魅力的です。」って言い方しないし、
月20万もらって更にあんだけバイトしてたら
かなり余裕あるはずだし、
詰め込みたいもの詰め込んでチグハグ感。
LGBTQ当事者としても共感出来ず、
主人公が現実離れし過ぎて感情移入もしにくい。
ストーリー、映像において虚無。
いっそ潔く1時間程度にして欲しかったところ。
LGBTQに媚びつつ、
監督のこだわりだけが強く残った作品。
ぶっちゃけ高評価の意味がわからない。
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