「長く美しい世界に繊細な心が揺れる…ただ150分は退屈に写る部分も」とおいらいめい たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)
長く美しい世界に繊細な心が揺れる…ただ150分は退屈に写る部分も
複合的な要素を絡めながら、終わりに向かって生きていく人々。150分にしては単調な部分も多かったので、もっと短かったら作品の展開も楽しめた気がする。
元々は舞台の作品だったものを、『あらののはて』のルネシネマが長編映画として再構築。彗星が来ることを分かっている世界で、3人が次第に姉妹の形を紡いでいく姿を描く。彗星が来るときに生まれる問題や移行はとっくに進んでおり、生き残っていく為に人間は諸行を繰り返す。シェルターに差別、諦めと終焉に向けた活動が各方面に滲む。社会的にはらむ部分を上手く織り交ぜながら三姉妹の変化を繊細に描いていくのが上手い。
その一方で、さすがに150分は長い。長回しを多用するものの、代わり映えのしないシーンも少なくなく、今作最大の見どころ、ポスターにもなっている日没までの12分の長回しシーンだけでも良いかなと思ってしまった。いつ落ちてくるか分からない中、虚構と現実を行き来する感覚が掴めないまま終わってしまった。
『ベイビーわるきゅーれ』の髙石あかりさんが凄く作品をリードしており、150分の密度を高めてくれる。吹越ともみさんと田中美晴さんも暖かいリードをしてくれるので、凄くリードの強さも感じた。そういう意味では、映画と向き合ってきたルネシネマだからこそ滲んでくる描写力が作品における三姉妹の連帯感を生んでいるのかもしれない。
『あらののはて』も凄く良かっただけあり、今後もルネシネマに注目したい。ありふれた空気の中に内在する大きな規模を見せるギミックは凄く上手いので、ロサに留まらず広がってほしい。
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