僕の巡査のレビュー・感想・評価
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人は残酷?
マリオンはトムの性指向を受け入れられないまま結婚生活を続けたことで、自分だけでなく、トム、パトリックをも不幸にしてしまった
そして、途中には結果的に親友をも傷つけることに
何よりもパトリックを密告してしまったことは、あの時代背景を考えると万死に値する程の残酷さである
そうせざるを得なかった押しつぶされそうな思いは分かるけど……
トムも、2つの愛を享受するために、パトリックや妻を裏切り続けたことも残酷この上ない仕打ちだ
更に、奥さんが行きたくて仕方なかったベネチアにパトリックと2人だけで行っただけでなく、深い意味はなくとも奥さんに絵葉書まで送りつけるという無神経さは残酷✕残酷
そして米英の残酷さがやはり1番際立つ
黒人奴隷や、黒人そのものに対してもそうだが、自分とは異質な者に対する凶暴性を纏った残酷さは、最早人間でも正常な国家でもない!反吐が出るし辟易する
戦時中でなくても、ここまで人間は残酷になれるのかと思い知らされる
そして、それを警察官が堂々と仕事として行う異常さからは暗黒の未来しか見えてこない
まさに人は残酷な悪魔である
それとは正反対に、紆余曲折を経ながらも純愛を貫くパトリックはあまりにも美しすぎた
人間の価値が心の美しさで評価されるとするならば、この映画の中では断トツである
そのパトリックの晩年を演じたのが、あの「アナザー・カントリー」のルパート・エヴェレットだと知って驚いた
カミングアウトはしたものの、デビュー当時も最晩年も共にゲイの役を演じるとはなんということでしょう
トムと出会った頃のパトリック役とは、あまりにも似ていないので、同一人物だと認識するのに時間を要してしまった
もう少し面影の残る人、似た人を選ぶべきじゃないのかなぁ
白黒ついたら人間苦労はしない
1950年代は同性愛が犯罪と同じ扱いにされていた。
ここから既にショッキングではあるものの、同性愛者…厳密に言うと、ゲイとバイセクシャルの男(あんまりゲイっぽくなくてバイだと感じた)、それに挟まれた女性との三角関係。もう既に嫌な予感しかしない。
泥沼必至。
トムもバイセクシャルなりに仕事の関係もありどっちつかずでマリオンを悩ませ、パトリックも既婚者となったトムに対して縋りついた。マリオンは教師なりに同性愛を受け入れるわけにはいかない(同性愛は道理に反するゆえに反抗もしたし、その意思を貫いた)。
トムが本当に罪だな…と思った。でも、これが人間なんだろうと思った。
そして美術館で三人は出会うわけですが、そこでは荒れ狂う海の絵画を三人で見つめる(その前に既にトムとパトリックがその絵を見つめてていた)。その荒れ狂う海は、三人の関係を物語っているのだろうと思った。終始絵画の景色と晩年三人が過ごしている景色。それは常に怒涛のようで、息苦しいものだったろうと思う。
友人のカミングアウトが衝撃的で、かつマリオンの態度の変わり方が同性愛者に対する当時のリアクションを物語っていて切なかった。こうなるのか、と。三角関係内の人間外の人間が物語った方がよほど刺さった。
トムは結局マリオンを愛することを選んでいたけれど、晩年のショップを外から眺めていると親友同士で歩いている男性同士をみて「いや、あれは愛し合っているはずだ」と確信していたことでしょう。もしかしたら、自分もパトリックとこうなっていたかもしれないと。
(以下雑多に)
・トム…マリオンは好き(女で)、パトリックは男の恋人として選ぶなら好き。それ以上でもそれ以下でもない。特に何も考えていなさそう。パトリックのことを忘れようと逃避している。
・パトリック…トム一筋。
・マリオン…トムは良い人。晩年までトムから離れることはできなかった。愛していたし、何よりも離れたくなかった。トムのことを大切にしたい。パトリックは自らが陥れたゆえに罪の意識から共に生きることを決めた。それで罪滅ぼしのつもりでいるが、余計に彼女自身は苦しんでしまうことになる。
マリオンの立ち位置が不憫でならなかったが、彼女自身も自らの性格に白黒つけることができなかったのだろう。パトリックに向き合わないトムに苛立ちを覚え、トムではないとまともに会話すらしてくれないパトリック。自分の居場所やこれからを思うと胸が詰まったことだろうと思う。逃げ出すことはできただろうが、トムに引き留められつつ、そこでも踏ん切りがつかなかったのだろう。
最後のマリオンが車から手を出して風を掴んだシーンは、ある意味真の開放だったのだなと感じた。
好きな人を「好きだ」と少しずつ言えるようになった時代に感謝しつつも、これからも好きな人を愛せる気持ちを大切にできる時間や場面が増えていくといいな、と思う。
題名からは想像がつかない内容
あらすじを読まないで鑑賞しただけに、まさかこんな複雑な三角関係になるとは…
でも、あの海と崖とその上の台地を舞台にとてもきれいな映像の中でストーリーが進んでいったため、重いテーマながらも思ったよりもスッキリ観れたと思う。
ハッピーエンドなのかどうなのか考えさせられるラストシーンも、しっかり余韻が残り印象深い。
観てみるとなかなかの良作なのだが、題名が何だかあやしげで作品の品位を少し落としてしまっている感じがするのは私だけだろうか。
感想。
綺麗な映像で見やすかった。
彼らの演技が自然で物語に集中した。
話は予想の範囲内を出ない。
先の展開はことごとく当たるでしょう。わかりやすい。
次が予想しやすいのはびっくりさせる映画ではないから、布石が丁寧だからこそ。
トムは粗野ではなくいいやつで、パトリックは容姿も含め彼を気にいる。トムは知的な会話を楽しめる相手が好きだと思う。新しいことを教えてくれる、会話が楽しいから。
彼は善良だ。でも、固定観念があった。男はこうあるべきから外れられない。今もあるし誰でも持ってる。この時代特有ではない。
同性愛への考えは、当然悪いことだと思っているけど、自身は嫌悪してない。自分が感じたことと常識に戸惑う。
トムは偏見があまりなく、固定観念があるから苦しむ。
当時の他の男性たちみたいに強い偏見と固定観念がセットじゃなかった。
マリオンは好きだけど、パトリックと恋をしていた。
トムは自分の将来を考え、男らしい常識を選ぶ。マリオンと結婚を選ぶなら、パトリックとは切れないといけなかった。性別関係なく不倫だから。元恋人とは一緒になれないけど、好きだから結婚後もずっと続いてましたーーーはダメだよね。トムは男としてのあるべき人生のため2人を傷つけている。
仕方ないと思ったり酷いと思ったりした。正しいことは外から見てわかったように言えるけど…。
この映画は今もある話だと思うけど、時代が違かったら彼らは違う選択をしてたと思う。
マリオンは愛される人生を得られなかった。ずっと悩み罪に苛まれる。パトリックの方が趣味や話が合うが惹かれたのはトム。普通の男らしさは彼女に魅力的だった。
パトリックも恋人を自分だけのものにできず、次にも行けず。数年を奪われ、その後も過酷だっのかもしれない。赤裸々な日記は彼女に失礼な内容もあり、恋敵として敵視していたからだろう。人として嫌いとかではなくライバル視してるからで、女だから焦りもあり、でも自分の方が親密だと外に言えないから日記に書いていたと思う。公の場で勝ってることを証明できないから書き残していて、それが仇となる…。悲しい。
数十年後
トムはずっと向き合わずにいた。マリオンはずっと考えていた。
パトリックを見るトムを見て、踏ん切りがついたマリオンが悲しい。彼女は再度傷ついて報われなかったのではないか。
向き合うことから逃げ続けてしまうトムは普通の夫婦の今を変えたくない。彼女が居なくなって2人だけになってやっと男らしくいるのをやめられた。時代もある。
内容を書いてるとトムを批判するような感じになるけど、嫌いではない。好きな人を選べたらよかった。ただ、パトリックを選べたらよかった。
今も難しいかもしれないけど、憎むは時代と当時の考え。今も難しいと簡単に想像つくくらい偏見と固定観念や差別はある。罪にならなくても、今も変わらず勇気はいる。
好きな人2人を傷つけてしまったトムも悲しい。
負の歴史
映画のハリースタイルズが観たくて観たのだけど、
そこがクライマックスだった。
同性愛を禁ぜられた時代に隠れて逢瀬を重ねる二人、
愛はあるのだろうが保身の為に結婚したせいで、
三人全ての人生が無駄な時間になってしまったと言う
なんとも切ない話。
題材は面白かったのだけど、キャラクターに深みを
あまり感じられなくて、
同性愛者が初めて結ばれるシーンや、
2人の関係を知った後の妻の嫉妬のシーンなど
重要なシーンが割と軽く描かれてるような気がしました。
ラストは妻にとってはハッピーエンドだったのか?
しかし彼女のこれまでの虚無な何十年と言う人生で
自分の役目は果たしたと言う事なのか?
2人への復讐か?
男からするとモヤモヤが残る映画でした。
時を超えて自分と向き合って
それぞれの愛と贖罪の物語。対象は普通の人々だ。イケメンなハリー・スタイルズが普通の人に当てはまるかはさておき。今と昔、それぞれ演じるキャストがなかなか似ている。出会いは1957年、ハンサムな警官。だけどそれだけじゃなかった。彼の絵も描きたいが誤解されたくない…。赤裸々に綴った日記を読んで、当時を振り返っていく。仲良し三人組に秘められた秘密と真実。美術館で働いていて芸術に造詣があるパトリック。彼は警官という生き物が苦手だったけどトムとの出会いで変わった。世間一般的に粗野な警官。だけど彼は違った。トムの葛藤。『ブロークバック・マウンテン』で言えばイニス、そんな自分に困惑している。そこに重ねられる今日の状況の変化、取り巻く境遇がまた胸を締め付けるのか。『アナザー・カントリー』のルパート・エヴェレットというのもまた感慨深い。
勝手に関連作品『モーリス』『アナザー・カントリー』『ブロークバック・マウンテン』『つぐない』
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