夜、鳥たちが啼くのレビュー・感想・評価
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傷ついた者たちの再起の願い
芥川賞、三島由紀夫賞など主要文学賞の候補にたびたび挙がりながら、1990年に自ら死を選んだ作家・佐藤泰志。だが2010年に映画化された「海炭市叙景」以降は文学ファン以外にも広く名が知られるようになり、この「夜、鳥たちが啼く」で原作小説が映画になるのは実に6度目。もっと早く評価されていたら……と惜しまれるが、本作の主人公・慎一も売れない作家であり、これまでの映画化作品の中でもとりわけ原作者の心情が投影されたストーリーと言えそうだ。 原作の短編はあいにく未読だが、「夜、鳥たちが啼く」という題に関して。まず「鳴く」ではなく「啼く」が選ばれている。日本語大辞典の「啼」の項によると、「鳥などが声高く鳴く」のほかに、「涙をながし声を発して泣く」の意味もあるという。もちろん映画の中にも近所の鳥小屋の中で鶏らしき鳥が鳴く描写があるのだが、それぞれの結婚生活が破綻し挫折感を抱える慎一(山田裕貴)と裕子(松本まりか)が心の中で流す涙や声にならない叫びを示唆しているようにも思える。 題に関してもう一点。佐藤泰志は「きみの鳥はうたえる」でビートルズの楽曲『And Your Bird Can Sing』の題を借用しており、作中には主要人物の1人である静雄がこの歌を歌う場面もある。佐藤本人もビートルズ好きだったのではと推測できるし、ひょっとしたら「夜、鳥たちが啼く」の題もビートルズの『Blackbird』の冒頭、「Blackbird singing in the dead of night」への言及ではなかろうか。実質的に作詞作曲したポール・マッカートニーは、1960年代当時の米国の公民権運動をめぐり差別された黒人女性について歌った曲だと説明しているが、詞全体としては、傷ついた存在の再起を願う気持ちが伝わってくる。佐藤泰志もまた、慎一と裕子の、そして自分自身の再起を祈る想いをこのタイトルに託したのではないか。連想が飛躍しすぎかもしれないが、映画にもそれに近いメッセージが込められているように思う。
若いときのダメダメすぎる感情
山田裕貴が本当にダメダメな男で、同棲していた彼女と別れ、
松本まりかが子連れで転がり込んできて。
二人とも若いし。そうなっちゃうのよ。やっぱり。
だけど、二人とも苦い経験があるから。
山田裕貴も心入れ替えて、花火のシーンで美しく小説を書き終える。
男のクズっぷりを描く映画って、どこか自己憐憫を感じる。
男性の心には響くのかなぁ。
うーん
とにかく、慎一のやりたい放題感が凄かった。 あんなふうになりたいとは思わないけど、モテちゃう男はいいね。 そして松本まりか可愛いですな。 まあストーリーも普通に面白かったし、子どもにほっこりするシーンもありました。
相変わらず難しさが残る純文学作品
主人公シンイチは作家 作家仲間たちとの団らんで話される「文学とは?」 そしてこれは、起承転結がはっきりしない純文学という部類の作品。 夜中に鳴く鳥 シンイチはそれを発情期と説明する。 タイトルに使われる漢字は「啼く」 つまり特別なこと、または耳障りの良いことを指す。 このことは表面上のことと実際との乖離があることを示しているようだ。 発情とは男女 それに関連した出来事がこの物語を作っている。 隣の奥さんはシンイチと新しく住み始めた母子が再婚したのだと思い込んでいる。 シンイチは未婚のままアヤと同居していたが、シンイチの嫉妬が原因で別れた。 シンイチの先輩と結婚していた「松本まりか」(名前は出てこない)は、息子アキラがいたが離婚してシンイチの平屋に居候する。 離婚の原因がアヤだった。喫茶店に呼び出された「まりか」は、一切しゃべることなく離婚届に印鑑を押す。 これが基本的な相関図となっている。 アキラは聞き分けがいい。放課後に公園で友達と遊ばないのは、学校でも孤立しているのだろう。ところがある時、シンイチと公園で「だるまさんが転んだ」をすると、みんなそれに参加した。 余りにも楽しかったひと時、歩きながら3人でまただるまさんが転んだを始めた。 そこに飛び込むように現れた逮捕劇。あの野球選手同士のけんか。アキラは大声でだるまさんが転んだというと、一瞬警官と選手が止まる。 それがおかしくてゲラゲラ笑う3人。 さて、 シンイチが主人公ではあるが、名前のない「まりか」こそこの作品の最重要人物なのではないかと思われる。 なぜ彼女だけに名前がないのだろう? 「声聞こえたかな?」という彼女のセリフがあるので、啼く鳥とは彼女自身を指していると思われる。 それは確かに発情的な求めだったが、人が求めるのはそれだけではない。 彼女は言う。「ずるいよね、もう男に振り回されたくない。もうアキラと仲良くしないで。期待させないで」 これと呼応するのが、3人でプレハブで寝た後、アキラがTVを見に家に戻ると、シンイチは強く彼女を求め、彼女は抵抗しつつも抱かれるのだ。 発情する時間帯の相違。男女の相違。求めるものの相違。日常の相違… 花火大会の後、お隣さんが「出ていった旦那が戻ってきた」と声を弾ませる。 アキラが家に入り、シンイチは執筆活動をしにプレハブへと戻る。まりかは、ひとりで「だるまさんが転んだ」と言ったが、シンイチはすでにプレハブの中に入っていた。これは彼女がした「かけ」だったと思われる。 余りにも楽しかった日。 シンイチとアキラの3人でこれからうまくやっていけるのかどうかを「かけ」たのだ。そして「かけ」は失敗を示した。発情の相違もあるだろう。かみ合わない。 しかしプレハブではいつになくシンイチの執筆が回りだす。 同時にさっきの花火の回想シーン 大きな花火が大輪の花を咲かせエンドロールとなる。 これはシンイチにとっては幸先のいい予感だ。 名前のない彼女、彼女だけがまだこの先のことが何も見えてない状態だ。 彼女は夜な夜な発情していた。それは満たされない気持ちの所為。 そしてケージの中の鳥。 不動産屋でもこれといった物件は見つからなかった。シンイチの都合のいい言葉。 何も決められないのは彼女自身だ。彼女はどこにも行けない。 毎晩ケージの中で啼く鳥だ。 彼女はアキラのために「校区」を変えたくないというが、それは自分が動けない口実でしかない。 この作品は、主人公を通して彼のもう一人の隣人である彼女(まりか)という夜啼く鳥を描いている。 実際にはどこへでも行けるのに、理由をつけて行こうとしない鳥の嘆き。 つまらない「かけ」をする女。 しかし、このような視点を作品にするのは恐れ入る。
【”結婚していなくても、家庭内別居。そして・・。”今作は、鬱屈した思いを抱える男女が、女の子供が鎹となり家族のように歩く姿が男女の仄かだが、明るい未来を示しているのではないかと思った作品である。】
■自死した作家、佐藤泰志の小説は何故に多くの監督により映像化されるのであろうか。 それは、今作を観ても明らかであるが、鬱屈、屈託を抱える人間のシビアな環境で生きる姿を描きながら、その人物は最終的には仄かな希望を抱く流れが、映画の王道である”喪失から再生の物語”に当てはまるからではないかと、勝手に思っている。 函館三部作の最終作である「オーバー・フェンス」で、オダギリジョー演じる職業訓練校に通う失業保険で暮らす男が、不思議な女と出会い惹かれつつも踏ん切りがつかない中、訓練校で行われたソフトボールの試合で男がかっ飛ばしたホームラン。あれは、男の再生していくだろう未来を暗喩したシーンであった。 今作で言えば、山田裕貴演じる売れない私小説家が恋人に逃げられながらも、松本まりか演じる先輩の元妻に惹かれ、自宅に招き自分は離れに住み執筆する姿から、女の連れ子を鎹にし、その距離感を縮めていく姿であろう。 <今作は、再後半、心に鬱屈、屈託を抱える男女が、女の連れ子を鎹にして距離を縮めてまるで連れ子を真ん中にして、家族のように歩く姿が男女の仄かだが、明るい未来を示しているのではないかと思った作品である。>
こじらせ鬱屈男
序盤は、山田裕貴演じる慎一の鬱屈した姿に「かなりこじらせてんな」と思いながら観ていた。この世の不幸を全て背負っているかのような鬱屈かげんだ。
小説が進まない、売れないという作家としての面を除けば、慎一が鬱屈している要因は慎一次第だ。慎一の心次第でどうとでもなるのだ。
慎一は一人でいたい瞬間があるという。しかしずっと一人でいることが出来ない男。誰かに、自分にとって丁度いい中途半端な距離感でいて欲しいと望む男。
つまり、彼は社会性のないわがままな男。
そんな鬱屈した慎一の前に現れたのが、やはり鬱屈した女裕子だ。
二人の出会いは、いいことなのか悪いことなのか、それすらも分からない。
ただ分かるのは、鬱屈した迷える心同士が何らかの反応をみせたことだけだ。
そこに、過剰な変化や、まして慎一の成長などはない。かすかに晴れ間が差し込んだように見えるだけだ。
ちょっと極端な話をしてしまうと、慎一のことをある程度理解できても共感することができないので、慎一に対して苛つきをおぼえる。
そんなしょうもない男慎一が都合の良い女を見つけただけに思えて、観ているコッチが鬱屈してくる。
自己中心的な慎一の変化は、せめて兆しくらいは欲しかったかな。
内容的に、なんとなくスッキリしないものの、映画としては面白かった。
鬱屈した慎一を演じた山田裕貴は良かったと思う。
城定秀夫監督の作品は、まだ数本しか観たことがないけれど、ジメジメした序盤から徐々に乾いていくような感覚の雰囲気は良かった。
ハッピーエンドでよかった!
他の佐藤泰志原作は、皆エンディングが、?、が多いのですが、これはハッピーエンドで一安心。 それにしても佐藤泰志映画の主人公は、皆大酒飲みなのにスリムでヘンだね!
特に何も起こらない
鬱屈とした主人公たちの淡々とした日常とでも言うのか?松本まりかは幸薄そうな上に、結構濃厚な濡れ場があったりするので、日活ロマンポルノちっくと言えるのかも。
タイトルの意味はよくわからない。劇中で近所の鳥が鳴いてたがそれだけってことは無いと思うが。。。
R-15‼️
同棲相手と別れたばかりの売れない作家の元へ転がり込んだ、友人の元妻とその息子。二人に母屋を提供し、自分はプレハブで暮らす作家だったが・・・。3人の奇妙な共同生活とその関係の変化を淡々とスケッチ風に描いております‼️映画は同棲相手と別れることになったいきさつを、フラッシュバックとして所々挿入してあるのですが、これが映画的に分かりにくく、たまに現在なのか過去なのかイマイチはっきりしない感じになる。元妻が夫と別れる理由が、夫の浮気相手が作家の同棲相手というのはちょっと衝撃でしたし、元妻が夜中に欲望を持て余して、男漁りに出かけることがタイトルに引っ掛けられていたり、それ以外は特に事件らしい事件もなく、これから3人は新たな家族となるんだろうなぁとほのぼのと思わせてくれる、良い映画かな・・・。
アキラ可愛い❣️
10代で、小説の新人賞を取った慎一だが、第二作が続かず焦りの日々を過ごしていた。同棲している恋人の文子の浮気を疑ってキツくあたる毎日だった。
勤めるバーの先輩同僚と仲が良く家にも訪問し、妻の裕子とも顔見知りになっていた。
話は、慎一の住む住居に裕子とアキラが越して来た事から始まる。
慎一は、いわば賃貸の住居を二人に明け渡し、
自分は、隣にある仕事部屋にしているプレハブに移り住むことにしたのである。
そして、奇妙な同居生活が始まる。
慎一と文子の二人暮らしは、どうやら回想のようで、この時は、一人だった。
また、裕子も夫とどうなったのだろうかと、疑問が湧く。
慎一は、自身の住居なので風呂と冷蔵庫は使う約束と言う。どんないきさつで裕子たちが転がり込んで来たかはわからない。
慎一が夜遅く仕事をしていると、裕子が男の車に送られて帰って来る。少々酔いも回っているようだ。昼間とは正反対の印象の裕子。派手に見え、アキラのような子供がいるように見えない。こんな時間、アキラが起きて裕子を探していることもあった。
裕子が夫と別居したのは、夫に愛人ができ、それも夫の職場の後輩の慎一の同棲相手文子。
呼び出されて喫茶店で離婚届に印を押す。
慎一と裕子、二人で酒を酌み交わし親しくなって行き‥‥。
慎一を山田裕貴、裕子を松本まりかが演じている。山田裕貴、イケメンを隠してオタクっぽい。
男女のことそれぞれだけど、この二人相性良さそう、
アキラくんも幸せ❣️
特に大きな事件はなく、淡々とした展開ではあるが、何とも生々しい人間...
特に大きな事件はなく、淡々とした展開ではあるが、何とも生々しい人間関係が描かれている。 まあ、悪い話ではない。 主人公の男、十代で賞をとった小説家でありながら、コピー機のメンテナンスの仕事をしたり、ライブハウスの音響係をしたりとなかなか多彩。
人間の内側に潜む仄暗さ。存在意義を問う者達の心の傷。
俳優陣のお芝居こそ素晴らしいものの、この作品を映画館で観ていたらきっと途中退席してしまっていただろうなと思いました。終始ただ仄暗さと人間の阿呆みたいに駄目な部分が描かれています。 物凄く簡潔にまとめると傷の舐め合いといったところでしょうか。 物語が半分以上にいくまで何を伝えたいんだろう感が強く、ただただ身も心もやつれ切った人間同士の抑揚のない日常を覗き見している気持ちでした。 中盤でやっと内容を理解できる要素があり「あーそういうことね」となってその後特に思いがけないオチはありません。そうなるよね、と大体予想がつく感じです。 物語こそ退屈でしたが、山田裕貴さん、松本まりかさんのお芝居が繊細で素晴らしく、扇情的なお芝居もこの仄暗さのおかげかいやらしくなく良かったと思います。
自分勝手もたまには良い
時折誰かの目線で彼等を見ているようなカメラモーション、売れない小説家が書いた物語の世界に入っていったかのような作りでした。 今や売れっ子の山田裕貴くんと松本まりかさんの濡れ場シーンは新鮮で極々良かったと思う、子供のアキラの目の前では別人に演じてるのも演者としてリアルだなと。
キズの舐め合い映画。 ダメな小説家の演技が良かったですね。 ダメっ...
キズの舐め合い映画。 ダメな小説家の演技が良かったですね。 ダメっぷりが見ていてギリギリストレスが溜まるラインで、それをエロスや絆されていく描写に転換していたので上手いと思いました。 ただちょっと女性側が綺麗すぎていたので、育児疲れや依存が見れたらより良かったなぁと
煮詰まる
エロさは勿論、恐らくそこに、エモという要素を持ってきていたのであろうことは見ていてわかった。個々の葛藤を啼くと表現し、劇中の気怠さを一言で表し、その気怠さがまた、登場人物の心情でもあるのだろうと感じる。終わり方もまた、ハッピーエンドにもバッドエンドにも繋がるような、その後を仄かに考えさせられる、少々頼らない終わり方であったが、この映画の終わり方としてはとてもよかったと思う。
原作者が暗すぎて嫌いなんだけど、山田くんは全然暗くないので、頑張っ...
原作者が暗すぎて嫌いなんだけど、山田くんは全然暗くないので、頑張ってるし、暴力性はいいけど、作品としてだめかも。 と思ったら、後半の力強さ、明るさがよかった。山田君の力はここだ。 セックスシーンもよかった。まりかちゃんも。
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