みちのく秋田 赤い靴の女の子

2022年製作/113分/G/日本

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映画レビュー

5.0秋田にも赤い靴の女の子の物語があった

2022年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

 帰省した秋田で「秋田の赤い靴」の像と渡辺喜恵子氏の碑文に出会い、「タンタラスの虹」(直木賞作家渡辺喜恵子作1975年発行・新潮社・)を古本で購入した。
 この小説は宮城県白石生まれで日本から「写真花嫁」として大正末期にハワイへ渡った女性が主人公。苦難の末に生活が安定し疎かになっていた長女の教育のため訪ねたミス・ハリソンが、宣教師として日本に渡り出会った養女コラ、日本名金子ハツについて語る。
 殺人の罪で服役中の金子ふじが秋田の獄中で生んだハツをミス・ハリソンが引き取りふじの死後米国に連れて帰国する。ハツはハワイで胸を病み34歳の生涯を閉じる。

 実話を元にしたという金子ふじ、ハツそしてミス・ハリソンの物語が「みちのく秋田赤い靴の女の子」として映画化された。監督・脚本は横手市出身石谷洋子氏、主人公ハツには潟上市出身の安田聖愛さん、母親ふじ役に横手市出身の壇蜜さんなど秋田県出身者が多く関わっており、公開を心待ちにしていたがコロナ禍で撮影が遅れたようだ。
 ようやく2022年10月に秋田、11月には東京で先行上映会が行われた。
改めて碑文のハツ(コラ)が残したという詩の一節に込められたハツの心情を思う。

以下に、渡辺喜恵子氏の碑文を書き写しておく。

「秋田の赤い靴に寄せて」
 明治二十年(一八八七)十一月十四日、金子ハツは秋田女囚監倉で生まれた。息も絶えだえの赤子を、引き取ってミルクを与えたのが、若い宣教師 カラー ハリソン(一八五九~一九三七)である。
 六歳になったハツを学校(現秋田市立明徳小学校)で学ばせたく、ハリソンは教え子の川井運吉に相談した。 結婚前の運吉は分家してハツを養女にした。
 ハリソンの帰国はハツが十二歳の時。残して行くにしのびず、ハツを連れて横浜から船に乗った。後にハツを ロスアンゼルスの大学に入れるが、当時排日の嵐で卒業しても思うような就職口はなくコラ(ハツの米国名)の将来を案じたハリソンは日系人の多いハワイへ渡り共に教師の道を歩むがコラは三十四歳の春、この世を去った。その後もハリソンは日系人のよき師、よき相談者となって七十八歳の生涯を全うした。二人はホノルルのヌアヌ墓地に眠っている。
   - かっては苦悩にうちひしがれし
      異邦人なれど
        いまぞわが故郷に辿り着きぬ -
  一九二二年胸を病み死を覚悟したコラが残した詩の一 節である。
  九十五年の歳月が流れて、いま、ふるさと人の愛の手がさしのべられた。コラの霊はどんなにか安らぎを得たことであろう。そして信仰と人間愛を貫き通したミス カラー ハリソンのお顔も晴れやかだ。
 渡辺 喜惠子 記

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