劇場公開日 2023年10月27日

「薄っぺらく、かつ不快」唄う六人の女 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5薄っぺらく、かつ不快

2023年11月8日
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鑑賞方法:映画館

本年度観た邦画では岸辺露伴に次ぐ不味さ。
粗筋を読んだ限り、マヨイガとかニンフとかのモチーフを使った都市伝説的な話かと思っていた。結果としてはまだしもそっちの方が良かったかなという印象。
まず女たちの造形があまりにも薄っぺら。魔女とかセイレーンとかニンフといった森に棲む者たちはもっと猛々しいものです。この映画の女優さんたちはとてもフォトジェニック(もちろんそれが狙いだとは思うけど)でも肉体を余り感じさせない。つまり体熱や体臭や汗がほとんど伝わってこない。「唄う」といってるけど彼女たちは声を発さない。この場合の「唄う」は生命感を発散させるといったイメージだと思う。だから肉体的な表現は極めて大事。でもそれが薄く全くリアルではない。きれいなおベベを身に纏い今美容院に行ってきましたっていう髪かたちで森を守れますか?彼女たちが説得性を持たないので森そのものにも深みや神秘性がでてこないのです。
続いて男優2名。竹野内豊は自分で「フォトグラファーです」と名乗る。つまりはファッション雑誌やCMを主戦場にしているカメラマンなのでしょうがこの設定と本映画の映像が何かCMっぽいことが響きあっている。いつもながら肉体的に弱々しく言葉にも重みがない。とても頼りがいのある人には見えないのです。そして山田孝之。私はこの人がかなり苦手です。素が極端な人見知りで反動で演技する時は目立つよう目立つようにアクの強い立ち居振る舞いをする、という触れ込みでそれが基本的なアクトのメカニズムになっている。つまり我々は彼が「弾けている」姿をいつも見せられるわけで押し付けがましく暑苦しい。今回は粗暴な人物の役柄で役には合っているのかもしれないが。
核廃棄場をつくるために森を買い取ろうとしていて、それを活断層があることを暴いて阻止するという設定もどうもね。そういった大袈裟な状況がなくても森は守らなきゃならないし。また核廃棄場をつくるためには長期間に渡り綿密な調査、アセスメントを行うので活断層を見落とすなんてことはないです。原発とごっちゃになってませんか。
竹野内豊演ずる萱島がブツブツと人間が生まれてきた理由がどうのこうのと言ってるんだけど何を言っているんだがちょっと分からない。
トトロやもののけ姫を観て育ってきた世代が中途半端な知識と見識で環境をテーマにした映画をつくるとこうなる、悪い見本でした。

あんちゃん