「エゴと愛、相反する言葉と思いきや根本は同じ。」エゴイスト リプリーさんの映画レビュー(感想・評価)
エゴと愛、相反する言葉と思いきや根本は同じ。
最近、映画鑑賞に新鮮味が感じられなくなってきたのですが、そのマンネリを見事に打ち消してくれました。冒頭5分で既に面白く、その後のベッドシーンは面食らいました。「虎狼の血2」で鈴木亮平さんのファンになりましたが、ネクストステージへ裸一貫で立ち向かう役者魂に心打たれました。
各シーンのカメラワークはワンカットが基本で、しかも小さな所作一つ一つを追うことでうねりを帯びた映像になっていて興味深かった。特にベッドシーン。デリケートな部分の際を狙ってくるので、下手なアクション映画を見るよりもハラハラドキドキ。
映画は徹頭徹尾、演技していないかのような芝居が続き、登場人物が自分の連れの様に感じてきます。この感覚は漫才に重なる部分があると思います。漫才は「2人の究極の立ち話」と言いますが、それくらい不自然さがなく、芸の目指すところなのかなと想像します。
そして本作はタイトルの「エゴイスト」という言葉について問いかけてくれました。エゴって愛の反対語だと認識していましたが、劇中の浩輔の行動を見てエゴだと思う人はいたでしょうか?浩輔はその生い立ちから孤独を抱え、その孤独を龍太への恋で埋め合わせます。また、その龍太を通して母親孝行の埋め合わせも行います。さらに龍太を失った消失感も加わり、更なる埋め合わせを龍太の母親に捧げます。字面で表すとエゴに見えるんですが、私の知っているエゴとの決定的な違いは「嫌味がない」っていう点です。浩輔自身、自分の行動が愛だという自覚がないところに余計エゴを感じさせません。
浩輔にはお金というツールがあり、それを嫌味なく振る舞える浩輔自身の誠意と知性(フィルター)がありました。自然と湧き上がる感情は人のエネルギーです。それがエゴで終わるか、愛に変換できるかは個人の力量次第です。自分が好きになった人やモノに対して、少しでも愛という結果に落とし込める様になりたいものだと思わされました。
ふとリアルの生活に目を向けると、日々触れているメディアには沢山の人のエゴに溢れています。対人関係でもエゴな部分が見えてくると気が重くなります。けれどそれは人にフォーカスし過ぎているから負に作用しているだけで、その人達が作ったモノやサービス、作品やパフォーマンスだけに目を向けると、そこからは作り手達の愛が伝わってきます。
映画としても観賞後の思考遊戯にも充実感を与えてくれる最高な一作だと思います。