女神の継承のレビュー・感想・評価
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タイ発、本当に怖いモキュメンタリー
タイ東北部の村で、祈祷師一族に巻き起こる怪現象を密着取材するというフェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)手法によるタイ・韓国合作のホラー作品。
祈祷師であるニムは、女神バヤンの巫女として、地元民の(あくまで霊的な原因による)病気や怪我を治療する仕事を行っている。ある日、姉ノイの娘である姪のミンが激しい頭痛や生理といった症状に悩まされる事になる。それは、ノイやニムがかつて経験した“巫女の代替わり=女神の継承”の際の現象だった。
しかし、次第にミンの中に居るのは女神バヤンではない事が判明し、事態は予想だにしない方向へと進んで行く事になる…。
本作は、信仰心の有無、霊的な存在を信ずるか否か、そういった観客一人一人の抱えるものによって、解釈が異なる作りの作品である。考察好きには嬉しい一作と言える。
また、序盤こそドキュメンタリー風の映像でリアリティを持って進んで行くが、後半は『エクソシスト』を彷彿とさせる憑依型ホラーやスプラッター、ゾンビ映画といった様々なホラージャンルを複合した作品へと変貌していく。この辺りは好みが分かれるだろう。
作中示されるワードの詳細や、黒い車に貼られた「この車は赤い」というステッカーの意味、様々な解釈の内の一つについては、作家の深志美由紀氏のnoteが深く掘り下げてくれており、本作を読み解く上で非常に有り難かった。
私個人の解釈としては、【積み重ねられた怨念は、同じく積み重ねられた信仰心すら凌駕する】というものだ。
私自身は無信仰であり、神の存在についても懐疑的である。しかし、ミンに憑依した(父親の家系であるヤサンティヤ家を呪った)怨念の集合体については、事実としてヤサンティヤ家の人間に首を刎ねられて来たはずだ。そうして積み上げられてきた無念・怨念といった“人間の悪意”を、私は「存在しない」と思う事は出来ない。だからこそ、神という超常的な存在よりリアリティがあり、あらゆる事象を凌駕する力を持っていても不思議ではないと思えるのだ。
また、神(や悪魔)といった存在は、漫画原作者小池一夫先生の言葉を借りるなら「人類が最初に生み出したキャラクター」なのだ。太古の人類は、自分達の理解の及ばない自然現象や厄災、疫病等を神の意思として認識してきた。それは、人間は“言語を通して物事を認識する”存在だからだ。しかし、科学技術の進歩によってそれら様々な現象に、現代では科学的・論理的な見地から説明がつくようになり、人々の信仰心は確実に薄れていった。
だからこそ、私はそうした神という存在の力より、実在した人間の遺した悪意の力の方が恐ろしく感じられるのだ。
作品としては、インタビューに答える出演者や霊現象を収めた映像を振り返る様子が、「お分かりいただけただろうか?」でお馴染みの『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズを彷彿とさせる。クライマックスで“命の危機に瀕しているのに撮影を続けるカメラマン”という「ありえない」と感じさせる甘さ含めて個人的には好ましい。
祈祷師ニム役のサワニー・ウトーンマの演技が素晴らしく、彼女の存在が本作に限りないリアリティを付与している。表情や仕草、話し方も非常に“らしい”ものである。日本では、“イタコ”や“ウタ”といった霊媒師が有名だが、そうした雰囲気を纏いながら立ち振る舞っている為、不思議と彼女に親近感を覚えるのだ。
だからこそ、まさか彼女がクライマックスのお祓い直前で突然死するとは思わなかった。ラストの「バヤンが本当に居るのかは分からない。存在を感じた事はない」と本音を吐露するシーンは、今回の事件を通して彼女の中で自らの信仰心に疑問が生じてしまった事を描いた、トドメの一撃として非常に素晴らしかった。
ミン役のナリルヤ・グルモンコルペチの熱演は、誰が見ても文句無しの圧巻の演技だろう。序盤での明るく美しい様子から、次第に精神に不調を来し、悪霊に憑依されて豹変するまでの演じ分けが素晴らしい。
そんな明るい序盤からも、パレードの準備の際に子供靴を履く姿や、親友のリサが撮影した子供のように振る舞う姿からも、既に事が始まっている“兆候”不穏さを漂わせている。また、ニムとは別の祈祷師に除霊を依頼する際の車中で、ガラスに映った彼女だけが不気味な笑みを浮かべている恐ろしさにゾッとさせられた。
隠しカメラを設置し、憑依されたミンの行動を隠し撮りしているシーンは作中1番の恐怖シーンだった。カメラに気付いて突然画面外から迫ってくる様子や、歪な動きでテーブルの上で放尿したり、母であるノイに覆い被さる不気味さは最高だった。
飼い犬を鍋で茹でて齧り付くシーンは、恐怖と同時に切ない気持ちで一杯にさせられた。お決まりだが、エンドクレジットで「動物の登場するシーンは専門家の監修のもと行われました。この映画製作で動物に危害は加えられておりません」と出てホッとした。
ラストでバヤンが憑依したと語るノイを焼き殺したシーンは、彼女の中に悪霊が居たのか、はたまた本心から来る殺意か。自殺した兄との近親相姦関係含め、語られていない部分に闇を感じさせる家庭である。
クライマックスの救いようの無い展開、フェイクとはいえドキュメンタリーという作風を明らかに超越して展開される惨劇はツッコミ所満載だが、作品の持つ圧倒的なパワーで押し切られた印象で、個人的にはアリ。
タイと韓国による本気のホラー映画は、非常に見応えある圧巻の一作だった。
字幕と吹き替え両方で鑑賞した上で、オススメするならやはり原地の言語で語られる字幕を推したいが、吹き替え版のミン役の飯田里穂さんの熱演も素晴らしいので、是非見比べてみてほしい。
土着信仰の村で悪霊退治
精霊の依代になる存在を継承する儀式をドキュメンタリーとして撮影するホラーモキュメンタリー
ミンに取り憑いた悪霊は父方の家系に連なる恨みの念で儀式は失敗し全滅END
はっきり驚かせる演出の他にも細かなホラー演出があり意外感があるホラー映画
兄マックの件は長尺で騙されすぎ
ミンが閉じ込められてる部屋を開けそうになるとこでカメラマンが阻止しなかったの無能すぎる
またPOVに騙されるの巻
Amazonの評価も高かったし予告も面白そうだから期待してしまった。。
ドキュメンタリー風ということでリアルな感じが出るのかと思ったが、
なんのことはない全面的にPOV、、、POV映画が面白いと思ったことないんだよね。。
雰囲気や設定はだいぶ期待できたんだけど長い!
ドキュメンタリー風にしたいから退屈なシーンが延々続くし、
ラストでたたみ込むように、今まで構築してきたリアリティが一挙に
台無しになるくらいメチャクチャになっちゃうし。
世界観とか雰囲気とか役者とかよかったから、
もう少し短くしてよりリアルにすればよかったのにな。
低予算はストーリーとアイデアで勝負しないと。
呪われた家系
2021年。
タイ/韓国合作のモキュメンタリー超自然的ホラー映画。
原題は霊媒。
長閑なタイの緑深い農村で、
タイのイサーン地方のドキュメンタリー・クルーが、
地元の神バ・ヤンの霊媒師・ニムに取材。
ニムはウィロイ家は代々巫女(この映画で言う女神)を
輩出する家系で、
ちょうどニムから姪のミンへの引き継ぎ(継承)の時期らしかった。
ドキュメンタリー・クルーは霊に取り憑かれたミンに密着する。
ミンの除霊式の5日前からミンの部屋に監視カメラを設置する。
すると驚くべき行動をミンはとる。
犬を茹でて食べたり、男性を挑発したり
まるでオカルト映画のようである。
監視カメラ映像はグリーン色掛かっていて、暗視ゴーグル映像的である。
まるで「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のパクりのようだが、
あまり手ぶれせず、臨場感は薄い。
ミンを演じるナリルヤ・グルモンコルペチが可愛らしい容姿なのに
振り切った演技で恐ろしい形相でなりきり方が凄まじい。
ヒンドゥー教の生贄の儀式やカンニバルあるいは吸血鬼・・・
なんでもありで、いささかやり過ぎで散漫に思えてくる。
男性の祈祷師数人による除霊(or女神の受諾式)の映像は美しく
気持ちが高揚したが、見事に失敗する。
その後の顛末はオドロオドロしい。
クルーやニムにまでミンの呪いは狂気を帯びて炸裂して、
終始がつかなくなる。
あの惨劇後、ミンはどうなったのか?
それを一番に知りたい。
主演女優勝ち
ドキュメンタリー仕様。
タイ奥地の巫女の姪っ子(ミン)が「女神(バヤン)」の巫女を継承すべく通過儀礼の体調不良になったのかと思いきや、話が進むにつれて、別の何かに取り憑かれていることがわかる。
邪悪なソレは、巫女の姉が結婚した旦那の先祖が首を刎ねまくった者たちの恨みが積み重なったモノで、姉はなんと巫女を拒んだから、
母はバヤンから
父は首を刎ねられて殺された者達から
子孫がみんな不幸になるようにとものすごい恨まれてミンが犠牲になっちゃう、最大級のとばっちり物語。
んで、邪悪なヤツを退治すべく一致団結するも結局巫女は儀式直前に不審死&占いに参加した人達&家族&撮影クルーも1人残らず死んで終わり。
いや、ミンは生きてるのか、あれ生きてるって言うの?
ラストシーンは、巫女が「バヤンを感じたことない」っていう衝撃の告白で終わる。
継承したものなど、なにもなかったんじゃん。こわ!!
ドキュメンタリー仕様で進むので飽きずに見れるけど儀式前の何日間は長くない?てか、あんなに奇行繰り返してるんだからガッチリ体固定すればいいのに。
無防備すぎない???
みなさま書かれてるように、いろんな作品の手法がごちゃ混ぜだけど取り憑かれたミンの演技は素晴らしい。最初の真面目なほんわかお姉さんからの変貌がすごい。
なんだかんだでクライマックスまでは引き込まれたけど、儀式の途中で家に閉じ込めてるミンの部屋から赤ちゃんの声がする!ドアを開けて!っていうパン(ミンの義叔母)がベットをろくに確認せず、撮影クルーもはよ目視確認すればいいのに撮影ばっかしててドア開けてさっくり殺されちゃうところくらいから、
「え?そんなことあります?てかバカすぎない???」
「儀式の時、なんで撮影クルーだけおかしくならないの?電気消えたならすぐカメラのライトつけるだろ?」
「命からがら逃げてるのに撮影にこだわりすぎじゃね?カメラ放り出して逃げるだろ!」
とか、ツッコミどころが多すぎて興醒めしちゃったなー。
そんでもって撮影クルーの人数多すぎじゃない?
ラストのめちゃくちゃ具合は近年ないくらいのカオス
あれだけめちゃくちゃでカオスを超えた展開になると人間は大爆笑してしまうんですね!初めての体験ですよ本当に😂
途中でメインの祈祷師が〇〇するしえ? どうすんの? ヤバくね?からが更に面白いんだよなあ(最後に頑張った祈祷師と弟子たちのいかにもダメそう感漂う感じで絶対失敗するやろって思いながら見てたらそれ以上に酷い事になるから大爆笑してしまった笑)
最後は完全敗北で終わるとか面白過ぎます!
あと取り憑かれた女優さんはエクソシストのリンダブレア以降最も頑張ってたと思うくらいイカれた行動(子供を〇〇してオシッ〇して会社で男と〇〇して犬を鍋で〇〇するとか好感度爆上がりです笑)
しかもあんなラストなのに劇場から帰る時にスッキリしているという謎の現象起きてて解析不可能だし。
最後にあの呪文の書いてる頭に被せるやつ売られていたので購入して額に入れて飾ってますがなかなかイカしてます! ここまでいくとカオス過ぎて笑えるんだよなあマジで😂あー笑いまくって楽しかったー🤣🤣🤣🤣
まさにアジア版エクソシスト
動物が酷い目に合うシーンが苦手な人は注意!
POV方式で撮影された映像だからこそリアルさと怖さが増す内容だったと思います。
完全なフィクションとして普通の映画のように撮影されていたら、そこまで劇的なシーンが無く(大変なことは十分たくさん起きてはいますが)、つまらなく感じてしまっていたかも。
主人公の見た目の変化とヒートアップする不可解な行動が今作のメインの恐怖ポイントだと思いますが、個人的にはやはりラスト、インタビューで祈祷師ニムが「分からない」と答えるシーンが最も絶望的でゾッとしました。
歴史ある風習だから続けているが、神が本当に存在するのか?私には分からない、とするニム。じゃあこれまでの人々の奔走は無意味?主人公に憑いているものは一体?この後どうなるの?と、最後の最後に鑑賞者に謎と不安感を残す一言。
説明が少なめなことと、終盤の長めの祈祷シーンによって、結局どういうこと?となる人も多い気がしますが、ネットで今作の解説・考察・製作者のインタビュー等を読むとさらに面白く感じると思うので、鑑賞した方はぜひ調べて読んでいただきたいです。
オカルト要素多め?
精霊、悪霊、自然の中に神は宿る系のお話がお好きであれば最初の頃は楽しいと思います。
ヤバンという名の精霊の、その巫女さんのインタビューは楽しかったです。
ただ、ミンという美少女が取り憑かれてからがちょっと失速したかな、って思いました。
(どこかで、別の映画で観たことある…と気づいてしまい気持ちが萎えてしまったのが原因かも。
またミンの性行為シーンやTシャツビリビリにしてバストを見せてくるシーンは個人的には不必要でした。
こういう、人間 対 何か の戦いにおいては、できれば人間側が勝つ話が好きなので、何かのほうが勝ってしまう話、果てには人間側が全滅してしまうこの映画は苦手です…)
信仰とカルマの話
最近のホラーには珍しく2時間10分と長い。
代々巫女を継承してきた家の現巫女の姪に、精霊からのメッセージとも見える体調の変化が訪れる。インタビュー形式のモキュメンタリー。
信仰とカルマの話。
前半、現巫女(癌は治せないから病院にかかって)と精霊や巫女を信じていない姪が現代風で良い。
中盤の姪の体調不良からズブズブと墜ちていくところ、現巫女の対応はとてもミステリ的で見応えがある。
インタビュー形式は異文化を学ぶ感じで興味深い。
ここまでは殆どジャンプスケアなし。
後半、姪が取り憑かれてヤバくなったあたりからゾンビ+洒落怖になっていく。八尺様とかリアルとか好きな人にはお馴染みの展開。監視カメラあたりからジャンプスケアが多くなる。ありがちなラストからの巫女のシーンで終わるのが印象的。これがあるとないとでは全く違った。
キリスト圏ホラーにありがちな悪魔オチは、神の力が及ばない対象への恐怖だけど、こちらはそもそも今まで信じてきた精霊の存在/自分の信仰が揺らぐ畏れ。
作中に偽りの儀式による弊害(変な悪霊を呼び込む)を描写/非難しつつ、ラストにこの巫女の吐露を載せたのには唸った。
途中でインタビュワー/カメラが複数いることに気づいたが、後半思った以上に人数がいた。
まさかホラー映画でカメラ=残機扱いになるとは思わず笑ってしまった。そういう使い方があったかwこの映画のおかげでホラーでは何かに付けてキャラ=残機扱いになるようになった。
後半のゾンビ的なホラーは個人的に全く怖くないので好みがありそう。個人的には演出がベタで陳腐に思える(それこそがハッピーホラーでもありそうあけど…)。洒落怖的展開は大好きなんだけど…。
巫女ニムの信心深さ・慈善的なところ、ニムの姉ノイの人間的な身勝手さ・罪深さの対比は良かった。この2人は役者さんの演技も良い。この年代の女性の役者さんがメインになることは少ないので、新鮮さもある。
ノイの身勝手さも共感できてしまう。
代々続く巫女になれとか意味不だし、謎の体調不良続くのも怖すぎる、キリストに縋って巫女から離れるも、娘が助かるためなら神をも捨てるし自分が犠牲にもなる。妹に巫女を擦りつけたのにその妹に助けを乞う。終盤の女神が見える〜からの演技も不気味で良い。
正直、儀式の場面では、偽の儀式も正しい儀式も全然違いがわからん…(うさんくらくみえる…)なんだけど、ラストのニムのシーンでその絶対的信頼感が揺らぐのがとても良い。
個人的な好みで前半(ドキュメンタリー)は★4.5、後半(ゾンビ)は★2、ラスト(ニム)が★4.5。
ドキュメンタリー風ホラー映画という試み
普段あまりホラー映画は観ないのですが、重なる時は重なるようで、先日の「NOPE」に続いての本作の鑑賞となりました。ただ「NOPE」ががっつりハリウッド映画だったのに対して、本作はタイ映画。しかもホームビデオで撮られたようなタッチの映像で、さらにドキュメンタリータッチのホラーという、実に斬新な作品でしたので、全く違う印象の映画となりました。
内容的には、伝統的にタイに伝わる女神の化身というか、霊媒師というか、日本で言うなら恐山のイタコとか、沖縄のユタのような存在の継承を軸にしたお話でした。この霊媒師は、一般的に代々女性が継承するという設定で、現在の継承者は主人公のニム。本来は姉が引き継ぐべきだったものの、姉が嫌がったために妹であるニムが受け継ぐことになったようです。
そして物語は、ニムの後継に姉の娘である姪っ子のミンが選ばれたらしいということで展開していきます。ところが実際はミンに憑依したのは女神ではなく、最恐最悪の悪霊だったということになり。。。
中盤までは、前述のようにドキュメンタリータッチで淡々と描かれており、創作ということを忘れてしまいそうになりました。しかし終盤を迎えて最恐最悪の悪霊が本領を発揮し出すと、残虐シーンが頻出するホラー映画然としていきました。個人的には中盤までのドキュメンタリー風の創りで通して貰った方が面白かったように思えますが、まあホラー映画なので仕方ないのかも知れません。
また、結解のようなものを使って部屋の中に封印していたとは言え、完全に悪霊が憑依している状態のミンが家にいるのに、ニムの兄の妻と赤ちゃんを残してみんなが悪霊払いの儀式に向かったのは、明らかに違和感がありました。既に一度赤ちゃんをミンに攫われており、普通なら真っ先にこの2人を安全な別の場所に移しそうなものを、護衛1人だけの状態で家に残しているのは、いくら何でも変でしょう。結果的に当然の如く2人は殺されてしまうのだから、この辺の展開にはちょっと醒めてしまいました。
そんな訳で、中盤までのドキュメンタリー映画風の創りには大いに感心させられたものの、終盤の展開にはイマイチ納得が行かなかったので、評価は★3としました。
信じることの難しさ
タイの村で代々巫女として地域の霊的な問題を解決してきた一族の中の若い娘がある日なにかに取り憑かれ、巫女や祈祷師たちがお祓いを試みる話。
強い恨みを持って死んだ動物植物含めた悪霊達vs信じるか信じないかは貴方次第な全てに宿る精霊なるものを信仰する祈祷師の戦い。冒頭ドキュメンタリー風の取材に精霊について語る巫女も、話が進むにつれてその精霊を"信じる"ことの難しさが顕になっていく。
祈祷師たちはとりあえず色々な供物を使って真剣にやってる風に祈るのだけど、その行為の曖昧さたるや。人は精霊よりもわかりやすい家族や身近な人同士の関係を信じてしまうし、悪霊の圧倒的脅威を前にした時精霊という目に見えない曖昧なものの弱さよ。最近宗教問題話題だけど、お金を出すのって簡単でも本当に信じて祈るだけってめっちゃ難しいな。
悪霊バトルも女神の首が切り落とされてた瞬間「あ、これもう勝てねえ」感がすごいけど、多分勝敗はもうちょい前の自殺した息子疑ってた時点で決まってたんだろうなぁ。普通に考えて何の罪もない身内疑って1ヶ月祈ってたの無駄足すぎる(笑)あの黒い卵は悪霊がバトルしたいのに全然来ないから「ここちゃいまっせ〜」って伝えに来たんだろうなぁ(笑)
あとは、悪霊に取り憑かれてる娘が夜中に徘徊して家を荒らしてるのが分かってるのに普通に同じ家で夜寝てた巫女一家がやはり正気ではないと思った。結局女神とか悪霊とかよりやっぱり自分の娘という確かなものを信じちゃってるからなんだろうなぁ。実際最期まで娘の名前を読んでたし。
ホラー演出も、終盤ずっとドキュメンタリー内で当事者を見つめる3人称視点だったカメラに悪霊が襲い掛かり、突然POVの1人称視点になるのよりリアルで怖かった。そして、カメラと悪霊が目が合ってしまった瞬間私の頭の中で逃走中の「見つかった。」っていうナレーションが毎回流れてた。
結構軽めに感想書いたけど、中盤あたりから「これ見終わったら誰もいない自分の家に帰らないといけないんですか!?最悪!」ってずっと思ってた(笑)実体として霊は出てこないのにこの気持ち悪さ怖さ、すごいなぁ。
後半は目を開けているのがつらい、地獄の鑑賞体験
想像の10倍エクソシストだったタイの土着系ホラーモキュメンタリー。
前半はゾクゾク、びくびくしつつも、しっとりと神秘的なタイの田舎の風景に酔いしれる余裕がありましたが、後半その非常にフェアで無機質で客観的な構成に精神をめちゃくちゃ削られる作品でした。
クソ真面目に並べてくる「あと○日」のカウントダウンの怖いこと怖いこと。
見るのがしんどくてもうわかったからそんなに全部見せなくていいからお願いだからもうやめてくれ〜〜と思いながら半目で地獄の時間を過ごすことに…
そして太い太い唯一の精神的支柱を唐突にボキッとへし折る脚本が意地悪過ぎて本当に後半の絶望感が尋常じゃない。
最後には阿鼻叫喚の地獄絵図が待ち構えていますが、正直この場面はもう行くとこまで行ってしまってるので、もはや祭り。
その前の精神を削り取られるような恐怖に比べたら、爽快感さえ感じました。
ただ、本当のラストのラスト、啜り泣く声がいや〜に耳に残り後味は最悪!!!!
という感じで流石の完成度、地獄のような鑑賞体験でした。
※動物が本当に酷い殺され方をするので苦手な方は要注意です!
怖い怖い怖い
「哭声」のタイ版かと思って観たらとんでもなかった。
最近はホラーとかあまり観ていないし、モキュメンタリーていうジャンルがあるのも知らなかったので、シンプルに怖かった。
タイの祈祷師・悪霊祓いを、韓国の取材班が撮影するという設定。カメラワークや音楽、自然な演技(韓国や日本の俳優さんひとりでも見慣れた顔が出ていれば成り立たない)に、設定を忘れて引き込まれてしまった。
作ってる方も設定忘れてるんじゃないかと思うところもあったけど。
どこがR18指定かなと思ってたら、最後の方はやりすぎかも。最後の最後は絶望感半端なくて唸らされた。
ミン役の若い子も熱演で(ドキュメンタリーなのに)よかったけど、途中まで主役かと思ってたバヤンの神の巫女・祈祷師のニムが、日本の派手に着飾って大きな宝石つけてあんた死ぬわよとか上から目線で脅してくる胡散臭い占い師・霊能者みたいでなく、普通のおばさんだったのが説得力があってよかった。
アジアの土着信仰が日本人にはすんなり受け入れられるから、怖い怖い怖い。
夜の上映回、観客ふたり。いつもながら前から三番目の真ん中、もうひとりが最後列。なぜか、中央の席にポップコーンだけが置かれていたのが一番怖かった。
ホラーは昼間上映してください。
これはアカンやつや!
こんなの撮ってるとバチ当たるよ!って気になってしょうがない…
ミン以外の出演者はホントに役者さんなのかな? ネイティブ感半端ないよ。後半の雑な憑依表現がなければドキュメントとしか思えない… これはよくないですよ! バチあたるわ!
個人的に失敗してしまいました
庶民的な中年女性祈祷師の日常を追うドキュメンタリー。
という体で、日常と非日常が混沌と混ざり合っている、日常の中に不穏さや邪悪さが色濃くなってゆく様子が印象的でした
やはり俳優陣のリアリティある演技も合わせ、緊迫感があり良かったです。
とは言え個人的には、自分が酔いやすい体質であることを忘れて観てしまい、失敗したなと。
POV手法とは知っていたものの、「哭声」からの企画ということで興味を持っていたこともあり、観に行ってしまいました。
カメラの手ブレのため、後半は酔って気分が悪く、怖いも何もありませんでした。
後半は怖さはともかく、意外に何でもありなアグレッシブな、どこかで見たようなホラー展開だと思いました。
しかし、得体の知れない不気味さや、信仰の曖昧さなど、いい意味でモヤモヤはさせられました。
女神の存在についての考察なども、ネットの考察サイトを見たりもして、楽しめました。
途中まで、ミンに憑こうとするもの=悪霊=女神かなと思いながら観ましたが、呪いの悪霊と女神は別物、しかし女神も実は悪霊と同じようなものなのか、と解釈しています。
酔っていない状態なら、もっと怖く面白く観られただろうにと思います。
よかった
韓国スタッフによるタイのホラー映画でフェイクドキュメンタリー。タイの家がボロボロの掘っ立て小屋みたいで、スマホを持ってあんな暮らしをしているのかと未来と過去と貧困がごちゃ混ぜだ。だからこそ女神とか悪い霊とかいる感じがする。
お葬式の遺影が電飾で飾られていたり、火葬でロケット花火みたいなので点火するなど、ふざけてる感じがするけど、マジなのだろう。
祈りとは愛である
祈りの先に救いがなくても私達は祈るしかない、なぜなら祈りは愛だから。
崇めている神は良いか悪いか、月日の流れで神の存在意義は変わるし儀式の意味も変わる。
呪詛でもそうだけど神は良い所と悪い所がある。だから崇めて鎮めて敬って良いところだけ享受出来るように儀式を行い依代を用意し手綱を握る。良いことも悪いことも全て神の采配となる。
最後のインタビューでニムは己が女神の存在を感じられない=自分に女神が継承されてないと嘆いたが、それは違うと思った。ニムに女神が継承されていなくても祈祷師としての能力や技術は持ち合わせていたし、女神をちゃんと愛していた。
ニムはノイによって巫女の役割を押し付けられていた事を知っており、それでも巫女の役目を果たそうとしていたが元からある自分の力への疑念が濃くなり神への信じる力=愛が揺らいだため、女神の御加護が弱まり悪霊たちにより亡くなってしまったのだと思う。
車に貼られたシール、赤という色自体が魔除けの意味があるのは序盤で示唆されていたし各国で魔除けの色だから悪霊達の器となるものを運ぶため、余計な邪魔が入らないようあの車を選んだのかと思ったが、シルバーの車に"この車は赤い"シールを貼り欺く=ノイにミンの服を着せて我々(視聴者や神)を欺くという意味なのかと。
すり替わりにはびっくりしたが靴にお札入れて履かせる描写についても取り憑かれたミンがニムに対して「姉が女神に背くためにニムに自分の服を着せ靴にお札を入れた」と、きちんと語られていたので伏線回収。
とても良かったです。
怖い、怖い。
全ての物に精霊が宿るというのをすんなり受け入れられる同じアジア人だから余計怖く感じるのかもしれませんね。韓国とタイ両国の共作?あまり韓国風テイストは感じられませんでしたが展開に理解が追いついていきませんでした。善が必ずしも勝利を収めるパターンではないことに良い意味で裏切られました。
タイ東北部山間部の小さな村。 ここでは女神バヤンが信仰されている。...
タイ東北部山間部の小さな村。
ここでは女神バヤンが信仰されている。
ある一族の女性に代々女神が憑依し、憑依された女性は祈祷師となる。
テレビクルーがその祈祷師に密着取材することになったが、祈祷師の姪が変調をきたすのをカメラが捉えた。
もしかすると、女神が継承されるのではないかと、クルーは姪一家もあわせて取材することにした・・・
といったところからはじまる物語で、テレビのドキュメンタリー形式をとったホラー映画で、なんだか『ブレアウィッチ・プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』のような感じだねぇと既視感が襲う。
序盤はフツーのドキュメンタリー風、中盤から姪の若い女性の変調の様子が映し出されるが、定石的な描写でかなり飽きてきます。
配信作品を観なれた若い世代なら、「倍速ないの? スキップ機能ないの?」と思うんじゃないかしらん。
で、姪に獲りついたのは女神ではなく悪霊、とベテラン祈祷師が告げ、悪霊祓いの儀式へと突入。
吉日を狙っての儀式なので、その数日前が儀式の準備が整えられるが、その中で、姪は別人格のようになり、叔母の現祈祷師は頓死してしまう。
そして、儀式当日。
大規模な祈祷が行われるが、そこで惨劇が繰り広げられる。
女神なのか、悪霊なのか曖昧模糊として描かれ、集団ヒステリーのようにみ見えたりもする。
食人行為にまで発展するに至って、「過ぎたるは猶及ばざるが如し・・・」というのが、その残虐描写への感想。
定石的なホラー映画だと、惨劇の原因が明らかにされ、ホッとするという安心カタルシスのあとに、追加のショック映像、となるのだが、そこのところは回避。
すべては謎のままで、あまつさえ、儀式前日に頓死した叔母の祈祷師の口から「わたしに女神が憑依しているのかはわかりません。その実感はないのです」と語られ、どこにも論理的安心感を与えない。
これはこれでいい、とも思うけれど、結局、恐ろしいのが、人間なのか、悪霊なのか、女神なのか判然としないのは、やっぱりよくないなぁ。
個人的には、いちばん恐ろしいのは「人間」、というのが好みなんです。
尺も2時間超と長く、かなり苦痛な作品でした。
今度の『〇〇村』は、タイ版『女神村』。
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