「かなり脚色されているとは思うが、金大中氏とその参謀となった男の実話を元にした話。」キングメーカー 大統領を作った男 caduceusさんの映画レビュー(感想・評価)
かなり脚色されているとは思うが、金大中氏とその参謀となった男の実話を元にした話。
金大中氏という名前は昭和の時代、ニュース番組で頻繁に耳にしていた名前だ。
「キムデジュンシ」ではなく、「キンダイチュウシ」と呼ばれていた。
東京で誘拐され、一時行方不明となり、無事解放された「金大中事件」を記憶する人も少なくなっているかもしれないが、この事件は後に韓国のKCIAの犯行であることが判明しているようだ。
韓国が日本に併合されていた時代を知る世代で、日本語でインタビューに応じることもできた。
大統領になった後、北朝鮮に対して「太陽政策」と呼ばれる融和的政策をとり、ノーベル平和賞を受賞、日本に対しても反日的政策はとらず、当時禁止されていた日本文化を韓国国内で解禁した。
そんな金大中氏だが、時の政権などから政治的な迫害や弾圧を受け続け、命も狙われた。
ラストで脚を引きずり、杖をつきながら歩くシーンがあるが、これも事故をよそおい暗殺されかけた時の後遺症だ。
その他、死刑判決を受けたり、軟禁されたりと波乱万丈な政治家人生を歩んでいただけに、大統領になろうとは誰も思っていなかった。
それを実現させたのが、劇中でソ・チャンデクの名で出てくる、厳昌録(オム・チャンノク)という男だったということなのかもしれない。
朝鮮半島には恨(ハン)という文化があり、大統領経験者は例外なく投獄されたり、自殺に追い込まれたりする。
金大中氏も例外ではなく、三人の息子が不正蓄財で追求され、斡旋収賄の罪で身柄を拘束された。自身は北朝鮮との関係を追求され捜査も行われたが、それにより犯罪として裁かれることはなかった。
韓国は政権が危うくなると、国民の目をそらすために、決まって反日を持ち出す傾向にあるが、金大中氏は日本とも縁が深く、反日政策をとらなかった珍しい大統領と言える。自身も日本に対して悪い感情は持っていなかったのだろう。
映画の方は、少し黄みがかった荒い粒子の映像が過去の時代を感じさせ、汗ばんだ表情が焦燥感と緊迫感を与えている。
キャストも素晴らしく、韓国の政界特有の雰囲気もひしひしと伝わってくる。
「KCIA 南山の部長たち」「モガディシュ」などにも通じる韓流お得意の政治を題材とした映画。
ぜひ、劇場でご覧ください!
邦画のだらし無さに呆れます。なぜ、日本でこのような映画を作れないのか。
第二次世界大戦時に、ポーランドの在外武官だった小野寺中尉(中佐?)の諜報活動を映画にしてもらいたいと、かねがね思っています。そしてポーランドの悲劇的な結末をも。日本人でこんな人がいたのを皆さんに知っていただきたい。