「大切な人へのレクイエム」天間荘の三姉妹 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
大切な人へのレクイエム
予告から、家族の絆を描く感動作だと思って鑑賞してきました。確かにそういうテーマで、それなりに重い内容も含んでいて、心を揺さぶる作品でしたが、予想とはかなり違ってファンタジーな展開でした。
ストーリーは、事故で臨死状態となった小川たまえが、訳もわからず魂だけの状態で、天界と地上の間にあるという天間荘という旅館に連れてこられ、そこに住む二人の異母姉と出会い、天間荘で働きながらいろいろな人と出会い、現世に戻って生きるか天界へ旅立つかを考えるというもの。
この天間荘というのが話のキモで、天界と地上の間にあると言いますが、どう見ても海辺の街にある普通の旅館で、ここでなぜ生死の選択をするのか、従業員たちは何者なのか、この旅館がある三ツ瀬という街はいったい何なのか、多くの疑問が頭をよぎります。しかし、それがしだいに明らかになるとともに、この作品に込められた思いや願いがはっきりと見えてきて、観客の心に響きます。
終盤は、魂の安息を願い、亡くなった者との向き合い方や残された者の生き方を問うような感動的な展開でした。ただ、あまりにもファンタジックな映像でちょっと感情移入しづらかったように思います。それよりもラストでたまえが見せる水族館のシーンの方が胸に込み上げてくるものがありました。
突然命を奪われた人々へのレクイエムのような作品で、それなりに感動して泣ける部分もちらほらあったのですが、全体的には冷静に観ていたなという感じです。というのも、いくつか気になる点があったからです。そもそも三ツ瀬がそういう意味の街なら、なぜ今回のような3人が客として招かれたのでしょうか。また、財前と優那が急に心変わりしたようにも見えたのですが、決断の決め手は何だったのでしょうか。自分が何か見落としていたのかもしれませんが、ちょっと引っかかってしまいました。
主演はのんさんで、天真爛漫なキャラがばっちりハマってました。最近観た「さかなのこ」を思い出して、魚捌きのギャップにニヤついてしまいました。姉役の大島優子さん、門脇麦さんも、それぞれの個性が際立ついい演技でした。それにしても、「のぞみ、かなえ、たまえ」って、久しぶりに「欽どこのわらべ」を思い出しました。脇を固める、三田佳子さんはさすがの貫禄と演技で存在感抜群でしたし、山谷花純さんも好演でした。ただ、寺島しのぶさんだけはキャラを作りすぎてる感じがして、居心地の悪さを感じてしまいました。