キングメーカー 大統領を作った男のレビュー・感想・評価
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韓国は日本の隣国、そして日本が今接している問題にも触れられている良作。
今年237本目(合計513本目/今月(2022年8月度)13本目)。
もともとストーリーは「実話を参考にしたフィクションものです」とはされます。そのため、具体的な言及がかなり伏せられているほうです(が、当然、韓国の実話を参考にして固有名詞だけ変えてあるというよくある手法)。
日韓では選挙のやり方などは似た部分(公職選挙法が適用されるなど)もあれば、日本には大統領制度というものがないなど、違う部分もあります。ただしそれは制度上の問題であり、選挙そのものを描く映画という観点では隣国の日本からではかなり知識を類推して見やすい映画です(まぁ、放映されている映画館が少ないけど…)。
韓国はこの映画で触れられているように(固有名詞を出すのが問題なのか徹底的に出ないが、当時の写真・動画と思われるものは出る、という妙なバランス…)、日本とはやや異なる「戦後の歴史」を歩みました。日本では確かに首相の交代は何度かありましたが、どれも平和的に行われており(戦後の混乱期など特異なものは除く)、一方で韓国は、朝鮮戦争を経た経緯、さらに済州事件(や、順天・麗水事件など)の経験があるため、選挙に関しては個人(ここでは、個々の投票資格のある人)の考え方まででます(日本は概して、それでもやはり、投票率の低さに代表されるように興味関心のある方がどうしても少ないのが実情)。また、韓国には「○○道」という地方自治法(に相当するもの)が定める「一般の市の寄せ集め」という概念が存在しますが(日本であえていえば、「近畿地方」「中国地方」といったものが該当するが、法として定まってはいない)、韓国では明確に存在するため、映画内で触れられている通り「ここの道は捨てて、こっちに賭ける」といった考え方も、(現在まで)あります。
惜しむべきはこの映画、韓国の近代史のかなりの知識を要求してくる映画で、この知識が3割もないと、「史実に基づくフィクションです」の扱いのため、何がなんだか調べようもなくなり(もっとも、戦後(ここでは、便宜上、日本の戦後)の韓国の大統領も何百人もいるわけではない)、理解のハマリが生じる点、換言すれば、この映画は韓国の高校などの「韓国史」(日本でいえば、「日本史」に相当する)などで扱うレベルの高度な地理や近代韓国の知識を要求されますが(固有名詞にあたる地名などはマイナーなものまでどんどん出ます)、それらの説明がないため、かなりの総力戦になってしまいます。
韓国映画でいえば、去年(2021)の「チャサンオボ」クラスの難易度を想定されるとわかりやすいかなというところです。
採点に関しては特に減点対象はないのでフルスコアにしています。
なお、日本と韓国が歩んだ歴史、この映画内で触れられている「ある事項」(下記に書いておきます。参考までに)は、日本でもリアルで現在でも議論が盛んで、この点は下記に書いておきます。
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▼ (参考/憲法と憲法改正のお話)
・ 憲法はおよそどの国でも持っていて、憲法が最高法規という国が普通です。このとき、憲法よりも下位の法(通常は、法律)によって憲法改正が可能な憲法を「軟性憲法」といい、「憲法自体に改正手続きが書いてあり、それに従わない限り改正はできない」憲法を「硬性憲法」といいます。日本も韓国も後者です(日本は、衆参の2/3の同意ど、国民投票)。
日本では日本国憲法が改正されたことはありませんが、韓国では同じ硬性憲法でありながら、朝鮮戦争を経た、民主化が遅れた等の事情から、なかばクーデター的に憲法が書き換えられており、その回数は9回(数え方によっては10回)に及びます(映画内でも1回この話が出てくる)。ただ、その大半は北朝鮮との国交がらみという、「韓国にとって如何もしがたい」事情によるものです。
こうして9回(数え方によっては10回)も改正されているとはいえ、「基本的人権は尊重する」といったいわゆる「変えてはいけない部分」(憲法論では「憲法改正の限界点」という言い方をしたりする)は、韓国は変えていません。
日本ではこの「憲法改正の限界点」(これに対して、何でも書き換えられるという「無制限説」という考え方もあります。つまり、極論、憲法改正でナチスドイツのような憲法を作ることも「理論的には」許される、というもの)は、おおよそ「国民主権」「憲法9条」「基本的人権の尊重」の3つがあげられ、「この3つを否定するような憲法の書き換えは許されない」というのが、一般的な考え方です。
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※ 同じ第二次世界大戦の敗戦国であるドイツでは、ドイツ憲法に1条に「国民の尊厳」が規定されており、同時に「改正」の章では「1条を変えることはできない」とします。
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そして現在でもリアル日本では、コロナ事情に隠れてわかりにくいのですが、憲法改正の議論は少しずつ高まっています。この中では「一応」この3つは維持されていると評価できますが(9条の若干の書き換えをどうとるかは、難しい)、一方で今の憲法改正のルールである「参院2/3の同意と国民投票」のハードルを下げる、という案も存在します。これは「上記の「憲法改正の限界点」には「直接」ふれませんが、この「ハードル」を下げすぎると、今度は好き放題に改正できるムチャクチャな国になってしまいます。
また、上記に書いたように日本は改憲の経験がないため、主に憲法改正といえば特に9条関係や、今話題の「緊急事態における取り扱い」などが多く語られますが、何かと憲法学者を困らせる条文の「私学助成は合憲?」(20条、89条後段)にはじまり、実にいろいろな論点があります(これ自体はもう、憲法の学術書籍1冊クラスで話されるレベルです)。
こうした部分を「すべて」まとめて改正にかけるならかけるとしないと混乱するのは当然のことであり(何度も何度も改正されることは想定していない)、それには「国民(ここでは便宜上、投票権が微妙でも議論に参加すべきといえる、事実上日本人と同視できる外国人も含む)自体の理解」という点が本質的に重要なのに、日本はそれが非常に薄い(もう、政治家がやるんだからあんまり知る必要はないよね、に代表される「無関心さ」)点は確かに存在します。
映画内では決してこういった部分には深く踏み込まないのですが(ちらっと出るだけ)、裏ではこうした議論が存在する映画、と言えます。
影の功労者
大統領にさせようと頭を使った功労者と、一貫として大義と正義を貫いた政治家の話しは、最後呆気なく、切なかった。最後の最後は、手助けしたという事なのか⁉️
影も悪手を使ったが、大義の為だった。
そして、誰よりも陽に当たりたかった1人だった。
面白い映画だ。
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