グッドバイ、バッドマガジンズのレビュー・感想・評価
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真面目な業界モノとして佳い映画でしたが、、、
男性向青年雑誌、と漢字で書くと仰々しいですが、砕けて言えばエロ本。エロ本出版業界をテーマにした作品。出版不況が言われて久しいですが、特に厳しいのが雑誌。その中でもエロ本は「お・も・て・な・し」の浄化作戦で大手コンビニから一掃されてしまう。そんな窮地のエロ本出版に新卒で入社したヒロインの奮戦記が大雑把な流れです。
佳い映画です。脇役で出ている方は現役の女優さんだと思うし、エピソードとか職場の情景などもリアリティを感じます。で、雑誌やエロ業界の置かれている状況を「どげんかせんと」という作り手の想いがちゃんと伝わります。冒頭にYouTuberがコンビニから一掃されるエロ本を紹介するシーンがラストに繋がるとこなんて、上手いです。
初めの方に新人ヒロインと古株編集長とのやりとりにあった「エロとはなんぞ?」というサブテーマもちゃんとラストで回収してあり、凄く良く出来た作品です。
ただ、面白くするならば、もうちょっとデフォルメしてもよかったな〜。ラストでヒロインと元職場の妻子持ちイケメンが、ヤッちゃいそうになるところに、メンヘラ女房が包丁で乱入するんですね。ここがめっちゃ笑えるんですよ〜、で、気づいたのが、これって山本直樹マンガでありそうなシーン。この山本直樹風な感じで、もっとエロと不条理に振りきったら、面白かったな〜。
佳い映画と面白い映画は違うのだな、と改めて感じた良作でした。なぜ、単館でしかかからないかな〜。
2と3
終了間近だったので、劇場に滑り込んで観てきました。男性向け成人雑誌の編集たちの物語という着眼点に驚かされましたが、今までお仕事ムービーとしても完成度はかなり高かったです。真面目すぎてチョット…な部分もありましたが。
セックスやエロの定義が分からない主人公が奮闘する物語ですが、かなり耐性のない人にはキャー!となってしまう描写が多く盛り込まれています。最初は作り方が分からず困惑していますが、あっという間に慣れて後輩指導にも力が入るという変貌っぷり。テンポの良さが前半の面白さを引き出していました。
ただ、あまりにも真面目すぎる弊害が途中から出始めて、純粋にエロもお仕事も楽しめなくなったのが残念でした。製作側の伝えたいメッセージが強すぎてキャパオーバーしてしまった感じです。
終盤のナイフの切れ味からのセックスへの突入は狂気に満ちていて良かったです。かなり謎でしたが。
現役のAV女優の方々も出演しているので、もっと過激になっていればなぁとは思いましたが、自主制作で1館のみの上映から全国公開へとステップアップしていったこの作品の力はとても強いものだなと思いました。
鑑賞日 2/7
鑑賞時間 20:35〜22:25
座席 D-1
不要の必要性
ー2019年、東京オリンピックの開催に伴い、大手コンビニチェーン3社は成人向け雑誌の販売をやめた。
女性誌の編集を夢見てとある出版社に入社した詩織は、希望とは真逆の成人誌の部署へと配属される。
不本意ながら一生懸命頑張る彼女だったが、次第に時代の流れという残酷な現状が突きつけられる。
映画はジューン・ラブ・ジョイのYouTube風リポート動画から始まる。
ポップでキラキラ明るいその動画は、世界に誇るべき日本のエロ文化を世界に紹介するかのような作り。
しかし、この冒頭の明るさこそがこの物語の進むダークな一面を際立たせている。
この映画でも取り上げられる、コンビニの成人誌の販売終了のニュース、当時かなり衝撃を受けたことを覚えている。
母親は「あんなの無い方がいいわよ」みたいなことを言っていた。
でもその言葉が子供ながらに引っかかった。
確かにエロ本なんてものは特に日常生活に必要ない。
というか、やはり無い方がいいものかもしれない。
ましてや子供や多くの人の目に触れるコンビニには明らかに相応しくないものだ。
でも、無くて良いものを本当に無くしてしまって良いのだろうか。
これは当時の自分が思春期真っ只中だったからではない。
悪いもの(あえてここではそう呼ぶ)はある程度存在すべきである、不必要こそ必要なのではないだろうか。
多分私がコンビニエロ本を知っているギリギリの世代だろう。
今はなき成人誌のあのコーナー。
ちょっと気になるけど見てはいけないその聖域。
トイレのついでに視線を何気なくそちらにやりながら通り過ぎたものだ。
そこにあるべきものがないと何か寂しい。
無くて良いもののはずなのに。
そんなエロ本がコンビニから消えたあの事件のその裏で何が起きていたのか、それがこの映画。
改名した杏花が新人編集者を好演。
クセの強いヤツらの裏のお仕事ムービーなのだと、最初いや途中まではそう思っていた。
物語は前述の通り、冒頭からは想像できない方向へと進んでいく。
売れない。仲間が残らない。報われない。認められない。成功がない。
決してフィクションのお仕事映画ではない。
これは正真正銘の社畜映画。
実話を元に作っているのだから尚更残酷。
最後の展開は少しやり過ぎに感じたけれど、ある意味ホラー映画。ちょっとレビュー書くのもしんどい。結構食らった。
少しもったいない部分も目立っていた。
せっかくセンセーショナルな話題で勝負しているのだから、テーマを一つに絞ってほしかった。
メインテーマは一体、エロ文化の美化なのか?業界の厳しさなのか?それとも社会の闇なのか?セックスの本質なのか?
色々やりたい言いたいこと詰め込み過ぎて言いたいことが矛盾したりブレブレだったりで定まらなかったのが非常に残念。
また、特に叫ぶシーンなどで役者さんが何を言っているか分からなかった。
誰か1人というわけで無くて全体的に聴き取りづらく、重要なセリフも聴こえづらい時があった。
エロ本は一度社会勉強のために買ったことがある。
AVやインターネットが発達した現在、若者にとってはさらに必要のないコンテンツなのかもしれない。
しかし、日本が誇るべきこのエロ文化を廃れさせてはいけない。
文章や構成を必死に考えて、身を削りながら必要とされるかも分からないものを作っている人がいる。
ちょっとエロ本を買ってあげたくなった。
〈追記〉
前から架乃ゆらが誰かに似ていると思っていたけれど杏花が結構似ている。
役柄的に少し被ることを見越してなのか。
2人でのシーンは所々姉妹のようだった。
最後はサイコホラー
中盤まではかなり面白く、特に10ヶ月で業界に染まりきる主人公の描写が素晴らしい。
普通なら成人向け雑誌に配属された時点で、そうでなくても志望していた雑誌が休刊した時点で退職する。
しかし、劣悪な職場環境ですら継続する性根の真面目さがあってこそ、あの変化が自然に感じられた。
更にそれを、華奢で小柄で、肌も白く綺麗で、清楚で可憐な杏花さんが演るギャップ。
脇を固めるのも、リアルで人間臭く、なおかつ濃いキャラばかり。
個人的には他人の仕事も引き受けて割を食う酒本くんにシンパシー。
しかし、後半からは散漫になる印象。
主人公との絡みがない羽賀のエピソードは別作品のようだし、徳山は叫んでるだけ。
群像劇と言えば聞こえはよいが、各キャラやエピソードが繋がっていない。
もちろん、それらもあって業界の実情や悲哀が表現されていたとは思うが、ひとつの作品としてのまとまりには欠けていた。
「エロとは」まではよかったが、最後はテーマを広げすぎた感もあり、もっと焦点を絞っていれば傑作たり得たと思う。
きみと歩美と上田操がキャスト欄にいたが、見つけられなかった。(上田操は声だけ?)
立読み防止テープ
監督は、OP PICTURES+フェスでも活躍してるので、キャストや舞台(中華料理屋とウェイトレス)のコラボがニヤリとさせる演出である 本人もAV監督役で出演しているので、手弁当感は好感が持てる
なかなか身につまされる作品内容である 斜陽産業は今現在どんどんこの日本から消滅しつつあり、例え自社が無くなったとしても同産業には就けることが限りなく低い 以前ならば若い人は人生経験と称してその中からやりがいを見いだせる職種を見つける可能性があったが、昨今ではそれさえも危うく、結局何も手に職を得ぬまま人生を浪費してしまう状況が大勢である
さて、そんな今作の舞台である”成人雑誌“出版社だが、時間軸上は怒涛の如く崩れ落ちていく様をリアルに再現していると思えてならない 何かが無くなる時は、その最後は砂時計の如く加速がつくのであろう その時間の流れの速さに観ているこちらも渦に呑まれて感覚に陥るのである 色々な事件が矢継ぎ早に起こるのは物語の都合なのだろうが、今まで溜っていた膿が噴火するように関係者に襲い掛かるスリリングさは、現実に起こっていると実感し共感できるからかも知れないからだ
個人の力ではどうしようもない“パワー”や時勢に巻き込まれたとき、人間はふとその生きていく本質を知りたいと頭によぎる その答えなど決して得られるものではない筈とは分かっていても”現実逃避“としての哲学だ 『人は何故セックスをするのか・・・』それがリビドーであり、動物としての“繁殖力のある子孫を残す”種の概念に則り行動する事だと言えば、学術的にはそうである であれば容姿や性格、生活力といった選択材料の中でお互いを吟味し、その後も続く子孫繁栄に願いを込める事のみに始終すれば簡単である しかし現実は、情念や快楽という部分が狂わせてしまうことが往々である ましてや上記に掛るように、作中のセリフでも
登場する”インパール作戦“さながらの職場環境に於いては生存競争最中に種を残したいという思いが強く念じられるのだろうか・・・
プロットがそんな人間社会の新陳代謝を描く中でのそれぞれの悪戦苦闘を描いた構成で、スピード感ある仕上がりであり、ミスリードを誘う編集や、ラスト前の奥さん登場のホラー等、エンタメ感も散りばめられていて飽きさせない造りは大変良く出来ていた
“愛の求道者”の如く、主人公の追いかける”答え“は、果たして人生の駆動力に成り続けるだろうか・・・ そんな、人生を過ごす目的の発見、ヒントを得られる作品であった ちなみに”捨てる神(紙)あれば拾う神(紙)”的なしぶとく生きるニッチな知恵も織り込むさりげなさもニクい脚色である それにしても上海出張帰りの役員の男のパワハラ振りは、どの産業でも現実にいるのだろうと或る意味ホラー要素でもある・・・(涙
滅び行く業界、衰退する会社
仕事を切り上げて観に行って良かったぁ。自分の意思とは別にエロ本の編集部で働く、杏花さん演じる主人公がいつの間にか社畜となってしまい、さまざまなトラブルに襲われながらも、逞しくなっていくという映画ですが、予想以上に面白かった。
夢に挫折することは誰にだってあるけど、問題はその後どうやって生きていけばいいのか——。主人公の詩織も望まない職場で働いていくうちに社畜となってしまいますが、同時に肝が据わって、思わぬ絶望のあとでも逞しく生きていく姿が見えます。
コンビニで売られるエロ本は、わずか数年で消滅したわけですが、滅び行く業界、衰退する会社のリアリティがこれでもかと描かれます。そのリアリティに衝撃を受けました。というのも、大学4年の時にわずか数カ月でしたが、エロ本の編集プロダクションでアルバイトで働いていたからです。
映画の職場は、コンビニで売られるエロ本の出版社でしたが、僕が働いていた編プロは、専門書店でしか買えない「18禁」エロ本が中心でした。僕がアルバイトで入った時でも、18禁エロ本は衰退しつつあるといわれていました。
当時は今ほどネットは普及していませんでしたが、それでも18禁エロ本は衰退していると編プロの皆さんが認識していました。アダルトビデオ(AV)の存在です。若い人はAVの方を好んでいて、18禁エロ本をあまり買わなくなっていたからです。
わずか数カ月のアルバイトでしたが、その時の状況と映画で描かれていた状況がそっくりだったので、映画を観ながら「あ〜どこかで実体験したなぁ」と思っていました。
映画で描かれていたことと僕の実体験がそっくりだと思った場面がもう一つあります。映画終盤で男性の老人が小さなコンビニで売られているエロ本を嬉しそうに買っていく場面です。
僕がバイトで働いているときも、読者の方が電話をかけてきて、「このエロ本、いいねぇ。こういうのが読みたかったんだよ」と言ってくれました。アルバイトという立場だったし、仕事として割り振られたことをやるだけだったので、読者という存在に気が付くことがなかったのです。
アルバイトという立場でしたが、自分たちが働いた結果を喜んでくれる読者がいるんだことに初めて気が付きました。映画の終盤で詩織が感じたであろうことと同じことを僕も感じたと思います。えぇ、18禁エロ本ですけど。
でも、僕の個人的な実体験を割り引いても、この映画は良くできた映画だと思います。ブラック企業で社畜にならざるを得なかった詩織が、人生で挫折を味わいながらも、しぶとく逞しく生きていく姿に清々しさを感じられるからです。
全般的に救いのない話(でも、エピソードは笑えます)ですが、この映画の救いは、春日井静奈さん演じる澤井の存在です。澤井の存在が詩織に生きていける自信を与えたと思います。
この映画で意外なオチが、岩井七世さん演じる、向井(ヤマダユウスケさん)の奥さんの存在です。あのストーリーがあることで映画自体がピリッとなりましたし、人間という存在の複雑さを改めて思い出させてくれます。架乃ゆらさん演じるハルの存在も当然大きいですが。
ちなみに、僕がバイトしていた編プロは、18禁エロ本以外の分野にも乗り出して、元気に営業しています。
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