「助けたかっただけ」友情にSOS 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
助けたかっただけ
いいかんじだったが、びみょうでもあった。
差別やBLM(ブラックライブズマター)をあつかう映画は、黒人の監督だと白人が悪いという告発的な映画になる。
が、白人がつくると両成敗要素がもたらされ、わりと公平になる。(雑感として。)
黒人の監督のばあいでも(白人に対する恨みを)抑制していると、いい。
ピールのゲットアウトが好例。
すなわち、差別の実態を冷静にカリカチュアしていると、映える。
本編もわりと冷静にもっていく。序盤はすごくたのしい。
なにせ黒人男ふたりプエルトリコ男ひとりのシェアハウスに、未成年の白人女がぶっ倒れていた──わけである。
けいさつ呼ぼうと言うまじめなクンレ(Donald Elise Watkins)に対し「やめとけ、じょうきょうかんがえろ」と言うワルのショーン(RJ Cyler)。
僕とアール~(2015)で印象的だったRJ Cyler。
本作では終始電子たばこをふかし、つねに奥手な親友のクンレをけしかける悪友。
つよい目ぢからで、顔に達観があらわれる。いい感じ。
対する白人側にはトールガールにも出ていた(なんかむしょうに憎たらしい)Sabrina Carpenter。
現実的にみると彼女が未成年の妹をパーティに連れてきて、ほったらかしにした──のが事のほったんなのだが、小事がどんどんふくれあがる。
その様はコミカルでもあるが、コミカルな事態でも、現実に銃を向けられることがある──というBLM課題を描いている。
ただし、わかっていない極東の東洋人の意見にすぎないが、アメリカ本国はたぶん「BLM疲れ」しているだろうという気配を、たびたび感じる。
げんじつに罪を犯す輩は黒人が圧倒的多数なのであって、犯罪者がじっさいBLMを隠れ蓑というか免罪符にしている状況を、しばしばあちらのニュースで見かけたりする。
これはいい映画だったがimdb6.0と、思いのほか伸びてなかった。
じぶんの印象では6.5くらいだったが、なんとなくそこにアメリカの「BLM疲れ」を感じた次第。
興味深かったのはカルロス(Sebastian Chacon)と従兄のポジション。白人のように見える非白人が、あえて白人ではないことを明かさず、出自に口を噤んでいる実態がかいま見えた。
ところで差別を描いている一方、登場人物は並べて絶対的な秩序をもっていた。
兄貴の家にたむろして葉っぱを吸っているような輩たちも「未成年」と言ったとたんに大慌てで逃げ出していく。それがレベルのちがう悪だと知っている。
だいたいにおいて三人は少女のチューブドレスの胸元に挟まれていたスマホにずっと気づかないわけであって、それ(未成年との関わり)が完全にアウトなことを共通認識している点において、かれらはじつにまともな人たちだった。