劇場公開日 2022年7月29日

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「里親制度を知れば面白い」1640日の家族 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0里親制度を知れば面白い

2022年8月6日
PCから投稿

「里親・里子制度」で育てた子供を、元の親に戻すうえでの養い親(母親)の葛藤と過ちを描いた佳作。
仕事として受け入れたはずが、自分の子と同じレベルで愛してしまった里子に対し、離れることができなくなってしまった、母親側の執着と依存が強調されていました。

フランスには子供の成長を「国として守る」意識と法制度があることを踏まえて観ると、実に面白い映画です。

ググって知ったのですが、「家庭での養育ができない場合は、まずは家庭と同様の家庭環境で養育されるように、国及び地方公共団体の責務で必要な措置を講ずるよう」にするのが原則だそうです。
親の死亡や、親が経済的・健康的・精神的に子育てできない環境になった場合はもちろん、親からの「虐待を受ける可能性がある段階での予防措置」としても、子供を保護することが最優先という法律が施行されていて。

親を失って、新たな養親の下で相続権もある子供になる場合は「完全養子縁組制度」。
元の親と新しい養親の両方に共同親権があったり、もともと叔父叔母など血縁関係があって元の戸籍のまま成人するまで育てたり、などのケースで適用される「特別・単純養子制度」。
親が事情で育てられない時期があった場合は、血縁は関係なく受け入れ、いずれ親元に返す「里親・里子制度」か「児童養護施設制度」などが適用される。

さらにフランスにおいて里親は研修を課す国家資格で、職業として成立し、養育の実費と別に報酬が生じる仕事なんですね。
そこを理解してないと、「なんて血も涙もない法の運用なんだ」と行政側の判断が理不尽に見え、また「母親らしい感情は大切」なのにかわいそうと、観客の目には写るかもしれません。
報酬を受け取る描写がないから、ボランティアか養子にしか見えないんですわ。

そして、映画だからといえばそれまでなんですが、こういう作品では「理性や理屈ではなく、感情を優先して失敗する人間」が描かれることが多く。
母親の「血縁のパパと、里親のママのどっちを選ぶの?」という無体なほどの感情の押し付けの挙句、自己の行動を正当化しようとし、法的に不利な方へとばかり選択していきます。
これが、愚かに見えてイラっとします。

また同時に、演技と思えないくらい子役の心情描写が真に迫っていて。
子どもは「遊びたい」「友達や兄弟といたい」という素朴な欲求を口にするけれども、一方では複数の大人=「実の親」「里親」の両方の気持ち・空気・利害関係を読み取って、曖昧な返事をしたり、嘘をついたりします。
そんな子どもなりの葛藤を子役が完全に表現していたのが素晴らしかった。

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コージィ日本犬