「美しい」神々の山嶺(いただき) まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
美しい
原作は夢枕獏の小説。ヤンジャンで連載した際の漫画の作画は谷口ジロー。それをフランスが7年かけてアニメーション映画として制作したのが今回の作品です。
全体的にカサカサ乾燥してて、街中のシーンは日本の湿潤気候は感じません。ツヤとかキラキラとか無い。色味のトーンは抑え気味。物語が昭和なのでわざとレトロにしてるのかな。夏の蝉の鳴き声も日本のアニメとは違う音に感じました。あと、日本人の顔がいかにも「フランス人にはアジア人が皆んなこんな風に見えてるんだろうな」って感じ。
街中も美しいですが、登山のシーンはとにかく素晴らしいの一言。谷口ジローの画力がもんのすん〜〜ごいのですが、やっぱり山を題材にシリアスに展開するなら絵ヂカラ必須。映画版も本当に美しく生命の危険をちゃんと感じるタイトルに恥じない画面でございました…拝。
しっかし、何とシブいアニメなのか。こんな渋くて儲かるのだろうか。こういうの作るとこがフランスっぽいなぁと。
あと、個人的には、ちょっと音楽付け過ぎかなーって感じました。雪山の無音ていうか、怖いくらい静かな感じとか。街中と山中では音の伝わり方が違うので、聞こえ方の違いなどもっと感じたかった。
小説、漫画共に未読なのですが、どうやら映画版はかなり色々なエピソードぶった切りらしく、猛烈読みたい衝動に駆られています。もっとエモい展開になると思って観てたんですが、意外と尻窄み感がありまして…ちょっと物足りないと言えなくもない。製作陣はそもそも同じ方向性でやろうとしてないと思うけど。(リスペクトはとても感じます)
あと、アニメのジャンルは全く違えど、日本アニメーション映画の風景背景の表現力はやっぱ神やな〜と改めて実感しました。単に好みの話なんでしょうか。
「岳」「孤高の人」「岳人列伝」など色々読み比べたいです。