「ダークな未知との遭遇なんだけど…」NOPE ノープ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
ダークな未知との遭遇なんだけど…
突如、田舎の牧場の上空に現れた、謎の飛行物体を巡るSFミステリー。『未知との遭遇』と『宇宙戦争』を足した様な内容だが、そのスケールは100分の1。あまりリビューに、酷評はしない方だが、お金を払って鑑賞するには、期待を大きく裏切られた作品だった。
冒頭は、確かに猿のショッキングな映像から入り、父親の頭に、空からの落下物が当たるシーンは、暗雲が立ち込め、掴みは良かった。しかしその後は、殆どSF的な要素もないまま、家族のヒューマン・ドラマが続く前半。後半になって、ようやく謎の飛行物体が露になり、SF的な戦闘シーンに突入するのだが…。
正直、テーマがよく分からず、勉強不足で『?』が多かった。
・冒頭、『ナホム書』の文が引用されるが、馴染みが無く、どう作品と結びつくのか分からなかった。
・飛行物体の描写もあまりに雑で、その内部に人々が呑み込まれたシーンも、風船に挟まれたようで、『宇宙戦争』の内部の様なグロさもなく、痛さや恐怖も伝わらなかった。
・飛行物体の正体もハッキリしないままで、「それで爆発?」という、あまりに短絡的なラストシーン。
・冒頭に猿が暴れるシーンも、途中で回収したものの、後半の飛行物体との対峙のシーンとの繋がりが、よく読めなかった。
・かと言って、主人公の兄と妹の家族愛も、それほど前面には出てこない。
エンドロールで、あれだけのスタッフが関わっている割には、全てが中途半端。
人間を呑み込む飛行物体ならば、もう少しグロさ盛り込んで、観る人に恐怖を訴えて欲しかった。また、ギリギリの危機一髪シーンに、感情移入ができるような工夫も見られなかった。
主演のダニエル・カルーヤは、『ゲット・アウト』でアカデミー賞にノミネートされたが、これまで、脇役でいい味を出してきたタイプで、主演となると華に欠けるかな。その他の出演者は、申し訳ないが、一人も知らなくて、演技も全体的に沈んでいた。
『ゲットアウト』でのダニエル・カルーヤは本当に良かった。目をギョロッとさせる、あの驚きの表情がたまらなく良かったです。
で、今作ではその表情豊かなカルーヤの使い方を間違ってしまったかのように、寡黙な兄といった雰囲気に仕立ててしまったのが失敗だったかなぁ~