「こじらせ鬱屈男」夜、鳥たちが啼く つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
こじらせ鬱屈男
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序盤は、山田裕貴演じる慎一の鬱屈した姿に「かなりこじらせてんな」と思いながら観ていた。この世の不幸を全て背負っているかのような鬱屈かげんだ。
小説が進まない、売れないという作家としての面を除けば、慎一が鬱屈している要因は慎一次第だ。慎一の心次第でどうとでもなるのだ。
慎一は一人でいたい瞬間があるという。しかしずっと一人でいることが出来ない男。誰かに、自分にとって丁度いい中途半端な距離感でいて欲しいと望む男。
つまり、彼は社会性のないわがままな男。
そんな鬱屈した慎一の前に現れたのが、やはり鬱屈した女裕子だ。
二人の出会いは、いいことなのか悪いことなのか、それすらも分からない。
ただ分かるのは、鬱屈した迷える心同士が何らかの反応をみせたことだけだ。
そこに、過剰な変化や、まして慎一の成長などはない。かすかに晴れ間が差し込んだように見えるだけだ。
ちょっと極端な話をしてしまうと、慎一のことをある程度理解できても共感することができないので、慎一に対して苛つきをおぼえる。
そんなしょうもない男慎一が都合の良い女を見つけただけに思えて、観ているコッチが鬱屈してくる。
自己中心的な慎一の変化は、せめて兆しくらいは欲しかったかな。
内容的に、なんとなくスッキリしないものの、映画としては面白かった。
鬱屈した慎一を演じた山田裕貴は良かったと思う。
城定秀夫監督の作品は、まだ数本しか観たことがないけれど、ジメジメした序盤から徐々に乾いていくような感覚の雰囲気は良かった。
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