「あまりにも多層的でバケモノのようなエンタメ。」NOPE ノープ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
あまりにも多層的でバケモノのようなエンタメ。
初回にはストンと入ってこなかったチンパンジーとテーマパークのオーナー、デュープ(スティーヴン・ユアン)のエピソードが、二回目の鑑賞ではむしろこっちが本筋の人間ドラマのように感じられて、つくづく細かいところまで行き届いた脚本だと感心した。デュープは情けなくて可笑しくて、哀しくて可愛い。
また、見るものと見られるものの関係性、人種差別、ハリウッドの搾取の構造の批判と批評、テクノロジー面での映画史の読み直しなど、テーマは実に多層的で、それでいてとことんバカげた痛快ジャンル映画になっているのも素晴らしい。
そしてフルサイズのIMAX仕様という日本に2館しかないIMAXレーザーGT案件であり、バカでかいスクリーンに視線を縦横無尽に走らせる楽しさを久々に味わった。一方で、通常のワイドスクリーンの劇場でも観てみたら、それはそれで構図がみごとに決まっていて、従来の映画の安定感を堪能することができた。
フルサイズのIMAXとワイドスクリーンの映画が、上位下位や優劣の違いではなく、表現そのものが別物であることを改めて教えてくれるという意味でも、非常に有意義な作品だと思っている。
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