「谷口ジローの世界が動いていた」神々の山嶺(いただき) コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
谷口ジローの世界が動いていた
谷口ジローの絵に対する理解、リスペクトが半端なく。
映画本編に紡がれた、映像表現の美しいことと言ったら。
色彩感覚も含めて、谷口ジローを動かすという決意と覚悟を感じ取れました。
そして描かれる山の怖さ、登山に取り憑かれた男たちの執念と生き様のリアルなこと……
さらに、日本の丹念なロケハンによって、1980年代=昭和の日本が見事に再現されていました。
なんでフランスの人たちが、昭和の居酒屋を描けるの?と驚きました。
違和感があったのはわずか。
国鉄新橋駅改札の入り口形状と、いくつかの企業看板くらいか(まだワープロ全盛のあの時代に、通信カラオケボックスはないしな……)って程度のみ。
原作の小説、またそれを下敷きにした漫画で描かれていながら、大胆にカットされていた部分はありました。
文太郎の姉・涼子と羽生の関係、羽生を深町と探しに行ったネパールのことや、涼子と深町の関係などはばっさり。
でもそれが、尺に収めるだけでなく、映画としての余韻あるいいエンディングにつながっていて、素晴らしい換骨奪胎だと思いました。
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