「【”僕のせいだ。僕が突き放した・・。”今作は幼馴染の少年二人が周囲からの揶揄いの声により変遷していく関係性により起きた悲劇と、残された少年が再生していく様を静謐なトーンで描いた作品である。】」CLOSE クロース NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”僕のせいだ。僕が突き放した・・。”今作は幼馴染の少年二人が周囲からの揶揄いの声により変遷していく関係性により起きた悲劇と、残された少年が再生していく様を静謐なトーンで描いた作品である。】
■花を育てる農家の息子レオ(エデン・ダンブリン)と彼と幼馴染のレミ(グスタフ・ドゥ・ヴァール)は、いつも一緒に過ごす仲良しだ。
二人は、中学に入学し同じクラスになるが、二人の親密な姿を見て、同級生達から悪意なき揶揄いの言葉を掛けられ、レオは徐々にレミと距離を置くようになっていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・序盤、二人は仲良くレオの家の花畑を駆けまわっている。中学校に行き時も、並んで自転車に乗って登校し、クラスでも肩を並べている事が多い。
だが、レオはオトコオンナなどと揶揄われて、徐々にレミと距離を置いて行くようになる。
ー 見ていると、レオはアイスホッケーチームに入る活発な男の子で、レミは楽器演奏を楽しむ控えめな性格に見える。
レミは揶揄われても気にしないが、レオが徐々に自分から離れて行く事を悲しむが如く、静に涙を流すのである。-
・ある日、レオは一人で自転車で学校に来るが、レミにそのことを激しく追及され喧嘩になってしまう。
ー レミの方がより繊細な心を持っているのだな、と思うし、彼のレオを想う気持ちが分かるシーンでもある。-
・レミが学校に来ない日に、レオが女性教師にレミのことを尋ねるシーン。”あの子は・・、もういないの・・。”
ー レミの死を知ってもレオは懸命に冷静な振りをする。
そして、レミの家にも行きレミの家族と卓を囲んでいる。
レミの兄が未来の夢を語るシーンで、その隣に座っていた父親はその言葉を聞き、目を抑えて肩を震わせて嗚咽するシーンでは涙が出そうになる。父親がレミの未来はもうない事を悲しむ気持ちが、伝わってくるからである。-
・レオは、全てを忘れるようにアイスホッケーの激しい練習を続けるが、ある日左手首を骨折してしまう。そして、包帯を巻いて貰っている時に流す涙。
ー 医者は”骨折したら、痛いよね。”と言って慰めるが、あの涙は手首の痛みの涙ではなく、心の痛みの涙である事は明白である。-
・更にレオはバスに乗って、レミの母が勤める病院へ行く。
そしてレミの母が運転する車の助手席に乗った時に、漸くレオは堪えていた慚愧の念を口にするのである。
ー ”僕のせいだ。僕が突き放した・・。”と言って涙を流すレオ。
一度はレミの母は”降りて。”と言うが、森の奥に駆けていくレオを追い掛けて抱きしめるのである。実に切ないシーンだが、レミの母の赦しの心に再び涙が出そうになる。-
<時は流れ、レオの左手首のギブスが取り外される。そして、レオはレミと遊んだ花畑を走って止まり、振り返ってあの印象的な大きな瞳が映されて、シーンは暗転する。
今作は、今作は幼馴染の少年二人が周囲からの揶揄いの声により変遷していく関係性により起きた悲劇とそこから残された少年が、徐々に再生していく様を静謐なトーンで描いた作品なのである。>