「だってそこにソレがあるから…」神々の山嶺(いただき) ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
だってそこにソレがあるから…
山は怖いにゃ〜…(こたつの中で手汗をびっしょりかきながら)
Amazonプライムに入ったのを機に鑑賞。
家でみても充分没入できるけど、とはいえこれは確実に劇場で観るべき一作。。いやもう怖い。山の過酷さは言うに及ばず、危険に取りつかれる人間の行動がもう怖い。
「レヴェナント」とか「ゼロ・グラビティ」みたいのが好きな人は楽しめると思いますし、0.1%くらいは登山の疲労感が味わえるんじゃないかと。
8000m級と言わずとも、私のようなお家最高インドア人間にとってわざわざ過酷な環境に出かけて行ってテント泊したり急角度の崖を登ったりすること自体が理解しがたいミッションインポッシブルですが、逆に過酷で困難だからこそやるんだろうというのも何となく想像がつくわけで。
装備の助けはあるにせよ、基本的には自分の身ひとつでその困難を攻略したという体験、それが「山の味を覚える」ってことなんでしょうきっと。
ただ正直、ラストは例の登山家の有名な言葉が口の端まで出かかってる夢枕獏が浮かびましたね。。
日本人の目から見ると近過去の街並みが年代的に微妙にずれてると感じたり、身振り手振りが完全に欧米人のそれに見えるなど、気になるところがゼロではないが、まあご愛嬌レベル。
基本的には大変な労作だし、複雑な時間の行き来を過度な説明やテロップに頼らず映像のみで伝える演出的手腕はほんとに見事だと思います。
これが日本でアニメ化できなかったのは敗北じゃね?と思う一方、日本では逆立してもここまでの普遍性を獲得できなかっただろうなと思う面もあります。
谷口ジロー(←そもそもメビウスの本名)がフランスで人気というのは聞いたことがありましたが、BDの本場でここまでリスペクトされてるという事実がすでに胸熱なわけで、関係者全員に完成おめでとうございますと言いたくなります。
吹替も、安定の大塚明夫はともかく、堀内賢雄は最初実写の俳優さんが当ててるのかなと思うほど生々しさがあって新鮮で、若々しい張りと色気がありました。かなりのベテランなのにここまで新しい印象を与えられるなんてかっこいい。