「SFだけに留まらない現代社会への問題提起」NOPE ノープ Reiさんの映画レビュー(感想・評価)
SFだけに留まらない現代社会への問題提起
いやー、絶対に食われたくない。
まさかUFOが乗り物でなくて人食い生物だったとは。
その発想が面白い。
しかも洋画にありがちな作り込まれた宇宙生命体ではなくエヴァの使徒っぽいのが現代チック。
解説を読むと、実際にエヴァの使徒からインスパイアされたと語っている。
ストーリーの中では所々にオマージュがあるのも楽しい。
ジョーダン・ピール監督は人種差別など社会問題をホラーで描くが、この映画もやはり単なるSFではなかった。
冒頭のチンパンジーのエピソードから、順に登場するモノなどのキーワードでチャプター分されている。
それが故に、私はチンパンジーの話しがこの映画にどう関係あるのか分からなかった。
他の方のレビューや解説を色々拝見してようやく納得。
そもそも私自身がチンパンジーを他の人間と同等に観ていなかったから、そこに気付けなかったのではと、自分が怖くなった。
まさに監督が問題提起している人種差別だ。
黒人・黄色人・レズビアンなど。
チンパンジー・未確認生命体は隠喩だ。
人間も動物も宇宙人も、バカにしたり見せ物にするのは良くない。
未確認生命体も怒ったり、お腹壊したりする、、。
映画のもう一つのテーマが「支配と共存」だ。
未確認生命体を支配しようとしたジュープは食われ、目を合わせなければ食われないと気づき一時的に共存できた主人公。
目を合わせないルールは主人公と馬のやりとりからわかるが、未確認生命体から生き延びる術として繋がっていたのだ。お互いを認め、ルールを守れば共存できるのではないのか。
現代のSNSの問題も組み込まれていて、自分の欲望や利益の為に犯した罪は罰となって跳ね返ってくる。
今一度、その発信は誰かを傷つけないかを考えるべき。
そして、映画界での完璧な映像を撮りたいがためにおこる死亡事故にも警鐘を鳴らしている。
未確認生命体を撮ろうとして食われたホルストや記者。
欲望に取り憑かれてしまうと、安全面を無視して身を滅ぼす。
そんな議論を起こすきっかけになればと思ったのかも。
チンパンジーで視聴率を取ろうとして殺された人達。
未確認生命体を見せ物にして食べられちゃったジュープ。
あぁ、そういえば未確認生命体から吐き出された、グサグサと落ちてきたコインがやたらとあったのは、、、
見せ物にしようとすると者への応酬で、欲しかったお金で殺される的な?
これは冒頭の旧約聖書のナホム書第3章6節からの引用から読み解く「力の行使によって支配を行う者は、逆に滅ぼされる」だ。
SFホラー的には徐々に明かされていく謎と、ハラハラする展開が面白かった!
意味を深く考えずに観終わるのは勿体無い。
社会問題提起への変わったアプローチの作品でした。