窓辺にてのレビュー・感想・評価
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タバコは1本、コーヒーは何杯目?
二つの見破られた不倫のゆくえ
2022年。今泉力哉監督。かつて将来を嘱望された小説家でありながら長年フリーライターをしている男は編集者の妻と二人暮らしだが、ある悩みを抱えている。新進の女子高生作家と出会い、人間関係の繊細な部分について彼女と通じ合っていくなかで、その悩み(妻の不倫とそれを知りつつなんらショックを受けない自分自身)を周囲に打ち明けていくが、という話。
主人公の友人の男(なんらかのスポーツのプロ選手らしい)も不倫をしていて、こちらも妻に見破られている(しかしこちらは妻はショックを受けていて元に戻りたがっている)。同じような二組の夫婦を並べることで、比較を可能とし、主人公の抱える問題がより鮮明に浮かぶ上がるようになっている。浮気をしている相手に怒りがわかないのは愛がない証拠なのか。愛していることと浮気を許せないこととは別のことではないのか。
密室でかわす二人の人物の対話がいずれもおもしろいので、ずっと見ていられる、そういう映画。
脚本とキャスティングが絶妙!
正直って他人を傷つける刃なのかしら
一人一人を丁寧に描く
今泉力哉作品を観るのは「猫は逃げた」に続いて二本目。人と人の関係にとことんこだわった会話劇をベースに、柔らかな光線、控えめな音楽といった自己のスタイルが確立されていることがよくわかる。
シリアスでありながら、ユーモアを感じさせるセリフのやり取り、気まずい間、テキストのモノローグと、濱口竜介の「偶然と想像」を思わせる味わい。淡々とした展開ながら、2時間20分の長尺を飽きずに観ることができた。
役者陣では、稲垣吾郎の、決して冷たいわけでなく、飄々として懐の深いたたずまいが活きている。驚いたのは、若葉竜也。大まじめにダメ男を演じて、あんなにハマるとは。主要キャストだけでなく、タクシー運転手、パチンコ客まで、登場人物一人一人を丁寧に描いていることに、好感を持てた。
ケチを付ければ、稲垣吾郎から妻の浮気を相談された志田未来が、当の二人に夫の浮気を相談するところは、さすがにあり得ない感じがした。あと、ラストの小説家の原稿は誰が出版したのだろうか…
ともかく、今泉監督に力量があることはわかった。過去作も観たいし、これからの作品も大いに期待したい。
時間がゆっくりと流れていく!
前から気にはなっていたので、東宝会員ポイントで鑑賞しようと思ったら、ポイント鑑賞対象外でした。
せっかく、来たので正規料金で鑑賞しました。
143分の上映時間は長いかな〜と思いましたが、盛り上がるシーンもなかった割には、そんなに長くは感じませんでした。
ドライブマイカーといい、この手の映画はあまり好まないのですが、妻の不倫と言う部分では、自分に置き換えてストーリーにいつのまにか吸い込まれてました。
たぶん、私も腹が立たないかもって・・
主人公の市川氏は、稲垣吾郎さんにぴったりの役柄でした。
奥さん役の中村ゆりさんも、40歳とは思えないぐらい綺麗だし。ドラマ「クロサギ」でも気になってました。
とりあえず、時間に余裕がある方で年配の方にはオススメかなと思います。
ラストのパフェ一つの意味
心の多様性映画
上映時間は鑑賞後に知ったのだが、あっという間の143分でした。(もっと浸っていたいという鑑賞後感)
今泉力哉監督って調べたら今年41歳でしたが、作風的にもはや巨匠の手触りの様な肌感がありました。そういう意味で私の中では濱口竜介監督に近い存在かも知れません。
監督の作品自体はそれほど多く観ている訳でもないし、観た作品全てが好きな訳でもないのですが、その作家性には惹かれますし、本作に於いては大いにシンパシーを感じました。
本作があっという間に感じられたのは、恐らく醸し出す空気感が私にとって非常に心地よかったからでしょうね。
で、何が心地よかったのか?を見つけることによって今泉力哉監督の謎を解くことが出来るような気がして、結論から言うと、私が一番心地よかった部分は“決めつけへの密やかな反抗”の様な気がします。
今や、家庭内で、教育現場で、会社内で、各メディアで、SNSで、各々が各々の“常識”をひけらかしている時代であり、それらの“常識”は本来答えのないモノである筈なのに、凄まじく各々の“常識”を押しつけてくる時代になっている様に感じられます。
特にネットが進化した今、更にその押しつけ度合いが増し、最近では“マウントする”という言葉まで流行り、ただの個人のつぶやきや日記に対してまで反論や押しつけがましい意見や誹謗中傷まで書き込まれる時代になってしまい、人々は常に他者に対して自分の常識を押しつけたい生き物なのか?と思ってしまうほどです。
冒頭の、久保留亜の授賞式の記者の陳腐な内容の質疑応答シーンで、上記した“今”を簡単にまとめ表現していました。そこで、主人公の市川茂巳と留亜の共感が生まれたのと同じく、私も主人公に珍しく感情移入してしまったキャラでした。
“好き”の形って人によって違うんだよ、喫茶店のパフェのように。
恐らくこの作品、好きな人と嫌いな人、分かる人と分からない人、両極端に分かれる様な気がします。(その比率は今の社会なら2:8位と個人予想)
上記したよう社会の中で、元々答えなんかないモノに対してあまりにも他人とは違う感覚に悩み、答えを探す様を理解できる(嘘の常識を押しつけられる)人と、理解できない(自分の常識を押し付ける)人に別れるのと同じように…(しかし、この私の意見自体が人によっては私個人の“常識”の押しつけと捉える人もいるかも知れませんが…)
答えのない、結末のない映画があっても良いじゃないか!! 喫茶店のパフェみたいに“完璧”なんて人によって違うんだよ。
追記.
最近の日本映画(特に娯楽映画)の特徴としてやたら叫ぶ演出が多いのだけど、対極の作風として今泉力哉監督や濱口竜介監督がいるような気がする。私は叫ぶ映画が苦手なのでこの二人の監督の作風に惹かれているのかな。
今泉力哉監督による傑作!
ユナイテッドシネマ浦和にて鑑賞。
いやぁ~、滅法面白い映画だった‼️
今泉力哉監督&オリジナル脚本で綴られた物語、序盤では「なんか淡々と進んでいくのかなぁ…」などと思っていたら、実に自然な演技(をしているのか演技していないのか微妙な感じ)で至福の時間であり、こういう幸福感を味わいたいから映画館に行くのだ……の典型的映画。
フルーツパフェが食べたくなる映画だが、あまりデカいパフェは食べられないかも…(笑)
本作は、基本的には「大人のラブストーリー」で、フリーライターの市川茂己(稲垣吾郎)の妻(中村ゆり)が浮気しているのを知っているのだが、浮気を知った時に「浮気へのショックや怒りなどを感じなかったのがショック」という変わった感覚に悩んでいた。
……自分が鑑賞前に事前に知っていたのは、ここまで。
出演者に玉城ティナがいるのは知っていたが、17歳で小説を書いて(茂己が冒頭読んでいる小説)『ラ・フランス』なる作品でなんらかの受賞をする会見場面は、なかなか「若いがキレ者」のような質疑応答をする上手さ。
玉城ティナは、やはり今年公開の『グッバイ・クルエル・ワールド』(大森立嗣監督)でのインパクトある存在感も見事だったが、本作ではアレとは違った「マイペースで、笑っちゃうような可愛さ」を見せてくれる。若手女優なので今後に期待。
また、中村ゆりも相変わらず綺麗だが、『黄金を抱いて翔べ』(井筒監督)など多くの映画でも幸薄い女性を演じてきたが、本作でも薄幸な感……(^^;
「長回しシーン」の多用も素晴らしいが「(小津監督のような)切り返しシーン」もある。
また、面白い物語にもかかわらず出演者が淡々と演じているあたりの演出も、今泉力哉監督の手腕が見事!
今泉監督は、本作を撮るにあたって「撮影現場では出演者に『面白いと思わないでください』と指示していた」とのこと。…こういう演技も難しいのでは?
パチンコ、ラブホテル、「トランプ持って来たので大丈夫です」(玉城ティナ)など楽しくて、2組の不倫が描かれてもドロドロしないあたりも上手い。
やはり玉城ティナが言う「別れ話の時に、ヨネズの「♪レモン」(という曲?)が繰り返し流れていて…」というのは、歌詞が別れ話の歌詞なのかは知らないが、なんだか凄いシチュエーションらしい…。でも、聴いたことない歌手の話なので理解不能…(^^;
これは本当に見逃すべからず映画だが、公開1週間ぐらいで観たものの、一昨日公開された『すずめの戸締り』にスクリーン占領されたことから、すでに上映回数が減っているのは実に勿体ない傑作!
満点!
<映倫No.123456>
余韻は楽しめるが・・・
おしゃれで静かなライティングの空間
今泉力哉監督のオリジナル脚本だけに期待感あったので、観た。
小説家、フリーライターといった類の職業人が主人公、その周辺にいるので、今泉監督の間の効いた意味深のセリフのやりとりには親和性があるだろうなと思った。
喫茶店、家の中、とてもおしゃれなライティングで静かな空間でやりとりされる会話の妙と間は、共感や、それはどんな意味なんだろうと考えてしまうところがあって、映画を観てよかったと思える感覚になる。
物語は、2組の夫婦、未成年のアベックをからめて、不倫やすれ違いや、共感を織り交ぜた群像劇のような感じで、これも今泉監督ならではの空気感でふんわり包まれていて、なごむ。
ちなみに、シーンに出てくる喫茶店がいずれもとても静かでおしゃれなので、ああいった感じの喫茶店開拓してみたいと思った。また、家の中も落ち着いたライティングが効いていて、あんな空間のあるリビングもいいなと思った。
微温的な典型的日本映画
よっ❗️愛染屋〜‼️
よっ!成田屋〜
歌舞伎の世界で、褒め称える時に発する掛け声がありますよね(実は私自身はまだ歌舞伎を観たことがないので、耳学問的な知識なのですが😅)。
成田屋は、市川團十郎家の屋号で、他には音羽屋(尾上家)、高麗屋(松本家)などがあるそうです。
さて、今泉力哉監督です。
その会話劇は、毎回のように唸らされます。
ウイットと絶妙な〝間〟で想像力を刺激し余韻を残す。ベテラン、若手を問わず、出てくる女優さんすべてに感情移入させられるうえに、ビジュアル以上に魅力的な女性に描いてみせる巧みな場面設定と演出。
作風は違うかもしれませんが、女優さんを際立たせる凄技としてはウッディ・アレンに引けを取りません。
これを名人芸と言わずして、なんと表したらいいのでしょう。
よっ!◯◯屋〜‼️と叫びたくなります。
千葉県に縁結び大社として(そこそこ)有名な愛染神社というのがあります。
円満な離婚も次の縁に繋がるということでは縁結びの一種ということに〝勝手に〟解釈😁
今泉力哉監督の映画を見ると、いつも心が優しい愛に染まりませんか。
というわけで、(心の中で)私は叫びます‼️
よっ❗️愛染屋〜‼️
【恋愛箴言集?】
のようでもありましたが、相手を理解することについての稲垣吾郎さんとティナさんの会話も、深くて唸るばかりでした。
今泉監督の世界とは
すべての登場人物に違いがあっても否定はしない。今泉監督の世界は本当にあたたかい。
お互いが相手を思いやるがゆえの言葉と行動であるが、相手に感じられないがために、上手くいかない。感情なんて大小あるものだけれど、認めないと大きな声で言われることによる居心地の悪さ。大概が曖昧にしたり、蓋をしてやり過ごしてしまうかもしれない小さな感情も相手を思いやるがゆえの悩みとなる。だけれど、どんなに不器用だと周りに思われても正直に生きることって素敵だなと感じる。
人間関係の距離感ってそれぞれで正解なんてない。ぶつかり合ってわかることもあれば、離れてわかることもある。手放すことをプラスに捉えることは可能なのだ。ラストシーンの主人公の表情から、あたたかな気持ちに包まれた。心地よい余韻に浸り、またその世界にいきたくなる。何度も観てしまう映画となるだろう。
すごく良かった!
ゆったりとした時間の使い方、映像、特に光の美しさ、主張しないBGM...
ゆったりとした時間の使い方、映像、特に光の美しさ、主張しないBGM、これこそ贅沢と感じる。小説の一節が朗読されるのもあってか文学的。心地良い読後感のような後味は自分が肯定されたかのように感じたからというのもあるかもしれない。理解してくれたらまあ嬉しいけど理解されたいわけでもないという面倒くささをも肯定された感じというか。
茂巳は十分優しく愛情深い人間だと思った、その後の決断も含めて。ただ自分が与えられる愛情と相手が求める愛情が違えば上手く行かないのは仕方ないのかもしれない。彼女(妻)のために何ができるか考えた結果があれなら茂巳は究極に優しい。でも世間一般の考えから外れるとそう捉えられず何なら変人扱い。でも他人に理解されないこともそういう扱いにもさしてショックを受けたようには見えないどころかある種達観してるようで好きだ。完璧という名のパフェを食べながら完璧ではない自分を面白がってもいるような。
どこか不器用でふんわりと優しくて紳士で誠実な茂巳は稲垣吾郎そのままで作品世界に存在しているかの溶け込み様。でも手放すこと、手放したから手に入れたものを考えると、そこに稲垣吾郎自身の人生が透けて見えて違う重さを持つ。玉城ティナの女子高生としての可愛らしさと文学賞受賞作家の大人びた側面の演技が良かった。
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