「ホラー映画の更新」ザ・ミソジニー raikaさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラー映画の更新
観やすい映画ではない。
観客に思考を促し、想像の果てにこわいものを描き出す手法は『霊的ボリシェヴィキ』を経て進化し続けており、だからわかりやすくこわいシーンが出てくることはあまりないし、怖いビジュアルや動きの幽霊が出てくることもほぼない。
低予算ゆえ荒っぽい合成もあるし、筋立ても後半からかなりカオスになっていき振り落とされる観客も大勢いるだろう。
でも、既存の手法を最大限に上手く使いこなすジェームズ・ワンやスコット・デリクソン、マイク・フラナガンといった監督たちの素晴らしく面白いホラー映画であっても、たどり着けないような境地に今作は至っている。
それは、エンターテインメントとして消費できるかどうかわからないレベルで「本当にこわいもの」を映画で描き出すための壮大な実験の連続であり、今作はこれまでの高橋洋監督作品でもっともそれに接近している作品である。
齢60を超えてなお、ホラー表現のアップデートと娯楽性を探求し続ける姿に感銘を受けるか、低予算のわかりづらい映画として切り捨てるか、どちらでも良いが、私は前者であった。
観客の想像力を信頼する作り手の映画であるから、シネコンでかかる映画より少しだけ前のめりに観て頂きたい思いはある。
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