劇場公開日 2022年12月9日

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「欠如感を抱えながらも前に進もうとする二人を見守る視線が、優しくも哀しい一作」夜、鳥たちが啼く yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5欠如感を抱えながらも前に進もうとする二人を見守る視線が、優しくも哀しい一作

2022年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

もともと積極的な作品作りが特徴だった城定秀夫監督だけど、『アルプススタンドのはしの方』(2020)以降の公開数は目を見張るものがあります。しかも原作付き、オリジナル問わず、いずれも城定監督ならではの味わいと高い完成度を持ちあわせており、毎作感心させられます(ちょっと気楽に観に行くことがためらわれるレーティングになっていることが多いけど)。

『ビリーバーズ』では、自身の信仰と欲望の狹間に葛藤する二人を、哀愁ともブラックジョークともつかないような語り口で描いていましたが、本作では原作者の佐藤泰志を彷彿とさせる主人公、慎一(山田裕貴)と裕子(松本まりか)の、互いの苦悩が分かるからこその奇妙な距離感を保った関係を、これまたつかず離れずの微妙な距離感で見つめています。ただやはり、慎一が回想場面で見せる懊悩には身を切られるような辛さがあり、その言動は間違いなく非難されて然るべきものなんだけど、その弱さも含めての彼であることを包み隠さず捉える視線には、厳しさとともに一抹の優しさも含まれていましたこの慎一の姿にはどうしても自死した佐藤泰志の姿が被ってしまい、だからこそ、本作の結末には救いと哀愁が分かちがたく結びついていました。

良く分からない状況から始まって、「なんだろう、これは?」と思っているうちにやがて少しずつそのヴェールを払うように意味と繋がりが浮かび上がってくるという、城定監督の鮮やかな描写には、今回も脱帽でした!

yui