「チンパンジーが一番怖い」NOPE ノープ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
チンパンジーが一番怖い
空にいる「何物か」に人間が襲われるという設定のホラーでしたが、これで想起されたのが「クワイエット・プレイス」。物語の大前提となるこの設定以外にも、この2作品は構造的な類似点が結構あって、本作の「何物か」は、獲物(人間)が見上げると襲ってくるのに対して、「クワイエット・プレイス」の「何物か」は、獲物が音を立てると襲ってくる。そしてこの特徴を発見した主人公が、「何物か」を見上げないようになったり、音を立てないように気を付けるようになる展開も同じ。
また、これは物語上致し方ないかとは思いますが、双方の「何物か」ともに弱点があって、本作では旗が苦手、「クワイエット・プレイス」では高周波の音が苦手であり、やはりこれを主人公が発見して対峙するなどの構造も同じ。そして本作では兄妹、「クワイエット・プレイス」では親子という違いはあったものの、家族で「何物か」に立ち向かう点まで重なるなど、何から何まで構造が似ていました。
まあホラー映画をこういう見方をしてはいけないのかも知れませんが、こうも構造が似ていると、見せ場としては「何物か」がどれだけ恐ろしげに表現されているかがポイントとなるように思うのですが、残念ながら本作の「何物か」は余り恐ろしげではなかった。終盤になって「何物か」の正体が徐々に明かされて行き、最終的に全体像を観た時は、きっとこいつのモチーフは「大王イカ」なんだろうと思うに至り、微笑ましくなってしまいました。。。
ただかなり怖いシーンもあって、ある登場人物の子供時代の回想シーンに出て来た人を襲うチンパンジーは、現実味がある分恐怖を感じました。大王イカじゃなくて、チンパンジーを主人公にすれば、もっと怖い映画になったんじゃないかとすら感じてしまいました。