「商業主義、白豪主義へのかなり控えめな風刺」NOPE ノープ Masa_king01さんの映画レビュー(感想・評価)
商業主義、白豪主義へのかなり控えめな風刺
動物タレントへの配慮に欠けた扱いから始まって、映画の創世記に黒人が果たした重要な役割、非白色人種が置かれた苦境など、尊厳を失いかけている主人公たちを励まそうとする素材を随所にちりばめた。
そこになんであの未確認飛行物体が…?と思いきや、なるほど、それも生命体でしたか。
わずかな接触で、その習性を的確に捉え、なんとか接近遭遇の瞬間をカメラに収めようと努力する姿に思わず声援を送りたくなった。
チンパンジーによる悲劇の伏線も、マイノリティによる涙ぐましい努力と絡めて見事に回収され、主人公たちが「yes!We can!」とでも言いたげな大団円まで、一気に駆け抜けた映画だった。
「俺は見てるからな」という兄が妹に送るサインは、「おまえたちの所業を見逃さないぞ」とあらゆるものを踏み台にする白人社会や商業主義社会に警鐘を鳴らしている姿とも受け取れた。
ところが、視点を変えれば、その主人公たちですら、インスタ映えする未確認空中現象をカメラに収めるためだけに、かなりの犠牲を払うことになってしまった。
現代社会が、何を犠牲にして成り立っているか、ということを巧みに風刺した映画だった。
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