劇場公開日 2023年7月21日

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「エスカレートする面白さ」ミッション:インポッシブル デッドレコニング R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 エスカレートする面白さ

2025年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

世界的人気を誇るスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第7作
トム61才の時の作品
トムの年齢も気になるが、とにかくややこしくて難しい。
そして悩ましい部分も多い。
どうしても007のカジノロワイヤルと慰めの報酬とを比較しそうになるが、やめておこう。
さて、
この背景
AIエンティティが起こした悪夢
戦争の頂点に立つと思われたロシア原子力潜水艦に搭載されたAI 暴走?
物語の冒頭でその根拠を試行錯誤するシーンがある。
アバンタイトル直後のシーン
このタイトル
ロシアの原子力潜水艦「セヴァストポリ」
その頭脳の中心であったAIエンティティを動かすためのふたつの「キー」
この潜水艦は、推測航法(デッドレコニング)を用いた新しい航行システムと高度なAI「エンティティ」を搭載していた。
表面上 AIが暴走し、自ら発射した魚雷で自爆する。
この事件が物語の発端となる。
難しさのひとつが軍事知識
原潜はGPSに探知されないようになっている。
この部分にAIを設定している。
その暴走の原因がまったくわからないことが世界の脅威となる。
「AIに自我が生まれたのか?」
ここがこの物語の背景の中心だ。
そしてこの物語、つまり第1作では、「理由」を知る男ガブリエルの秘密が解き明かされない。
彼はキーが何に使えるのかという「理由」を明かさない。
視聴者はそれが、原潜のAIキーであることは知っているが、なぜシステムが暴走したのかわからないし、その理由は示されない。
そして、原潜のAIの暴走を知るためのアクセスキー いわばブラックボックス的存在
ただしそれは、『自律的に思考・判断・行動する存在であり、むしろ「人間を観察し、未来を予測し、操作する」』と考えられる。
ややこしい。
この作品は、世界で起きる支配者たちの人為的陰謀に対し、AIの自我の発生によって支配者たちをコントロールしてしまうという意味合いを感じる。
同時にイーサンたちIMFの行く末を暗示しているようでもある。
つまり、人為的であれば人的行為によって何とかなってきた時代から、瞬間的にすべての動作がコントロールされてしまう未来を暗示しており、もはやイーサンたちの出番はないという概念が下地にある。
そして、イルサの死だ。
何者かに乗っ取られたシステムと誤情報によってイルサは死んだ。
イーサンはまたしても大切な人を守ることができなかった。
この不条理
そこに垣間見えるアジア系アサシン パリス
またまたややこしい
ガブリエルはAI「エンティティ」の未来予測を信奉し、その意志を実行する代理人として行動してた。
彼は「未来はすでに決まっている」と信じており、エンティティの予測に従って人を殺し、鍵を奪い、イーサンを追い詰める。
その途中、イーサンはパリスと対峙するが、止めは刺さなかった。
この出来事がAIによる「指令」となり、ガブリエルは彼女を刺すことに繋がる。
そしてそもそもがブルエルはエンティティの使い手ではなく「しもべ」
ややこしい
つまりガブリエルは、エンティティの指示に従い、その予測した行動をとっていたに過ぎない。
これに対抗するのがパリスの最後の行動
落ち行く列車 イーサンとグレースを救った。
ここに唯一彼女の「選択」した「自由意志」があった。
同時にこの「選択と自由意志」こそ、この物語の核心でありテーマだったように思った。
パリスは最期に自身の自由意志で行動したことに対し、とても満足したように思った。
その群像 グレース
詐欺師であり、決して人に心を許さない。
どうしようもない状況に陥ったことで、MIFに入ることを提案される。
「誓うよ。君の命を自分のよりも優先する」
イーサンの言ったこのひとことが彼女を変えた、はずだった。
そして裏切りと良心の呵責
この人間性こそ、この作品の真骨頂だろう。
Aに芽生えた自我
この「かもしれない」ことと、そもそも優秀過ぎるAIエンティティ
暗躍する支配層たちとその抵抗軍であるIMF
世界の勢力図がガラッと変わりかねない事態
この状況下で、
イーサンは愛するイルサを失ってしまう。
イーサンにとっての「選択と自由意志」とは、「平和」そのもののはずだ。
最愛という犠牲
アメリカ人の新たな概念
この切なさと犠牲心をアメリカ人は今しばらく感じていたいのかもしれない。
そこに見えたもの
それはおそらく本当の愛
この新しい愛の形を、アメリカ人たちは感じているのだろう。
壮大な背景と個人的なこと
この天秤にかけた両者は、映画であればこのように極端かもしれないが、実際サラリーマンであれイーサンであれ、選択と自由意志の重みは、誰にとっても変わらない。
もはや敵は人ではなく、未来そのもの。だからこそ、選ぶという行為にこそ、人間の尊厳が宿る。
イーサンのように、私たちもまた、何かを守るために走り続けているのかもしれない。
AIが未来を予測しても、人の心までは支配できない。だからこそ、私たちはまだ希望を持てる。
これはスパイ映画ではない。人間の選択と、その代償を描いた物語だろう。

R41
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