「映像は美麗ですが内容はTV版と比べてしまうと物足りなさが」劇場版モノノ怪 唐傘 ねこきちさんの映画レビュー(感想・評価)
映像は美麗ですが内容はTV版と比べてしまうと物足りなさが
かなり前にテレビで放映していたオムニバス形式のアニメの劇場版です。
モノノ怪という作品のストーリーそのものは比較的シンプルです。江戸時代が舞台で、「モノノ怪」と呼ばれる妖怪や怨霊、妄執等が合体したような存在を「薬売り」という派手な化粧の男性が退魔の剣を用いて退治する、その際「真(まこと)と理(ことわり)」、つまり本来の姿やそうなったいきさつを知ることが必要なので、視聴者にもやや断片的ながら真実が明かされます。
サイケデリックなまでにカラフルで大胆で美麗な画面もさることながら、この「ことわり」がどれもずっしりと重厚で魅力的で、そりゃ未練も残るし化けても出るわという説得力もあり、見終えた後もしばらく人の業の深さややるせなさに思いを馳せたりと、ずしんと後に残るのです。ひょんなことで見た一話からサブスクで全部観てしまうくらいにハマりました。
ただ本作はTV版と比較すると、そのストーリー部分に物足りなさが。
悪くはないんだけど、特に作中でも「色々な情念の渦巻く大奥」と強調していたのも相まって、どうしても前ほど心に迫ってこない。
またTV版のシナリオは取捨選択がしっかりしていて、登場人物も話の枝葉も最低限にトリミングされ、描写は不足気味でも正確さとコンパクトさのおかげで語られずともおおむね察せられたのですが、そこが今回は甘かったです。
正確性でいうと、個人的にはある人物が途中筆を投げ出す描写をわざわざ挟んでおきつつもそこと真実をずらしたり、別のある人物については末路を察して悲鳴が…的なシーンがあるも、描かれてるのも叫ぶのもサブキャラの上にどうも劇中描写からはズレてる気がしたりと、色々モヤモヤ感が。
また、TV版より増えた尺をそのまま登場人物の追加や枝葉にあたるエピソードを増やす方向にあててしまった印象で、メインストーリーが相対的にぼやけてしまってました。
次回作もあるのと事で、もしかしたら今後も見越しての采配かもしれませんが、TV版が本当に良かった分、やっぱりシンプルにこの話としてまとめて欲しかった気持ちはあります。
スルメ大王さん
コメントありがとうございます!
本当にTV版知ってたからこそつい辛口になっちゃったところはあると思うんですよね。初見で観てたらもっと素直に感動してたはず。
映画きっかけにもっとモノノ怪ファン増えてくれたら嬉しいですね!