「僕にとっては逃げ恥SPの野木脚本」カラオケ行こ! わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
僕にとっては逃げ恥SPの野木脚本
青春映画として面白かったとは思うが、青春映画としての着地はこれで良いのかと思ってしまう。物語より語りたいことが前傾化した、逃げ恥SPを思い出す野木脚本だったけど、それを許せるカットがあるのも野木脚本で。十分楽しみました。
漫画内世界では恐らく違和感なく見れるところが、アニメじゃなく実写だとどうしてもブレてしまうところは気になったかな。最初にヤクザとカラオケに行く動機とか、学校の前に張ってるヤクザとか、当たり前のように車に乗っているところとか…ヤクザに囲まれてカラオケのダメ出しをしているシーンでは辛辣なダメ出しというより悪口まで言ってしまってるのに、ちゃんとドヤされたら怖がるという耐性のリアリティとか。
あと、合唱部のシーンは最終的に何も解決してないように思う。せめて合唱祭前に『部長としての伝達』が合ったほうが好みかなと。ソプラノは任せた、俺は綺麗が綺麗じゃないかの戦いからは降りたけど、かすれ声になっても自分の歌いたい音域で歌うという決着があればなあと。卒業式でなんで泣いてるのか分からない。憎しみの対象だったよ数分前まで…
ビデオテープやら街の開発やらスナック文化やら、何よりヤクザの立ち位置やら、『なくなっていくもの』を描きたい脚本家の意図はよく分かる。だからこそ変声期とか青春とか一瞬でなくなってしまうわけだから、合唱部でクソ真面目なあの子も歌わない選択をした実質主人公も、どちらの青春も尊重されるような描き方ができたはず。
本当のラストも結局ヤクザの世界を肯定してるわけではないんだろうけど、うん。エンドロール明けにこれはいらなかったかも。
とはいえ、鑑賞後感が良いのは、ラストの紅に尽きる。この演者のこの時期でしか取れない、想いを込めて擦れ声でも叫び続ける、慰めるやつもいない熱唱に心打たれた。
紅のイントロがフリになる連発シーンは面白すぎて笑ってしまった。綾野剛の歌唱力すごいし、人たらし感を見事に表していたと思う。