「「モノノ怪」は成立させることが難しい」劇場版モノノ怪 唐傘 KNG-UDNKさんの映画レビュー(感想・評価)
「モノノ怪」は成立させることが難しい
この作品だけでなく「モノノ怪」シリーズ全般に言えるのだけど、形と真と理をスッと観客に腹落ちさせる作品にするのが、とても難しいのだと思う。シリーズ全般を通して、それがきちんとうまくいっているのは、最初の「化猫」だけだと個人的には思っている。
シリーズ第二弾の「モノノ怪」の4作品は、うーん、微妙、という印象。わかるんだけどいまいちすっきりしない、というか、形と真と理がかっちりとかみ合った、という印象がいまいち感じられない作品だった。
そういう意味では、今回の映画も「いまいちなぁ……」というところが拭いきれない作品だ。
観てからしばらく経っているので、細かいところは覚えていないのだけど、今回の作品も、形と真はともかく、理がすっきりと腹落ちしない印象だ。
もう一度BDでじっくり見直したいところだけど。
主人公の「薬売り」の声優が神谷浩史に変わったけど、印象は事前の予想通りというか、この人が演じたらこういうやり方になるんだろう、という印象そのままだった。それが悪いわけではなく、櫻井孝宏の「薬売り」を踏まえたらこうなるよな、というところを、とても自然に、違和感なく演技されていた、という意味だ。違和感を感じない、というところのプロの声優さんのすごさを感じる。
ただなあ、敢えて変える必要はなかったんじゃないかなと思う。こういうところは、本当に日本という国は、一度こけた人間を徹底的に立ち直らせない、巻き返すチャンスをことごとく与えない、という意味で、冷酷な国だと思う。この点だけは。マーケティング敵は判断なのかもしれないけど、そんなものが影響するほどメジャーな話ではないし、この作品が好きな人はそれでも観ると思うし、そうじゃない人はそもそも誰がやってるかを気にする以前に観ないと思う。
この作品は、声優さんの存在が大きい作品だと勝手に感じている。もちろん映画全体を成立させるその他様々な裏方がいないと映画にはならないのはわかっているのだが、とにもかくにもアサとカメの存在感の大きさが素晴らしかったなと感じるのである。もちろんそれ以外の役者さんも、ゆかなの麦谷とか花澤香菜の北川とか、皆さん実力を遺憾なく発揮されていて、だからこそ映画としてみるべきものになっている、と感じている。
それと、TVアニメと映画とで異なるところがひとつある。TVアニメの方はキャラクターをわざと整っていない、ギャグ調のデザインにしていたように思うが、今回の映画はキャラクターの顔がみな割と整っている。大奥が舞台なので特に女性キャラは綺麗に、という、事なのかもしれないけど。
映画としては3部作になるようだが、恐らくそれぞれの作品間につながりはないのだろう。この作品は形と真と理が腹落ちするととてもいい作品になると思うので、次もそれを期待してみてみたい。