「綾野剛さんのちゃらんぽらんなヤクザぶりが秀逸」カラオケ行こ! sayさんの映画レビュー(感想・評価)
綾野剛さんのちゃらんぽらんなヤクザぶりが秀逸
原作は未読。
雨のシーンから始まるのが惹きつけられる。
普通びしょ濡れの男の人が向かいから
あんな様相でやってきたら後ずさるより
横に避けてダッシュで逃げそうなものだが。
突然のタイトル回収も、本当に行ってしまう展開にもびっくり。
合唱コンクール用の歌の巧さと
カラオケの歌の巧さはまた別だと思うが、
滅茶苦茶さが面白い。
現実だったら怖過ぎるが、
綾野さんの演じる成田は絶妙にウザくて
憎めなくて好きになってしまうし
ついつい引っ張られて流されてしまう聡実の気持ちも分かる。
真剣に部活をやっているのに
産休で先生がいなくなって絶妙に空気が読めない人と
部活を続けていかないといけないのは
先生も生徒も悪くないのだがキツイと和田くんに
最初は同情的に見ていたのが、
みんなの前で部長に絡むのは無い。
副部長がすぐ割って入るし、和田本人のフォローもして
しっかりした人だなと思う。
和田くんは同じ男なのに何故変声期に思い至らないのだろう。
その辺りが解決してからでないと、
補欠でソロを練習させられるのは厳しいのでは。
結局和解できたのだろうか。
先輩に失礼なことを言ったことや
幽霊でも部員なら映画視聴も部活動だろうに、
ノックもせずよそ様の部室に入って
ビデオデッキを壊したことはきちんと謝ったのか気になってしまう。
再生一方通行で巻き戻せない古い映画のビデオというのが
ちょっと物悲しくて良かった。
なら大事に見ようと余計に思うだろう。
成田でだいぶ慣れたつもりでも、
流石に大人数で本職に揃われたら怖過ぎる。
お店もよく入れてくれたし
現実だったら学生ひとりそこに入るのは
流石に止めてあげて欲しいところ。
それにしても最下位を回避したいのに、
他のみんなも”先生”に引き合わせてあげる成田が
ちょっと優しい。
流石に怖い思いをさせたと思って
解放してくれるのかと思いきやLINEをしてくるのが笑えた。
聡実が成田だけならとカラオケに自分から誘うのが良いし
仲良くなっていく様子は微笑ましい。
綺麗なものだけが良いものではないというのは
なにげに名言である。
成田はちょっと駄目っぽくてもちゃんと大人で、
謝ることもできるし引くこともできるのが良い。
お互い決戦の日、といって別々の目的に向かって
それぞれ頑張るのもなんだか良いと思ったのだが、
最後の大会に出ないのはちょっとどうなのだろう。
貸切のお店に入れてしまうことや
ヤクザに啖呵を切って紅まで歌ってしまう展開は
かなりぶっ飛んでいるものの、
聡実がソプラノであること、
これまでカラオケで歌わなかったことや
声変わりで声が出にくいこと、
成田と二人で歌詞を訳してみたことが
ちゃんと生きているのが良いし、
完璧に旨い訳ではないが中学生だしこの状況で
勢いに任せての歌い方だと思えばとてもリアル。
組長が泣いているのも笑える。
聡実の勘違いなのかと思ったら組長はわざとだったとは酷い。
カラオケ大会が終わったら連絡が取れなくなった
と言っていたし、
中学生の身でヤクザと仲良しというのも色々問題で、
その辺りの引き際は成田も心得ていたかと思っていたので
最後に久し振りと言いつつ連絡を取りカラオケ行こ
と誘うのは蛇足のように思ってしまった。
腕の刺青は、あんなキツイ先生嫌やなどと
組長たちの前で言った結果いつかの大会で最下位になって
彫られたということなのだろうか。
どこまで原作通りなのか気になった。