「不条理をひとまず肯定した上で、突き破る者たち」NOPE ノープ Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
不条理をひとまず肯定した上で、突き破る者たち
◉まずは神の不条理に振り回される
チンパンジーに蹂躙された家族、飛行機から落下した金属で死んだ父、円盤の奇跡を見ようとイベントに集まったら円盤に吸い込まれた群衆……と言った災厄が重ねて登場する。円盤は桁外れの話ながら、共通するのは不条理な不幸に見舞われたと言うこと。
飛行機からの落下物と円盤は、共に空から来たる災厄であり、そんな時、人は天を仰いで嘆くと言う共通点を理解できたのですが、チンパンジー事件は分かりませんでした。三枚目役のチンパンジーが、何故かブチ切れて凶行に及んだのが真相のようでしたが。
更に、チンパンジーに傷つけられなかった少年が円盤イベントの主催者のリッキーであり、事件で顔を変形された婦人が観客席に座っている(これは後で知りました)となると、このラインの筋書きだけでも、私にはほぼ理解不能でした。
とにかく、友好や探索ではなく捕食が目的の円盤=大クラゲが雲に隠れて、獲物を狙っていることは理解して後半へ。
◉それでも人の無駄な抵抗が実る
最初は逃亡を考えたOJとエムとエンジェルだったが、これでバズろうと野望を抱いたエムとエンジェルはプロカメラマンを巻き込んで戦闘を開始した。そして牧場の馬を守れるのは自分しかいないと、健気な決意を固めたOJ。
君は最後は命と引き換えに、馬を救うんだね。私は予告編で力なく「ノープ」と呟くOJの姿を思い出しました。
でもメインキャスト3人は無事に生還。
強烈な旋風と電気遮断? を武器に獲物を追い回す円盤。しかし、円盤は喉につかえる物や、喉を傷つける物は受け付けない反面、一度は何でも貪欲に吸い込む習性を突いて、OJもエムも命懸けの疾走の果て、デカい風船を喰らわせて奴を退治した。鉄条網を身体に巻き付けたエンジェルが、見事に吐き出されたのには喝采。
でも、大クラゲと目を合わさなければ襲われないのは、何故? 誰が言い出したのだろう。肉食獣なのに、それは少し緩くないか。
そして、意外に優雅なレースなどをまとった内部。意外と言うよりも肩透かしで、もっと血の匂いを感じさせてくれてもよかった。せっかく円盤自体を恐怖のエイリアンに仕立て、田舎町を虎視眈々と狙うと言う、人を落ち着かなくさせる恐怖を設定したのだから。
それとも円盤のあの「口」は、人を天国へ誘うための扉だったのか。それならば、充分に恐ろしいです。
とは言え、理不尽な出来事や敵に直面しても、人は時には頭を切り替えて、それで名を売ろうとまですると言う物語。
ちょっとレトロな書体で小見出しが入りましたね。ゴースト、クローバー、ゴーディ、ラッキー、Gジャン。馬の名前とチンパンジーの名前。人によって一生の運命を決められるものたち。こちらも、あるいは不条理の一つと言えます。
コメント&共感こちらこそありがとうございます。
不条理劇で、捕食されて死んだ人もいるのに、
観終えて暫くした感想は不思議と良いですね。
ラストがハッピーエンド、だからかもですね。