「信じることの難しさ」女神の継承 せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
信じることの難しさ
タイの村で代々巫女として地域の霊的な問題を解決してきた一族の中の若い娘がある日なにかに取り憑かれ、巫女や祈祷師たちがお祓いを試みる話。
強い恨みを持って死んだ動物植物含めた悪霊達vs信じるか信じないかは貴方次第な全てに宿る精霊なるものを信仰する祈祷師の戦い。冒頭ドキュメンタリー風の取材に精霊について語る巫女も、話が進むにつれてその精霊を"信じる"ことの難しさが顕になっていく。
祈祷師たちはとりあえず色々な供物を使って真剣にやってる風に祈るのだけど、その行為の曖昧さたるや。人は精霊よりもわかりやすい家族や身近な人同士の関係を信じてしまうし、悪霊の圧倒的脅威を前にした時精霊という目に見えない曖昧なものの弱さよ。最近宗教問題話題だけど、お金を出すのって簡単でも本当に信じて祈るだけってめっちゃ難しいな。
悪霊バトルも女神の首が切り落とされてた瞬間「あ、これもう勝てねえ」感がすごいけど、多分勝敗はもうちょい前の自殺した息子疑ってた時点で決まってたんだろうなぁ。普通に考えて何の罪もない身内疑って1ヶ月祈ってたの無駄足すぎる(笑)あの黒い卵は悪霊がバトルしたいのに全然来ないから「ここちゃいまっせ〜」って伝えに来たんだろうなぁ(笑)
あとは、悪霊に取り憑かれてる娘が夜中に徘徊して家を荒らしてるのが分かってるのに普通に同じ家で夜寝てた巫女一家がやはり正気ではないと思った。結局女神とか悪霊とかよりやっぱり自分の娘という確かなものを信じちゃってるからなんだろうなぁ。実際最期まで娘の名前を読んでたし。
ホラー演出も、終盤ずっとドキュメンタリー内で当事者を見つめる3人称視点だったカメラに悪霊が襲い掛かり、突然POVの1人称視点になるのよりリアルで怖かった。そして、カメラと悪霊が目が合ってしまった瞬間私の頭の中で逃走中の「見つかった。」っていうナレーションが毎回流れてた。
結構軽めに感想書いたけど、中盤あたりから「これ見終わったら誰もいない自分の家に帰らないといけないんですか!?最悪!」ってずっと思ってた(笑)実体として霊は出てこないのにこの気持ち悪さ怖さ、すごいなぁ。