劇場公開日 2022年7月2日

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「“その先”が見えない辛さ」ガザ 素顔の日常 REXさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“その先”が見えない辛さ

2023年12月19日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

アメリカの属国である我が国では、ハマス=過激派、アラブ人=過激のイメージばかり先行してる感があるが、パレスチナ人の家族思いで社交的で情熱的な一面が知ることのできる一作。
検問所が閉鎖されているため、南北40キロ東西10キロのガザ以外にどこにも行けないガザ市民。

経済活動が停滞しているはずなのに不思議とフルーツや、煙草・コーヒーなど嗜好品は比較的手に入れやすいように見える。
どこから仕入れたのか、ガイ・フォークスの仮面を被ってイスラエル軍に投石している人もいた。

ガザの中にも格差は存在し、きらびやかな邸宅でファッションショーを開催する女性と大人数の兄弟と海でとれた小魚を貪る少年など、ガザの中にも明暗が浮かび上がる。vsイスラエルの映像だけではない、日常がこんなに長い時間観られるのは貴重だと思う。

観ながら、様々な疑問が渦巻く。
・ホロコーストを経験したユダヤ人たちが、同じようなことをアラブ人にしていることに対して何も感じていないのか。同じ問いを投げかけたら、一般的なイスラエル市民はどう答えるのか。
・イスラエルは最終的にはガザからパレスチナ人が出て行くまで、攻撃をやめないのか。
・ガザのパレスチナ人は今後自由になったとして、その先ユダヤ人とはどういう関係を築きたいのか…

映像からは不安の裏返しから少しでも明るく生きようとする人々と、行き場のない怒りから攻撃に転じ負傷する若者たちなどを描き、そこには何の解も見いだせない。
ただ、平和に日常を過ごしたいだけなんだ、という切々とした彼らの訴えが繰り返し強調される。

十字軍の時代から、一方的な西洋の聖地奪還という大義名分で戦禍の地になったパレスチナ地域。ww1時のイギリスの三枚舌による混乱、イスラエル建国で勝手に割譲されたパレスチナ。その土地に住む者のことなど全くかえりみられず、政治の駆け引きで苦しむのはいつも民間人だと毎度苦々しく思う。

理想論だが本当に平和を望むなら、イスラエル人もパレスチナ人も国民側が政権の煽る憎しみに煽られずに、戦争に加担せず、互いに共存しようと歩み寄ればいいのだが、二つの民族があの土地に縛られている以上、そんなことは起き得ないのだろう。全く、宗教というものが真に人を幸せに導いているのかというと、首を傾げるしかない。

第三者として、自分の国が戦争に巻き込まれても、私は絶対に加担せず負の連鎖を断ち切る努力をする側にたちたい。こんなことを書いていつつも、自分の書いたきれいごとに無力感を覚えるけれども。

偽善だろうとなんだろうと、とりあえず今困っている人を少しでも助けることはしたい。特に子供たちのため、少しだけども支援金がきちんと届いて欲しい。

REX