黒の牛のレビュー・感想・評価
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見所はタイトルどおり牛の黒さ
一応、「十牛図」をモチーフに、山を追われた男が牛を飼うことによって里での生活に適応していく…というストーリーは存在するが、ほとんど台詞もなく、イメージビデオに近い。冒頭と結末以外はモノクロで描かれるなかで、一頭の牛の威厳さえ感じるような佇まい、重量感ある「黒さ」が画面を支配している。
草木国土悉皆成仏。
禅の教え『十牛図』をなぞるように展開する物語。およそ正方形のスクリーンにモノクロ。ほぼ言葉を発せぬ主人公は山の民。難解さを感じながらも、主人公と牛のやり取りに目が離せない。牛は牛であり牛でないような。もしかしたら牛は自分なのではないかとか(実際、十牛図ではそう説くが)。
上映後トークショー、蔦監督と李康生。41歳の若さで極上の映像美と禅の世界の見事な融合を見せる監督のこだわりは、パンフレットにある「山水画」という言葉で腑に落ちた。主人公「私」役の李康生は台湾人。「私」はほぼ言葉を発せず。山の民とあり、監督もサンカ、木地師であると言っていたのが納得できた。里人と獣の中間に存在する生き物というか、まだ文明を得ていない未開の民というか。だからこそ、人間臭い物欲などとは遠い存在に思えるのだろう。その存在感を、李康生という役者を起用することでスクリーンから醸し出ていたのは見事なキャスティングだと思った。また彼はこの撮影の機会に座禅も学んだといい、その佇まいはその雰囲気があった。
牛を失ったことに悲しみ暮れるのではなく、それを自然の成り行きのことのように受け止める「私」。更にその「私」さえも去った、「猿の惑星」のオマージュのような無の境地のラストを、監督は「新しい循環の一部」という。その一言で、それまでなんだか理解が追い付かなかった場面などすべてが解けたような気分になった。
ついでながら、デコ回しの三番叟が登場するのはさすが徳島と思えたし、その人形遣いたちの社会的立場を考えれば、「私」に通じるものがあると思えた。そして、牛のふくよのプロフィールにほっこり。幸せな牛だと思う。(詳細はパンフで)
緞帳が下りたら街へ出よう。
美しく、力強く、魂を引き込まれる風景だったけど、意識を維持することができませんでした。
語られない世界を見つめる
物語らしい物語をほとんど持たず、ただ映像と時間、そして存在そのものをカメラの前に差し出す作品だ。白黒の画面に映し出されるのは、説明も感情の誘導も拒んだ、極端にミニマルな世界であり、その沈黙が観客に強い緊張感を強いる。
人間と牛が同じフレームの中に置かれることで、生と労働、支配と従属といった関係性が、言葉を介さずに浮かび上がってくる。牛は象徴として強く機能しながらも、決して寓話的に整理されることはなく、あくまで「そこにいる存在」として映され続ける。その態度が、本作を単なる象徴映画に落とし込まない。
タイトルである「黒の牛」は、明確な意味を与えられることはない。だがその曖昧さこそが、この作品の核心であり、人間中心の解釈を拒む姿勢そのものを象徴しているように思える。理解するよりも、耐えるように観る映画であり、その体験は確実に観る者の身体に残る。
かなり際立った世界観の具現化 IMAXで観たかったかも
面白かった。蔦監督の映画は日本映画とかどこそこ映画とかいう範疇を大体超えてる。東アジアをちゃんぽんにして越境してついでに時代も。
ツァイ・ミンリャン映画のリー・カンション主演の日本の時代劇にして「牛」の映画。(音楽は坂本龍一がチョロっと)。そしてほぼ白黒の撮影が素晴らしい。全編に渡って水墨画のような霧と太陽と雨。普通の日本映画にはないような雨量の雨が降り注ぎ、雷鳴が映り込む。
エンドロールを見て65ミリフィルムも使われてることを知って驚いた。
にしても画面に牛が現れてから魅力、自然の中に現れる水田という構築物と牛の組み合わせ。家の中にいる牛。田中泯が出てきてからの映画の締まり具合。
全10章に分かれているので各章とも禅問答を繰り広げてる気になる。これを他人に伝えるに、主題が今村昌平っぽくなりそうでもそうならず、2001年宇宙の旅っぽい感じもするけどそうでもなく、タルコフスキー的、ソクーロフ的、パラジャーノフ的、アンゲロプロス的、というのか。
でも今時時代劇で、当時の日本で撮られた写真の中にしか見たことのないガリガリで汚い日本人たちとかよく集めたな、と思う。あ、写真撮影のシーンはよかったな。何も説明はないけれど、そんなものの集合体としての映画が際立っていた。音も良かった。一日に牛の映画とヒグマの映画を連続で観た。
黒毛和牛の運命や如何に
意味不明の1、2を頑張れば面白いかも─
十牛図の現代的解釈を綴る
自己探求の物語である十牛図をもとに撮られた作品。
第一図〜第八図までは35mmモノクロスタンダードで、第九図は70mmで撮影。
70mmカラーになった途端の視界の拡張と色彩の艶やかさに心掴まれない人はいないと思います。
実は牛って地球上の全ての生物の中で最も繁栄に成功してるらしい。
そんな地球の支配者を通して自己を見つめ、自然と一体になり、輪廻を繰り返す。
仏教興起以前から続く原初的な思想を、現代人が独自に噛み砕き表現した作品として素晴らしい完成度だと思った。
第十図『入鄽垂手(にってんすいしゅ)』のユーモアによって叩きつけられる当事者性もまた新鮮で良い。
絵画的
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