「しかめっつらの芸術家の中間地帯」ショーイング・アップ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
しかめっつらの芸術家の中間地帯
2022年。ケリー・ライカート監督。オレゴンの芸術大学で事務をしながら創作に励む女性とその友人や家族の話。個展を前に創作に全エネルギーを注ぎたい主人公だが、同じく創作に励む大家かつ年下の友人に嫉妬交じりの微妙な感情を抱き、飼い猫のせいで傷ついた鳩の世話に追われ、ちょっとおかしな兄をはじめとする家族との関係に悩まされる。しかし、いずれも悪いばかりではなく、つながりのなかでいいことも悪いことも起こる。完全には分かり合えないけれども緩やかにつながる人々との起伏を含んだ日々。
創作一本で生活できるわけでもないが、事務もそれなりにこなして日常生活にも気をくばる主人公の位置は微妙だ。友人と比べて芸術一筋にのめりこめないコンプレックスと、それでもなんとかなっていることへの小さくない自負の間を揺れ動いている。どちらにも行けそうでどちらにも行けない中間地帯の描き方はすばらしい。
頻出するミシェル・ウィリアムスのしかめっつらがいい。中間地帯にいる人間の苛立ち、悲しみ、開き直り。これぞ人生ではないか。
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