「得体のしれない化け物に怯えたい人へ」NOPE ノープ サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
得体のしれない化け物に怯えたい人へ
クリックして本文を読む
UFOが父親を(たぶん)殺した。逆に利用して金持ちになったろうぜ!で始まる本作。しかし話が進むにつれて思いもよらない真実が明らかになる。その真実にうっとりしてしまった。あまりに…自分好みすぎて。
UFOは実は生き物だった。主人公たちの牧場近辺を縄張りとし、食物を求めて空を飛び回る得体のしれない化け物。
私は…よくわからない化け物が、人智を超えた化け物が人間を蹂躙する物語が大好きだ。ちょっと虫を混ぜた程度の人型エイリアンでも悪くはないが、ラブクラフト作品やエヴァンゲリオンのように人類の埒外の姿をした化け物ならば最高だ。尤も、私がこの映画から強く想起したのはコナン・ドイルの「大空の恐怖」だが。
本作の化け物は、姿かたちもそうだが、エヴァンゲリオンの使徒さながら徐々に明らかになる行動原理が不気味さの源泉である。人間誰しも「わからない」ものに恐怖を覚える。しかし「わかった」ところで恐怖から逃れられない場合もある。それに立ち向かって屈服させなければ、あるいはより強い意思が体に宿らなければ恐怖を払うことはできない。
本作は「わかった」後も続く恐怖に打ち克つ物語である。化け物による蹂躙もいいけど、打ち負かすのもいいよね…
また、本作の監督はエンタメと社会問題とを高いレベルで融合させることでも有名である。が、そんなことも考えずに化け物との戦いの行方にすっかり呑まれてしまった。それほど自分好みだった。
たぶん、化け物が“見せ物”たるゴーディや馬たちと同レベルに扱われているのがミソだと思うのだが。
コメントする