劇場公開日 2023年7月21日

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「AIと役者の身体」ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5AIと役者の身体

2023年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今回の敵はAIだ。一応人間の悪役は登場するが、AIによる脅威が物語の中核にある。ハリウッド映画に、こうしたAIの脅威をSFではない作品で描く作品が増えてきたが、こういうブロックバスター映画で敵と設定されるものには、時代性が強く刻印される。ある時はソ連だし、ある時はテロリストだし、ある時は中東だったりする。で、今ホットな悪役はAIなわけだ。AIなどのテクノロジーは非人間的な象徴とされがちだ、それに対置されるのは、本作では役者の肉体である。体を張った大スタントがこのシリーズの持ち味になっているが、その大スタントの本気度がテクノロジーにはない魅力として称揚されている作品になっている。
空港のシーンで、いないはずの人間がいる、というようなディープフェイク的なネタが使われていた。ふと思ったのは、トムの生身のアクションは本当に行われていることに価値がある。なぜ本当にやってると言えるかというと、メイキングがすでに出てたりするからだが、それはあくまで二次情報であって、映画を観ても本物かどうかはわからない。空港のシーンのディープフェイクトリックと同じことで、皮肉なことだが、観客が映画を楽しむためには二次情報に頼らないといけないということになる。今後、生身のパフォーマーの価値を映画だけで図ることはできるのだろうか。

杉本穂高